九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

『問題は英国ではない、EUなのだ』 書評②  文科系

2017年02月13日 08時13分50秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
この本の目次はこうなっている。
『 「日本の読者へ 新たな歴史的転換をどう見るか?」
1 なぜ英国はEU離脱を選んだのか?
2 「グローバリゼーション・ファティーグ」と英国の「目覚め」
3 トッドの歴史の方法・・・「予言」はいかにして可能なのか?
4 人口学から見た2030年の世界
5 中国の未来を「予言」する・・・幻想の大国を恐れるな
6 パリ同時多発テロについて・・・世界の敵はイスラム恐怖症だ
7 宗教的危機とヨーロッパの近代史・・・自己解説「シャルリとは誰か?」 』

 さて、この7本それぞれが独立した、インタビューとか講演とかをまとめて紹介したものであって、全体としてまとまった著作というわけではない。また、重複も多く、要約は至難だ。いろいろ考えて、こんな要約をすることにした。最初にはじめにを要約し、上の目次で1~2回までを一つ、次にトッドの一風変わった「方法論」ということで3~4回めを一つ、最後5~7回目を四つ目として、都合4回にわたってここにまとめていくつもりだ。

 さて、今回ははじめにだけを要約する。

 第二次大戦後三つの歴史的時期があった。80年までが経済成長・消費社会期、その後2010年までが英米先導の経済グローバリゼーション期、そして2010年からはグローバリゼーションの終わりの始まりである。これを導いた英米がすでにそうなっている。それが英国のEU離脱であり、米国では例えば白人死亡率の上昇が起こっているという資料などがあげられる。

 これは「グローバリゼーション疲労」から先進国がばらばらになっていく過程を示しており、ユーロも間違いなく崩れて、不一致も多くなり、ばらばらになっていく。
 英仏の出生率は安定しているが、高齢化ドイツは移民で、同じく日本は移民ではなくロボットで補う方向だし、中国経済は内向き米とユーロ崩壊から続かなくなるだろう。

 これらの国それぞれの未来予想は難しい。経済よりもネオリベラリズム思想がこれまで前に出過ぎて来たことによって、社会科学、歴史思考が荒廃しているからである。なお、経済主義は知的ニヒリズムの一つの形態である。ちなみに、現下世界史の以上のような新たな転換は、経済転換である前に、家族、人口、宗教、教育などの転換になるだろう。

(あと3回続きます)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

嘘で固めた頽廃政権   文科系

2017年02月12日 16時22分54秒 | 国内政治・経済・社会問題
 今の政府って嘘ばかり、嘘で固めた頽廃政権である。

①フクシマ原発事故の後で、安倍首相、海外向けに曰く。
「アンダーコントロール」
 今でさえ、残存燃料・デブリがどこにあるか分からんのに。加えて、事故処理方針を作るために資料を集めようとしているロボットでさえも、すぐに壊れる放射能まみれ現場なのに。初めから未必の故意よろしく意識した放射能汚染水垂れ流しの海は、既にどれだけ汚れたろうか。これで「アンダーコントロール」? 東京五輪前には、もっともっと嘘を横行させるのだろう。

②文科省従来の「天下り無し」も、大嘘ということになった。事務次官が「万死に値する」と「反省」したほどの罪を確信犯として犯していた、この悪辣さ! 庶民がまともな職が無くて皆困っている時代に、「月二日勤務で2000万円の天下り先」!
 なお、この違法天下りは全省庁がやっているとも判明。
 こんな中で先頭切って挙げられた文科省潰しは、僕の推測では今後の文部行政ねじ曲げの為の布石と観た。大学人文社会系の縮小、日本近代史(教育)の改悪などなどの。これが杞憂に終わってくれればと、今は祈るばかりである。世界が内向きの右ポピュリズムへと一斉に傾いていく時、日本でこれに拍車を掛けるというのが、安倍ブレーンの今の方向なのだろう 

③そして今度の、「スーダンに戦闘なし」と、それによる自衛隊派遣。とくに、派遣自衛隊員の家族全員の不安な心を踏みにじる、憲法違反でもある。憲法違反になる大嘘をつき通し、嘘で固めた憲法違反政策を貫き通したわけだ。これは、特に、酷い話である! まるで、人の命をもてあそぶようで・・・。

