「流石ブラジルですねー」、こんな解説やアナウンサーの声ばかりが聞こえてくる。確かに、表面上だけなら誰が観ても、ブラジル優勢に違いない。個人プレーばかりに目がいっているのだろうが、そんな声が気になって、音を消してテレビを観ることにした。
「ド素人の目か! サッカーが個人技だけやるものならばともかく、双方の組織も観て、語らないでどうする!」と毒つきながら。
ちなみに、僕はこのゲームの最初数分で、こんなことを感じていた。
ブラジルが受ける時のDFラインが非常に低くて、なのに前・中盤は高目に構えているから、間が空いているのである。「これで、どうやってボールを前に運ぶの?」。案の定サイド選手への長目のパスかドリブルでボールを運ぶことになり、日本の、DFラインを押し上げて密集した中盤のコンパクトプレスに手こずって、スムースに前へ運べない。 そのかわり、攻め入った時のブラジルは明らかに今最先端の「高位コンパクトプレスでボール奪取得点」を狙っている。攻撃ばかりを気にして、攻められた時の守備が軽くて薄い、これがブラジルの欠点と見えた。事実、小川航基の一得点は、相手DFのクリアミスから生まれている。
「攻守ともに個人技が上手すぎて、組織としては相手を馬鹿にしてきたチーム」
このゲームは、この六月にあったフランスはプロバンス地方の歴史あるトゥーロン国際大会の決勝戦。五輪世代の二三歳以下国代表選手たちで戦われるものであり、日本代表は初の決勝進出。圧倒的な点差で勝ち上がってきたブラジルが相手なのだ。他方、この大会に限れば、日本だって負けてはいない。予選リーグ戦では過去ここで三連覇のイングランドや、さらに南米の強豪チリをこともあろうに六対一で負かし、準決勝では、ここで最近優勝経験もあるメキシコを、同点・PK戦で退けている。
さて、このブラジル戦だが、日本は本当によくやった。ブラジル相手に一対一のPK戦。それも双方四人成功まで行って、最後の五人目の後蹴りの日本、旗手選手が失敗。敗退。
もう一度言う。「攻守ともに個人技が上手すぎて、組織としては相手を馬鹿にしてきたチーム」。そう言って良いある数字結果が厳然と残っている。枠内シュートが意外にも日本2に対してブラジル3にすぎず、これだけ個人技に差があっても、良いシュートまで持って行けてなかったことは明らかなのである。逆を言えば、個人技では負けていても、組織では日本が勝っていた。
振り返れば、準決勝のメキシコ戦もそんな戦いだった。終始メキシコが押していた。初めから攻守ともに猛烈な攻勢をかけていたこともあって。つまり、猛然と走り続けているのを日本が組織で受けているという感じ。得点も常にメキシコが先行。先ず前半五分に得点。これには、同二七分に相馬の中距離シュートで追いつく。だが、後半四〇分にまたもメキシコが先行。それを直後の四三分、磐田の小川航基の得点で追いつく。
このメキシコ戦の日本は何が良かったのか。両軍ともにDFラインを押し上げてコンパクト陣形で闘う戦いになったが、日本の方が高位コンパクト陣形をきちんと保って相手よりより抑えめで戦っていたと観る。ゲーム後に二得点目を上げた小川が述べた戦評によれば、「あれでは相手が疲れて来ると思ったので、終盤などに得点チャンスが必ず来るはずだと・・・」ということなのだ。
来年の五輪は有望と観る。ほぼ国内組で戦った今回だが、自チームでレギュラーと言える好選手が多かった。小川航基(磐田)、田中碧(川崎)、相馬勇紀(名古屋)らのことだ。他にもA代表の五輪世代に、久保、堂安、富安もいる。現在A代表が招待されて戦っている南米選手権の、チリ戦の惨敗とウルグアイ戦の健闘とを比較しても、DFラインを上げる勇気次第で日本の成績が決まってくると予告したい。純粋な個人技では、ブラジルはもちろんメキシコにも劣るのである。が、高位コンパクト組織で戦えば、そういう彼我の組織を観抜いて戦う選手らの視野の広さも加わって、初めて互角に戦えるとも。組織を観つつ戦うという視野の広さは、日頃組織的に戦うことによってこれを伸ばしていかなければ身につくものではないという意味で、純粋な個人技とは扱えないものだ。
来年の五輪に向けてこのことを考えれば、それができる組織統率者こそ必要だと思う。前に岡崎、後ろに吉田という、オーバーエイジを提案したい。岡崎は、トゥーロン国際大会の後に戦われた前記南米選手権ウルグァイ戦で二対二という殊勲の結果をあげた立役者になった。W杯ロシア大会の日本大健闘には、長谷部という統率者がいたが、日本五輪戦には是非岡崎を呼んで欲しい。日本選手の中では、世界的な強豪チームや名選手らと群れを抜いて多く対戦してきた、守備組織が見えるFW、苦労人である。同じイングランドで戦う吉田麻也も彼を尊敬しているはず。若手達にも組織の声を出す名コンビになるだろう。
