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ある書評、斜陽米の本質(1)   文科系

2018年10月29日 09時02分01秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 トランプが、物経済の保護主義的貿易に強引回帰している今とは、冷戦時代の終末期以降米英が中心になって世界に広げてきたこの40年の「マネーゲーム経済」、「金融グローバリズム」のどん詰まりを認めて、現物経済にも回帰し始めた時期だと言える。つまり、トランプの今の諸行動は、マネーゲーム経済破綻が分からなければ理解出来ないことになる。
 ところが、このマネーゲーム経済の理解がまた、大変難しい。金融派生商品とか、債権の証券化商品、CDSなどは、素人には難しいものだからだ。これを出来るだけ広く深く理解する格好の書物がある。ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(中公新書、2011年10月第一刷発行)だ。金融が世界を支配して、南欧、アジア、アフリカなどに大量失業者を生みだし、日米等先進国からまともな職業を無くして不安定労働者ばかりにし、現在の超格差世界を作り上げたと。だからこそ今や、この膨大な金持ち資金を有効に投資すべき有効需要など世界のどこにも見いだせなくなってしまったのだと。
この本の内容は、僕が12年ここで新たに勉強し直しては原稿を書き続けてきて、たどり着いた現代世界の諸不幸の大元の解説と言える。ここに展開されていることは、日本人にはなかなか書けないもの。著者は、イギリス経済学の伝統を学び継いだ上で、確か20代前半に日本江戸期教育の研究目的で東大に留学され、以来熱心な日本ウォッチャーを続けられたという政経版ドナルド・キーンのようなお方。以下は、この書評第一回目として全体のさわり部分の要約である。世界経済がこのようになったからこそ、今の世界の諸不幸が生じていると、そういう結論、大元解明のつもりだ。

『米企業利益のうち金融利益の割合が、1950年代までは9・5%であったものが急増して、02年には41%と示される』

『機関投資家の上場企業株式所有シェアがどんどん増えていく。1960年アメリカで12%であったこのシェアが、90年には45%、05年61%と。そして、彼らの発言力、利益こそ企業の全てとなっていった』

『企業から「金融市場への支払い」が、その「利益+減価償却」費用とされたキャッシュ・フロー全体に占める割合の急増。アメリカを例に取ると、1960年代前半がこの平均20%、70年代は30%、1984年以降は特に加速して1990年には75%に至ったとあった』

『彼らの忠実な番犬になりえた社長は彼らの「仲間」として莫大なボーナスをもらうが、「企業の社会的責任。特に従業員とその家族、地域への・・」などという考えの持ち主は、遺物になったのである。こうして、米(番犬)経営者の年収は、一般社員の何倍になったか。1980年には平均20~30倍であったものが、最近では彼の年金掛け金分を含めば475倍になっている。その内訳の大部分は、年当初の経営者契約の達成に関わるボーナス分である。全米の企業経営者がこうして、番犬ならぬ馬車馬と化したわけだ』

『「証券文化」という表現には、以上全てが含意されてあるということだ。企業文化、社長論・労働者論、その「社会的責任」論、「地域貢献」論、「政治家とは」、「政府とは・・?」 「教育、大学とは、学者とは・・?」、そして、マスコミの風潮・・・』

 最後のこれは、以下のような数字は日本人には到底信じられないもののはずということ。この本の73ページを要約した、アメリカ資本主義の象徴数字と言える。
『2006年のように、ゴールドマン・サックスというアメリカの証券会社がトップクラスの従業員50人に、最低2,000万ドルのボーナスを払ったというニュースがロンドンに伝われば、それはシティ(ロンドン金融街)のボーナスを押し上げる効果があったのである』 
 これだけの強食がいれば、無数の弱肉が世界に生まれる理屈である。2006年とは、08年のリーマンショックを当ブログでも予測していた史上最大のバブル弾け、サブプライム住宅組込証券が頂点に達していたウォール街絶頂の時だった。この結果は、失った家から借金まみれの上に放り出された無数の人々の群であった。しかもこの動きはアメリカのみに留まらず、イタリア、スペイン、ポルトガル等々にも、そこの失業者の大群発生にも波及していくのである。こんな所業を放置しておいて、どうして世界の景気が良くなる時も来るなんぞと言えるのだろうか。

 さて、これから3回に分けて、この本の出来る限り忠実な要約をしていきたい。
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