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「私が国家ですよ」は誤り  文科系

2020年06月10日 12時56分31秒 | 国内政治・経済・社会問題

 

 国会討論でこんな、やり取りがあった。
『 2019年、2月28日の衆議院予算会議で
>長妻昭議員「統計問題を甘くみない方がいい。扱いによっては国家の危機になりかねない、という認識はあるのか。」
>安倍総理「いま、長妻委員は国家の危機かどうか聞いたが、私が国家ですよ。」』

 この安倍の答弁はトンデモナイ誤りである。そのことを安倍が分かっていないのがまた、とんでもない事である。こんな認識を持っているからこそ、彼のトンデモナイあれこれの言動が出てくるのだろうと、初めて僕は彼が分かった思いになった。
 
 国家として彼よりもはるかに重いものが存在する。それが憲法だ。彼と憲法との関係は、まず何よりもこの事。彼がどれだけ頑張っても、彼個人では憲法は変えられないという仕組である。その仕組とはこういうものだ。国の主人公が国民であって、その国民に彼がお伺いを立てて、それを了承されなければ憲法をその一文字でさえ変える事はできないのである。

「国家とはまずその国民と憲法である。」

 彼は憲法を守らねばならないし、これに従った従来諸慣行も、そもそもこの憲法への恭しい態度でさえ、厳格に守らなければならないのである。そういう憲法の全てについてまた、立憲主義という考え方が憲法の前提として存在している。

『従来為政者は、国民の権利を犯しがちであった。そこで近代国家の主人公としての国民が、自らの基本的人権を守れよという形で、為政者を縛ったものが憲法である。憲法は単なる国民のお約束ではない
 
 さて、安倍が「私が国家ですよ」とか、誤って「私は立法府の長です」と事実として叫んでいるその時、以上の憲法と憲法理念は、彼の心のなかでどういう扱いを受けているのだろうか。
 例えば「憲法を変えるよう、国民を私が引っ張っていっても良い」とさえ言えるのだろうか。絶対に言えない。国民の過半数の過半数以上という程度の支持を得たからと言って、国民がみずから進んで憲法を変えようと言い出さないのに彼が率先して動くのは立憲主義の精神から観て誤りなのである。むしろ、三権の一つが率先して憲法を変えようなどの動きは、警戒の対象にこそなるべきなのだ。現に安倍は、三権の一つ司法権に訴えうるか否かを握る検察官の人事を自分が握ろうとしたような独裁志向の人物なのであるから。

このことを今何よりも、強調したい。

「私が国家ですよ」などという誤った考えを持っているからこそ、「憲法改定が、安倍の趣味」と自民党議員にさえ言われる誤った態度が出てくるのであろう。

コメント (1)
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小説 俺の連れ合い 3  文科系

2020年06月10日 06時32分59秒 | 文芸作品

『 可愛がられたんだ
 同人誌に孫と遊ぶ自分を長短の作品にし続けてきた。そんな作品合評のいろんな声から、熱心すぎるという意味でどうもかなり特殊な態度らしいと気づき、考え込み始めた。「孫は疲れるという人も居ると言われたが、そんなこと思ったこともないよなー」とか、「構い過ぎと言われたが、確かに頼まれたこと以上に随分多く、自然に手を出している」とか。ここからさらに、そう言えば、我が子ともこんな風に付き合ってきたよなー。それもごく自然な成り行きとして……。自転車も水泳も、正しい走り方や娘のピアノ教室曲さえ、俺が教えてきたはずだ……。完全共働きの子育て時代は、仕事も忙しかったけど、その前後の二人の子の保育園送迎や夕食後にまた職場に赴いた時間を含めれば、一日平均して一五時間以上も働いてたけど、土日など暇があればほとんど子供に使っていたはずだ……。ここまで来たら、当然こう訝ることになった。なぜあれが疲れることもなく、ごく自然にできたんだろう?
 ここでまた、ふっと思った。俺自身が幼少期にいろいろ可愛がられてきた。母親にはもちろん、他の大人たちにも……、そう言えば俺は昔から老人が好きだが、彼らに可愛がられた? とそこまで記憶と思考が進んできたとき、関連してたちまち閃いたのが、このこと。幼少期から小学入学過ぎまでの俺は、お経をいくつか唱えることができたのである。あれは、同居に等しかった母方の祖母の影響に違いないが、その周辺の人々に随分可愛がられたもんだ! ちなみに、ここで、このお経が俺の人生にもう一つ重大な影響を与えたという、そのことも思い出した。我が父母、兄弟妹四人の合計六人の中でただ俺だけが音楽が得意になったその理由について過去に考えたことがあるその結論なのである。お経って音程もあるし、合唱まであって、音楽の要素をすべて含んでいる。そして、音楽、音感ってほとんど幼少期に育つものだから……。
〈俺が幼少期にされてきたように、他の人にも対している。特に子供と老人に『そんな感情、対応』がごく自然にわいて来て……〉  
  このように広く自分の幼少期を振り返ってみたのは初めてのことだったが、この連想全体がこんどは関連する過去をいろいろ思い出させてくれることになった。〈周囲の老人で肩もみをしなかった人は一人も居なかったはずだ。あの祖母、俺と連れ合いそれぞれの両親……〉。〈老人には、特におばあさんには、どこでも、いつでも可愛がられたよなー。きっとどこかババ泣かせというか、ババの子ども好きに甘えられる子だったんだ〉。〈小学校の夏休みなどには弟の幼稚園へ出かけていって、たくさんの園児を遊ばせてた。いまはこの同じことを、孫の保育園や学童保育でもやっている。それも、それぞれをお迎えに行く日々のことだ〉。