「ド素人の目か! サッカーが個人技だけやるものならばともかく、双方の組織も観て、語らないでどうする!」と毒つきながら。
ちなみに、僕はこのゲームの最初数分で、こんなことを感じていた。
ブラジルが受ける時のDFラインが非常に低くて、なのに前・中盤は高目に構えているから、間が空いているのである。「これで、どうやってボールを前に運ぶの?」。案の定サイド選手への長目のパスかドリブルでボールを運ぶことになり、日本の、DFラインを押し上げて密集した中盤のコンパクトプレスに手こずって、スムースに前へ運べない。 そのかわり、攻め入った時のブラジルは明らかに今最先端の「高位コンパクトプレスでボール奪取得点」を狙っている。攻撃ばかりを気にして、攻められた時の守備が軽くて薄い、これがブラジルの欠点と見えた。事実、小川航基の一得点は、相手DFのクリアミスから生まれている。
「攻守ともに個人技が上手すぎて、組織としては相手を馬鹿にしてきたチーム」
このゲームは、この六月にあったフランスはプロバンス地方の歴史あるトゥーロン国際大会の決勝戦。五輪世代の二三歳以下国代表選手たちで戦われるものであり、日本代表は初の決勝進出。圧倒的な点差で勝ち上がってきたブラジルが相手なのだ。他方、この大会に限れば、日本だって負けてはいない。予選リーグ戦では過去ここで三連覇のイングランドや、さらに南米の強豪チリをこともあろうに六対一で負かし、準決勝では、ここで最近優勝経験もあるメキシコを、同点・PK戦で退けている。
さて、このブラジル戦だが、日本は本当によくやった。ブラジル相手に一対一のPK戦。それも双方四人成功まで行って、最後の五人目の後蹴りの日本、旗手選手が失敗。敗退。
もう一度言う。「攻守ともに個人技が上手すぎて、組織としては相手を馬鹿にしてきたチーム」。そう言って良いある数字結果が厳然と残っている。枠内シュートが意外にも日本2に対してブラジル3にすぎず、これだけ個人技に差があっても、良いシュートまで持って行けてなかったことは明らかなのである。逆を言えば、個人技では負けていても、組織では日本が勝っていた。
振り返れば、準決勝のメキシコ戦もそんな戦いだった。終始メキシコが押していた。初めから攻守ともに猛烈な攻勢をかけていたこともあって。つまり、猛然と走り続けているのを日本が組織で受けているという感じ。得点も常にメキシコが先行。先ず前半五分に得点。これには、同二七分に相馬の中距離シュートで追いつく。だが、後半四〇分にまたもメキシコが先行。それを直後の四三分、磐田の小川航基の得点で追いつく。
このメキシコ戦の日本は何が良かったのか。両軍ともにDFラインを押し上げてコンパクト陣形で闘う戦いになったが、日本の方が高位コンパクト陣形をきちんと保って相手よりより抑えめで戦っていたと観る。ゲーム後に二得点目を上げた小川が述べた戦評によれば、「あれでは相手が疲れて来ると思ったので、終盤などに得点チャンスが必ず来るはずだと・・・」ということなのだ。
来年の五輪は有望と観る。ほぼ国内組で戦った今回だが、自チームでレギュラーと言える好選手が多かった。小川航基(磐田)、田中碧(川崎)、相馬勇紀(名古屋)らのことだ。他にもA代表の五輪世代に、久保、堂安、富安もいる。現在A代表が招待されて戦っている南米選手権の、チリ戦の惨敗とウルグアイ戦の健闘とを比較しても、DFラインを上げる勇気次第で日本の成績が決まってくると予告したい。純粋な個人技では、ブラジルはもちろんメキシコにも劣るのである。が、高位コンパクト組織で戦えば、そういう彼我の組織を観抜いて戦う選手らの視野の広さも加わって、初めて互角に戦えるとも。組織を観つつ戦うという視野の広さは、日頃組織的に戦うことによってこれを伸ばしていかなければ身につくものではないという意味で、純粋な個人技とは扱えないものだ。
来年の五輪に向けてこのことを考えれば、それができる組織統率者こそ必要だと思う。前に岡崎、後ろに吉田という、オーバーエイジを提案したい。岡崎は、トゥーロン国際大会の後に戦われた前記南米選手権ウルグァイ戦で二対二という殊勲の結果をあげた立役者になった。W杯ロシア大会の日本大健闘には、長谷部という統率者がいたが、日本五輪戦には是非岡崎を呼んで欲しい。日本選手の中では、世界的な強豪チームや名選手らと群れを抜いて多く対戦してきた、守備組織が見えるFW、苦労人である。同じイングランドで戦う吉田麻也も彼を尊敬しているはず。若手達にも組織の声を出す名コンビになるだろう。