④今の世で最も問題になる数字、失業率について、実際に使用されている「(完全)失業率」の算定方式も大嘘の部類であろう。日本だけがなぜか「完全失業率」と、わざわざ述べているのである。その算定方式はこうだ。
 分子には、算定期間に一日でも働いた人は入れず。職安に行かなかったパラサイトも入らず。「『家事手伝い』独身女性」も入らず。職を諦めているかの独身女性は、僕の回りにも無数にいる。そのくせ分母には、諸外国とは違って、公務員、軍人を入れているから、この「完全失業率」、諸外国よりも圧倒的に少なくなる算定方法である。世界統一算定方式がないというのも、国連が骨抜きにされているということ。日米のような格差大国には特に都合の良い話だ。
 こういう事情から、日本だけがわざわざ「完全失業率」と述べて、数値をとても少なくしてきたわけだ。酷い話だ! きちんと算定すれば多分10%を越えるだろう。かくて「日本GDPは総額こそ高くとも、個人当たりでは世界30位という非生産性。1990年の10位から、ここまで落ちた」のである。「GDP総額が高くとも、1人当たりはどんどん貧しくなっている」って、中国を笑えない国、この面では中国とよく似た国になってきたということだろう。中国と同じようにお上が強いのである。権威主義的強権政府ということだ。日本はもはや中国と同じ意味では、経済大国ではないのである。 
コメント (27)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「よたよたランナーの手記」(185) 19日ぶりでも、走れた!   文科系

2017年02月12日 01時42分42秒 | スポーツ
 1週間の入院の前はインフルエンザで走れなかったから、都合1月23日以来18日の間を置いて、本日11日ジムへ行った。この間7、9日と家の18段の階段往復を各60、70回やっているから、下半身の筋肉は何とかなるだろうと目算を立てつつ。長期ブランクで問題になるのは、心臓なのだ。

 さて、ウオームアップとして、時速6キロで歩き始める。これを6・5キロ時に上げて歩き、15分たったころおもむろに走り始める。しばらくして7キロ時へ。こうして、前半30分が3・3キロで無事に終われた。
 そして、後半は3・6キロだったから、1時間合計が6・9キロである。まー、ほとんど歩いていただけのようなもんだ。もっとも、後半には時速9キロまでを入れたから、この速度で筋肉は大丈夫という、そんな確認は出来たのである。膝も爪先や足首の筋肉も。ただ、例によって事後に右膝に違和感があるのは、18日前と同じである。鍛えねばならぬということだろう。

 問題の心臓がやはり落ちている。7キロ時で心拍数145,9キロ時では160を越えてしまう。今後は、トレーニングを重ねてこれが落ちてくるのを待ちつつ、その様子を見てスピードを上げていくというのがいつもの正しい方向、やり方である。まー1時間の距離を1日に100メートルずつ増やしていこうと、そんな積もりでやっていくということだ。10日も走ればきょうの6・9キロが8キロにはなるはずだと、そんな目算である。そこまでいつも、右膝の特別な強化が必要だろう。でないとこの右膝はスピードアップに耐えられないと思う。

 なお今日は、ウエートトレーニングもやった。いつものように、腹筋、背筋と、腕肩を押し、引く筋肉強化を。腹筋の僕のやり方は、10回×7セット程を各10秒の休みを挟んでやる。背筋は70キロ程を、腕のプルもやはり70キロ程を、プッシュは30キロ程を、各10回やる。というよりも、筋トレはぎりぎり10回限度でやれる重さが最も筋肉に良いのである。僕の場合腕肩のプッシュ筋肉が特に弱いのだろう。
 人生、上半身の筋肉も大切なのである。「時速7キロで歩ければ長生きする」と言われているのと同様に、こんなことも語られているのだから。「握力がやはり、その人の活動年齢延長と相関関係がある」。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