 はてさて、こういう俺の生い立ちは良かったのか悪かったのか、そんなことを考えてみても、今はもうどうしようもない。月木には学童保育にお迎えに行き、金には保育園へ。二人の走り方も自転車も、保育園の竹馬競争も教えて来た。水泳教室はいつも見学に行きたくなって、その進級テスト前には熱心な特訓をしてきた。ゆえに進級も速くてハーちゃんは四泳法全て卒業、それら各二五メートルの個人メドレー・タイム測定クラスをやっている。ピアノ教室曲のレッスンも日々手伝って、学校の授業参観にも代理参加が度々と、そんな生活だ』


 自分について掘り下げたものを言葉にして書き留めてみるというのは貴重なことと知ってはいたが、この二つの随筆、とりわけ「可愛がられたんだ」を書き上げた直後から、重大な変化が俺の中にいろいろと生まれ始めた。〈彼女の自己主張の強さ、「子どもらも認める、文字通り、決して謝ったことがない強情」を最後には実質許してきたといったところが、ほかならぬ俺にあったのではなかったか? ほかならぬ俺こそが、これときちんと対決することがどこかで必要だったのではなかったか?〉。
 さてそこからの俺は、この対決をどんどん強め、深めていったのである。このことによって、我が家の山火事が、日本ならぬ豪州の山火事のように激しく、大きなものになっていったのは必然の成り行きだった。

 そんな頃のある日、コーちゃんの体操を励ますために通っていた松本家で、この山火事の激化を洗いざらい吐き出してみるという出来事があった。何気なく切り出したつい最近の山火事話がそんな風に発展していったのだ。小春日和の陽だまりの廊下の椅子に向かい合って、昔から聞き上手で今はさらに質問がうまくなった彼が、興味ありげな微笑みを浮かべつつ、
『うちのかみさんも、きつい人だけど、これって、流行りの言葉なら「妻のトリセツ」だよねー?「老妻の取り扱い説明書」?』
 このあとの前後、周辺会話などはいっさい省いて、彼と俺とで辿り着いた地点を彼が語った言葉の形でまとめてみれば、こんなふうになるのだろう。
『今さら相手の人間を換えようとしても無理だよ。ただし、行動や言葉なら換えられる部分もあるだろう。例えば、越権的な言動や激しい怒り言葉には応えず、無視を繰り返す。越権の意味がわからぬ人じゃなし、そのうち随分減っていくんじゃないかな』
『あんたは俺と違って、子や孫にそれだけのことが出来る体力も技能も、どういうか優しさもあるんだから、彼女にもそれを少々お裾分けしたらどう。余程喧嘩が減ると思うけど』
  これらの内、ずっと続いた俺の領域にまで入り込んで指図する言動については、既にほとんど無視するようになっていた。このことについて残っているのは、無視して喧嘩を避けた以上、余分な抗議などはしないということだろう。それほどに彼女はいわゆる強情で、それが俺には未だに謎なのである。もう一つの言葉「子や孫にやってきたことを連れ合いにもお裾分け」というのは、ちょっとどう捉えたらよいのか。その答が、思いがけなくも、また信じられぬほど偶然にも、後日間もなく起こった俺らの山火事の中で、連れ合いがほとばしり出したこんな言葉、表現の中によーく見えたのである。
「貴男は、『人間には優しく』なんて、新興宗教の教祖様みたいなことを私にお説教してきた。その有り難みが私にも及んでいるとは最近気付いたけど、他人に対してよりも私に対しての方がはるかにこれが少ない!」
  新興宗教の教祖様みたいなところ! 私にも及んでいる! そして、何よりも、「私には、はるかに少ない!」 これらに驚いたというのは、こういうことだ。
〈彼女が、自分と違う俺という人間を俺の予想以上に、今はちゃんと知ってるんだよ!〉
〈しかも、自分にとって好ましいことだったとも、今は素直に認めている!〉。
 ここまで来てやっと俺が気づいたことを言葉にすれば、こんなことになる。
〈俺のこの性格は、多分人間にとって長所と言って良いものだろう。が、彼女から見ればほとんど俺の甘さとしか扱えず、同時に、その甘さでもって他人に対する彼女を抑える要素にもなり、かつ自分にはあまり適用されぬ有り難みのないものにしか見えなかった?〉

