『「新しい世界経済」の教科書』目次紹介の②
「第2部 地に墜ちた資本主義をこう変える」
昨日紹介を始めたスティグリッツのこの本『これから始まる「新しい世界経済」の教科書』は、その構成、内容も読者にとって極めて親切な、分かりやすいもの。まず、目次の最大5項目からして、次の通り。
「はじめに 今こそ『新しい世界経済』へ大転換する時」
「序章 不平等な経済システムをくつがえす」
「第1部 世界経済を危機に陥れた経済学の間違い」
「第2部 地に墜ちた資本主義をこう変える」
「おわりに アメリカ型グローバリズムを許すな」
そして、本論である1、2部はそれぞれ計3章と2章からなっており、それぞれの章には節はなく、1部が全3章34条、2部が全2章51条という極めて具体的ないわば箇条書き(説明)になっていて、その箇条書き題名もわざわざすべて目次に載っているという親切さだ。そんなわけで今日は、本論のこの箇条書きそのものを紹介してみたい。それも、読者が最も識りたいはずの「第2部 地に墜ちた資本主義をこう変える」の第4章22項目、第5章29項目の前者の方を転載し、明日は5章29項目の積もりだ。ちなみに、この本の章建ては通しナンバーになっていて、第2部の第1、2章が4、5章なのである。
第2部 地に墜ちた資本主義をこう変える
第4章 最上層をいかに制御するか
特権の網を引きちぎる
最上層を利した〝判断〟
知的財産権のバランスを取り戻す
貿易協定のバランスを取り戻す
政府の交渉で医療費を制御する
破産のルールを変更し、住宅所有者と学生を守る
金融セクターの改革
〝大きすぎてつぶせない〟を終わらせる
シャドーバンクを規制する
あらゆる金融市場に透明性を
クレジットカードとデビットカードの手数料を減らす
よりきびしい罰則のあるルールを施行する
FRBのガバナンスを改革する
短期主義を打ち破る
CEO報酬に歯止めをかける
金融取引税を制定する
長期の投資者に力をあたえる
税制を改革する
最高限界税率を引き上げる
〝公平な税制〟を定める
企業の海外所得に課税する
成長促進、平等促進へ
なお、これらの変革の現実性について少々。アメリカ人ノーベル賞経済学者が「アメリカをこう変えよう」と提唱しているだけではない。著者は当然このことも大変気にしているのであって、「はじめに」には、こんなことが強調してあった。
『本書はもともと、ルーズヴェルト研究所の報告書という形で、主として政策決定者向けに発表された。しかし、世に出るや、該当の人々をはるかに超えて反響があった。〈ニューヨーク・タイムズ〉紙は〝最上層への莫大な富の集中と、さらに強まる中間層への搾取を導いた三五年の政策(レーガノミクスに始まる自由主義経済政策)を書き換えるための大胆な青写真〟と呼び、〈タイム〉誌は、報告書が不平等の〝秘めたる真実〟を暴いたと伝え、フォード財団は〝陸標〟と呼んだ。
もちろん、政治家たちも耳を傾けてくれた。エリザベス・ウォーレン上院議員(反ウォール街の政治家として知られている)には〝画期的〟と評価していただいた。賛同者、労働組合指導者、連邦議会議員、大統領候補者らが電話してきて、概要説明と話し合いと〝ルール〟のくわしい解説をもとめた。重要なのは、彼らが報告書を行動喚起とみなしていたことだ。より強い経済をつくるために、具体的に今、何ができるか?』
さて、あのような考えをもつウォーレンが大統領選挙でなぜ急台頭してきたかの一部理由も分かったが、こんな世界情勢に今の日本は、竹中平蔵が菅首相を崇めたて、「サナエノミクス」が政権与党総裁候補スローガンなのだそうだから、何と言ったら良いのか。日本の金融暴力、経済空洞化、格差はアメリカよりもずっと早く、20世紀末から始まっていた。さらにその上に「アメリカ流金融自由化・規制緩和」という「ルール変更」を認めてきたのであった。そして、この「反省」の方は、政治世界では特に遅れているからこその「サナエノミクス」や、日銀・GPIFぐるみの官製株バブルという悪循環。物作りが駄目になるわけだ。だからこその「国民一人当たり購買力平価GDPが世界5位から33位へと急低落」という貧乏国に、わずか25年でなったのである。
(こういう「目次」ですから、当面この紹介だけでも後2回はやります。差し当たって明日は、「第5章 中間層を成長させる」の全29項目の紹介をするつもりです)