南京大虐殺この二日の論争 文科系

2017年02月11日 08時22分55秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
『Unknown (ネットの声)2017-02-10 22:44:38
百歩譲って、犠牲者名簿が作られなかったのは、中国はあまりにいい加減でだらしないから――国も軍も党もその労を惜しんだのだといたしましょう――そうなると、その場合、ならば何を基準として30万人という数字を公言しているのか、全くの意味不明となりますが――繰り返しになりますが、犠牲者30万人の場合、南京の元々の人口は20万人程度ですが、その周辺を含めると合計60万人ほど民間人がいたようですし、もちろん更には軍人もいたわけです(「あった」派の人にはたとえば上海から10万人の部隊が合流したとして、結局南京でどのくらいの人が戦死したのか? また、南京大虐殺はそもそも「軍人ではなく民間人の被害」こそが問題の焦点だったのでは? という疑問にも答えていただきたいものですが)。』

『Unknown (ネットの声)2017-02-10 23:05:50さて、これだけ――当時その近くにいた人の生き残りだけでも30万ほどの人がいました。中国全土の遺族の数は百万人単位でしょう。彼らはなぜ声をあげなかったのか? 戦後5年とか10年といった混乱期には慰霊祭開催がができなかったということもあるでしょう。では、15年後は? 30年後は? 45年後は』

『反論 (文科系)2017-02-11 08:18:04
① 「犠牲者名簿」は、「国も軍も党もその労を惜しんだ」のではありません、出来なかったのです。国として一般的な全国的戸籍もほぼなく、「職もろくにない中国では、兵士にはかき集めの浮浪者も多い」とは、日本軍兵士事前教育に使った教科書にも書いてあった通り。

② 数字根拠は、こういうもの。
 先ず上海から長江上流の首都・南京に逃げた敗走兵と、南京城近隣からの避難民を含むもの。なお、上海中国兵は延べ70万人投入、南京包囲戦の直前3か月続いた大激戦でした。

③ 中国兵士が敗走するとき民間人に化けた便衣隊は超有名で、ここから民間人男子も多く殺され、「捕虜」になりました。

④ 「捕虜」のことですが、日本軍が完全包囲した南京城壁(城塞都市です)は高さ18メートルで、一方は揚子江沿いです。完全包囲城壁の限られた出入り口からの中国軍撤退・突破作戦を、ある歴史学書は、こう描いています。
『唐生智(将軍)は、撤退の時期と方法を誤り、12日夜から13日の朝にかけて、約15万人の中国軍は日本の包囲網を破って退却を試みた。しかし、たとえば第58師で長江左岸に逃れられたものは3分の1に過ぎず、第87師は、約300名が長江の激流を渡河できただけであったといわれる』(「満州事変から日中戦争へ」加藤陽子・東京大学大学院人文社会系教授著、岩波新書)

⑤ こういう状況では「捕虜」は無数でしょう。極端に言えば、便衣隊らしき人も含んで死者以外の男は全部「捕虜」にした。そして、以降終戦まで占領下にあった南京の「捕虜」は、収容所に連れていくように見せかけて、密かに全部殺すこともできたはずだ。満州事変から更に南下してきた上海・南京包囲戦以降の中国南下作戦を考えれば、「捕虜」を生かして放つはずがありません。現に集団白骨現場が無数に発見されています』

⑥ なお、男以外でも、レイプ殺害はあったと証明されているし、ちょっとでも抵抗、抗議を示した婦女子を殺害していったことも日中人以外の外国人が証言しているように、有名な話になっています。


 結論
 こういう状況すべてから南京虐殺死者数検証を目的とした日米学者会議で、日本側学者でさえがこう認めざるを得なかったということなのです。
『中国人死者数は2万~20万人』
コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

随筆 「10日空白後のギター・・・」   文科系

2017年02月11日 07時00分34秒 | 文芸作品
 虫垂炎でかっきり1週間入院した。もちろんギターは弾けなかった。そこで思い付いたことがこれ。記憶しやすいという意味で切り良くしてあと3日プラス、10日弾かないでその後の様子を見てやろうと。これは、今後あり得るこういうブランクの影響や対策を知る実験のつもりだった。この13年間3日続けて弾かなかったこともない僕としてはもちろん、飛び抜けて長いブランクへの実験的挑戦というわけだ。

 さて、9日に再開、先ずいつものようにアルペジオから入る。カルカッシ教本冒頭の22のアルペジオと、カルリのアルペジオ10パターンである。次が、ガスコンのセーハ練習。セーハしながら8ポジションまで上がりつつ、各ポジションで同じパターンのアルペジオを弾き、またセーハ無しの最も下まで下がってくる奴だ。このセーハ練習もアルペジオも、ちょっとぎこちなかったが、まーなんとか弾けた。

