最近、新聞でもテレビでも、標記の議論を何回も聞き、読む場面に出くわして、驚く経験が多い。今日の中日新聞でもこの主張に出会って、これを書く気になった。
読書欄に、金子勝著「平成経済 衰退の本質」を中沢孝夫・福井県立大学名誉教授が書評をした文章が載っている。この本はこのブログでも触れたもので、書評全体が、誤りと言えないことを「針小棒大」に膨らませて批判しているという意味で、僕としては全く同意できない。その典型が標記の下りであり、先ず中沢の当該文章自身を抜粋してみよう。
『ただ、本書が強く批判している安倍政治に関しては、必ずしもその視線は公平ではない。直近ではたしかに景気に陰りがあるが、近年(過去六年)で見れば、就業者数が劇的に増加し、失業率が下がり、倒産件数も下がる、という肯定すべき現象もあった。そのことについては、著者は関心を持たないようだ』
さて、これがこの本への正当な評価と言えるだろうか。なによりもまず、金子が「平成経済全体」を論じているのに、中沢の反論、反証は「近年(過去六年)で見れば・・・」というスパンの現象に過ぎない。
次に、平成を通じた問題としたら、国民1人当たりGDP世界順位を見れば、一桁前半から、見るも無惨な貧乏国に凋落という数字もある。それも、これだけ長期に渡る確実な労働人口減少の中でのことなのだから、中沢が言う「失業率が下がり」などは、政権にとってなんの功績にもならない。
さらに言うと、中沢が言う「近年(過去六年)で見れば」という数字は、あの100年に一度と世界中で語られた07~8年のリーマンショック恐慌の後のことである。それもそこから少しずつ立ち直って来るなどというのは自然現象であって、きわめて恣意的な反論期間設定と言える。
要するに、こんな数字などを取り上げてこの書を批判し、まして安倍を擁護するに至っては、「針小棒大」のためにする批判、議論という他はない。
なお、中沢氏と同様のこのような金子勝批判をテレビでも聞いたことがある。「史上最高の求人倍率!」というのも、忖度官僚らがちかごろどんどん流してきた資料なのだろう。
これから安倍が「5回勝った!」と国会野次で豪語し返す選挙を前にして、こんな自己宣伝の一大キャンペーンがどんどん繰り広げられるに違いない。「史上最高の求人倍率!」とともに、中沢氏のこの表現をよーく覚えておきたいと思う。
『就業者数が劇的に増加し、失業率が下がり、倒産件数も下がる、という肯定すべき現象もあった』
また、このように反論する論点には、ここまで述べてきた「もっと長期的に、失われた20年単位で見る」、「日本の労働人口の歴史的激減を考慮する」の他に、こんな反論論点もある。「非正規労働者と、長時間労働の正規」とから、時間単位給料の激減。つまり日本の絶対的な貧困化である。一昨日ここで紹介した「国民1人当たりGDP42位」という孫崎享の警鐘が、安倍忖度経済・賃金論議への何より雄弁な反論になるだろう。確か90年代後半には世界3位だった時もあったはずだ。
なお、この孫崎の数字がどこから出ているのか調べても分からなかったので、僕が調べた数字をここに載せておく。IMFの19年4月12日更新の「国民1人当たり購買力平価GDP」で、データは2018年度のものとのこと。日本は31位、近隣では台湾17位、韓国32位とあって、それぞれ44,227、53,023、41,351ドルである。台湾、韓国の急成長は中国との接近にあることは明らかで、日本が韓国に抜かれることは時間の問題だろう。
読書欄に、金子勝著「平成経済 衰退の本質」を中沢孝夫・福井県立大学名誉教授が書評をした文章が載っている。この本はこのブログでも触れたもので、書評全体が、誤りと言えないことを「針小棒大」に膨らませて批判しているという意味で、僕としては全く同意できない。その典型が標記の下りであり、先ず中沢の当該文章自身を抜粋してみよう。
『ただ、本書が強く批判している安倍政治に関しては、必ずしもその視線は公平ではない。直近ではたしかに景気に陰りがあるが、近年(過去六年)で見れば、就業者数が劇的に増加し、失業率が下がり、倒産件数も下がる、という肯定すべき現象もあった。そのことについては、著者は関心を持たないようだ』
さて、これがこの本への正当な評価と言えるだろうか。なによりもまず、金子が「平成経済全体」を論じているのに、中沢の反論、反証は「近年(過去六年)で見れば・・・」というスパンの現象に過ぎない。
次に、平成を通じた問題としたら、国民1人当たりGDP世界順位を見れば、一桁前半から、見るも無惨な貧乏国に凋落という数字もある。それも、これだけ長期に渡る確実な労働人口減少の中でのことなのだから、中沢が言う「失業率が下がり」などは、政権にとってなんの功績にもならない。
さらに言うと、中沢が言う「近年(過去六年)で見れば」という数字は、あの100年に一度と世界中で語られた07~8年のリーマンショック恐慌の後のことである。それもそこから少しずつ立ち直って来るなどというのは自然現象であって、きわめて恣意的な反論期間設定と言える。
要するに、こんな数字などを取り上げてこの書を批判し、まして安倍を擁護するに至っては、「針小棒大」のためにする批判、議論という他はない。
なお、中沢氏と同様のこのような金子勝批判をテレビでも聞いたことがある。「史上最高の求人倍率!」というのも、忖度官僚らがちかごろどんどん流してきた資料なのだろう。
これから安倍が「5回勝った!」と国会野次で豪語し返す選挙を前にして、こんな自己宣伝の一大キャンペーンがどんどん繰り広げられるに違いない。「史上最高の求人倍率!」とともに、中沢氏のこの表現をよーく覚えておきたいと思う。
『就業者数が劇的に増加し、失業率が下がり、倒産件数も下がる、という肯定すべき現象もあった』
また、このように反論する論点には、ここまで述べてきた「もっと長期的に、失われた20年単位で見る」、「日本の労働人口の歴史的激減を考慮する」の他に、こんな反論論点もある。「非正規労働者と、長時間労働の正規」とから、時間単位給料の激減。つまり日本の絶対的な貧困化である。一昨日ここで紹介した「国民1人当たりGDP42位」という孫崎享の警鐘が、安倍忖度経済・賃金論議への何より雄弁な反論になるだろう。確か90年代後半には世界3位だった時もあったはずだ。
なお、この孫崎の数字がどこから出ているのか調べても分からなかったので、僕が調べた数字をここに載せておく。IMFの19年4月12日更新の「国民1人当たり購買力平価GDP」で、データは2018年度のものとのこと。日本は31位、近隣では台湾17位、韓国32位とあって、それぞれ44,227、53,023、41,351ドルである。台湾、韓国の急成長は中国との接近にあることは明らかで、日本が韓国に抜かれることは時間の問題だろう。