  このあとすぐに、そういう俺と対比して、連れあい自身を改めてもう一度紙の上の言葉にしてみることにもなっていった。父の収入が当てにならぬ五人兄弟姉妹で服装などもみすぼらしく、転居も多くて、思春期前から成人までそんなよそ者には冷たい田舎の土地柄の中で肩身を狭くしつつ、かつ、心中いつも周囲に抗議しながら育った人だ。この負から生じたエネルギーをたまたま学業に向けられて、片田舎の高校から年に一人も入らぬ大学へ入って、立身を遂げた女性である。勤勉はもちろんのこと、周りが見える感性や頭もあるだけに、良い思い出がない古くさい周辺の「世の人々」には厳しい目を向けてきたに違いない。思えば、「あの人のあの言動を、そんな風に悪くとるのか?」という他人批判と、言葉には出さないから一種陰険な強すぎる自己弁護の人付き合いが、出会いの頃から今もなお、俺が彼女に最も多く起こした言い争いテーマだった。そのかわり、家族には己の全力を注いで来たのだから、当然口うるさくもなる。可愛がられて育った俺が甘くも見えようから、自分が頑張らねばとやってきたというのも、言わば自然な成り行きだ。こんな口うるささにいつもいつも怒りがついて回りすぎると俺が抗議してきたわけだが、それだってこんなようなもんだろう。
〈こんな簡単なことがなぜ出来ないのか? すぐにしないのは、さぼっているからだ!〉
 我が家にしょっちゅう起こっていたこの怒りも、よーく振り返ってみれば偉大な産物を生んでいる。こんなボンボンの俺が、今や家事一切を苦にしなくなっている。孫の世話なら彼女よりずっと熱心だったから日々味わえている幸せも、この怒り付きの五月蠅さのお陰だ。
 長年の悩みを紙に書き記して整理してみると、事態が見えてきたようだ。同時に、この時、俺の夢だった穏やかな二人の老後の方向も見えてきたのである。

 俺の領域に入り込んで来た指示、指図などは、無視すればよい。他の家族への同じ越権指図は、二人だけになった時に論争するとかのプライドを傷つけないやり方を採れば、やはりなんとか減らしていけるかも知れない。その際はまー、最近のような山火事激化も仕方ないと諦めて、俺も頑張るさ。俺の利益のためではないと分かれば多少態度は変わっていくかも知れないし、そもそもこのごろは『大山火事の後には、すぐに平穏』というやり方もお互い随分身につけてきた。この越権指図を減らしていくためにもあと何よりも大切なのは、俺が自然にやれて来たようなババ泣かせをば、今は彼女にこそ発揮するように務めることだ。日常生活技術を彼女から教わり、それが孫達にこれだけ自然に、かつ苦もなく発揮できるようになった俺だから、それぐらいのことは全然難しい事なんかじゃなくなっているのだしして………。


 振り返って思えば、配偶者を選ぶって重大過ぎることなのだ。それも、学業以外には大人になるような社会経験もほとんど積んでいない現代社会の青二才が。その初めを俺は幸いにもこういう形で迎えられた。〈これだけ憧れた人なのだから、これで上手く行かなかったら誰とやってもそうなるはずだ〉、〈上手く行くとは、お互いが変え合い、変わりあっていくことだろう。そもそもどんなカップルでも、全く別の所で育った二人なんだから……〉。それ以降、夫婦としての時を経ていくにつれて、同じことを重ね重ね発見するばかりだった。
〈配偶者を選ぶって、以前に考えていたよりもさらに重大なことだったんだ!〉
 こんな俺にとっての夫婦とはいつもいつも、よく言われるような「水か空気」とはやっぱり正反対の関係であり続けてきたわけだ。それが近く永遠の別れに入っていく、今………。俺は思春期を過ぎた辺りからいつも、なぜか、こんな「別れの思い」を胸に温めながら生きてきたような気がする。そう言えば最近の彼女も、俺の「教祖様」を発見して、なにかそれに感化されたのか、俺の孫の世話をかなり助けてくれている。と言うよりも、そんな俺や孫にどう言うか、何か優しくなって……。

 この明くる日、昼食を摂っていた食卓で、俺の口を突いてこんな言葉がつぶやき出されていた。自分でも驚くほど自然に、なんのてらいもなく出たものだ。
「あんたが注文すると言ってた樹木葬に、俺も一緒に入ることにするけど、いいよな?」
  それまでの俺は、「火葬して、どこに撒いてくれても良い。墓は要らん」と、彼女にも子どもらにも言い続けてきたのだった。

 

(終わり)

 

 

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