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書評「国家と教養」(藤原正彦著)③ 冷戦直後から、米金融が日本改造    文科系

2019年07月21日 10時20分16秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 この書の第一章「教養はなぜ必要なのか」では、標記題名のことを描いている。国民が今の日本人の生活悪化で最も重要なこのことを見抜く教養こそが必要だったのだと、ご自分の反省も込めて、語られる。目次に紹介されている各章の概要ではまず、第一章分はこの様なまとめなっていた。

『「グローバル・スタンダード」の背後にある、「アメリカの意図」を見抜けなかった日本、情報の取捨選択を可能にする「芯」のない国は、永遠に他国の思惑に流される』

 というように、冷戦終結後世界の未来が不透明な時期で、かつ、日本住宅バブルが恐らくアメリカによって弾けさせられたという時期に、世紀の移り目のようなどさくさまぎれのそんな時に始まった日本へのアメリカの思惑諸行動が描かれていく。日本大改造、規制緩和、「巨大ヘッジファンドや巨大多国籍企業などが・・」、「金融資本主義の完成」、「アメリカ政府の年次改革要望書と、日米投資イニシアティブ報告書」などなど。時の政府が騙されるようにしてこれら全部を受け入れてしまったそのさわり部分に、その典型例としてこんな記述がある。

『2005年、小泉純一郎首相による一方的な郵政解散の2ヶ月前、自民党の城内実議員が衆議院の委員会で、竹中平蔵郵政民営化担当大臣にこう質問しました。
 事前にこの質問だけはしないよう懇願されていたものを、城内実氏がアメリカの露骨な内政干渉に対する義憤から強行したのでした。これに対し竹中大臣は、「17回」と渋々答えました。露骨で執拗な内政干渉がなされたことを認めたのです。300兆円に上る郵貯や簡保に狙いを定めたアメリカが、いかに熱心に郵政民営化を求めたかを物語ります。
(中略)
 実際、上場する時のゆうちょ銀行の社長はジティバンク銀行の元会長、運用部門のトップはゴールドマン・サックス証券の元副会長になっています。そして、保有する米国債は、ゆうちょ銀行スタート直後の2008年にはゼロでしたが、2016年には51兆円に増加しています。その間に日本国債の保有は159兆円から74兆円に減少しました。地方の衰退や国内産業の空洞化に拍車がかかりそうです。この売国的とも言える郵政改革を、郵政選挙で国民は熱狂的に支持したのです。
 アメリカの欲する日本改造を、なぜか我が国の政官財と大メディアが一致して賛同するばかりか、その旗を振り、国民を洗脳し、ついには実現させてしまう、という流れは今も続いています。(これらを)大新聞が一致して支持する様はまさに壮観かつ異様です』


 僕、文科系がここで何度も書いてきた異常な日本の貧困化の原因がこんなアメリカの金融行動とそれを受け入れた日本政府だと、同じように藤原氏も語っているのである。日本国民1人当たり購買力換算GDP世界順位が、90年代前半には1桁代前半であった国が、一向に「物価2%目標」も達成されぬ長期のデフレの末の今や32位。こんな酷い貧困化数字を、ここのブログでずっと強調してきた。

 藤原氏はなお、こういうアメリカの世界戦略出発点を、こんな世界史大転換時期に求めていく。

『冷戦終結で、瞬く間に共産圏という主敵が霧散してしまいました。巨大情報網の人員や予算の大幅削減が必至であることを考えると、彼らが青ざめるのは当然です。生き残りの手段として彼らは、主たるターゲットを共産圏から経済戦略に切り替えました』

 こうして起こったのが、世界第2位の経済大国としてアメリカに『狙い撃ちされた日本』であり、『改革によって損なわれた「国柄」』なのだと、藤原氏は展開していく。藤原氏自身も日本最大の友好国と考えていたアメリカが、その日本をソ連の次の最大のターゲットにしたという驚愕の事実。何と我々日本人はお人好しだったかと、こう述懐するのである。

『(冷戦終結と同じ頃に起こった日本の)バブル崩壊後の日本経済を立て直すための、盟友からの暖かいアドバイスと受け止めてしまいました』
『軍事上の無二の盟友アメリカが、経済上では庇護者から敵に変わったことに、世界一お人好しの日本人が気付かなかったための悲劇』



(続く、次回4回目で終わります)
コメント (2)
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