 次に、僕の「暗譜群」の最初4曲を弾いてみる。月光、ロマンス、ラグリマ、アデリダである。普通に弾けたから、今のレッスン曲マリーアに入る。これが、つかえもせず難なく弾けたのである! 一日目の9日はこれで終えた。
 2日目の10日はもう、教室に通うレッスンの日だ。朝だけの練習になる。昨日と同じアルペジオ・セーハ練習と、昨日弾いた暗譜群の次の曲へと進む。この日の暗譜群は9日の3倍程の曲を弾いた。その上で、レッスン曲の「郷愁のショーロ」だ。これが実に、やはりつかえもせず弾けたのである。出来映えも、11日前とほとんど変わらない。

 さて、そこで思ったこと。アルペジオとか暗譜群曲とか、日頃の練習に定型パターンがあって、それを「立ち帰るべき原点」として復習、確認できれば、僕の場合だが10日のブランクぐらいは何の支障もないのだと。こう確認できたときには、今年76歳になるこの身にとって何と幸せなことだろうと一人感慨に耽っていたものだ。まだまだ弾き続けることが出来るという、安心、希望を温めながら。
 そこで、悠々とレッスンに出かけることになったのである。そして、先生にもこの事実を話しておいてから弾いたら、大変驚かれていたということも付け加えておきたい。こんなふうに。
「10日の完全ブランクの後、昨日から2日弾いただけ?! それも、郷愁のショーロは今日の朝だけの練習?! 前と全く変わりないじゃないですか。特に左手が・・・。この2曲は、かなり難しいものだと思いますけど・・・」

 結論。
『 日々の練習で立ち帰るべき自分の原点さえ日々続けていれば、15日ぐらいの完全ブランク後も、この原点にちょっと触れるだけで技量はたちまち元に戻るもの。そのように日々やっていれば、15日程度のブランクなら、僕の場合は当分まだまだ大丈夫! 』
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新たな書評、要約本のこと① 文科系

2017年02月10日 08時07分47秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 ここの11年で、どれだけ多くの書評をやって来たろうか。僕の場合はほぼすべてかなり詳細な要約が中心だから、苦労も多かったが、その分勉強になった事!
 さて、今度の書評対象に僕が選んだのは、この本。フランス人エマニュエル・トッド著『問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論』(文春新書 16年9月第一刷発行)。
 このグローバリズム時代に世界史や外国のことを知らずに近未来日本を論じられると考えているかのネット右翼諸君もここを多く訪れる。よって、こういう「世界各国比較の歴史人口学者」という珍しい人の書をいつものように何回かに分けて紹介していく意味はとても大きいはずだ。是非最後までお付き合い願いたい。
 
 同書の帯を見るとこう書いてある。
「的中した予言ーーソ連崩壊、リーマン・ショック、アラブの春、ユーロ危機、そして英国EU離脱 (などの)予言はいかにして可能なのか?」
 このような著者は以下のような人物であるが、ここ数年の日本でも大評判の学者だ。文春がこういう人物を取り上げているという点も面白いが、まず、フランス、イギリス両方を母国としてきたように両国に通じている人類学者と言うのが興味深い。フランスの「歴史人口学」者ということだが、英国にも半分国籍があるような人だ。自身ケンブリッジ大学で博士号を取り、同じくケンブリッジを出た長男が英国籍に換わったことによって孫二人が英国人という人物でもある。フランスを愛しているとは言うが、今流行の狭い愛国主義には陥りようがないということだろう。

 若い頃のトッドはマルクス主義者を自認していたそうだが、今は中道左派の学者なのだそうだ。また、マルクス主義者にはこんな人物だと紹介することもできる。彼の母の父が往年のフランス共産党員として超有名なポール・ニザンである。作家、哲学者であって、1940年に、第二次世界大戦のダンケルクの闘いにおいて戦死した人物である。ヒトラー・ドイツ相手に英仏連合軍が敗れた闘いであった。こんな祖父を持った彼もその「歴史人口学」知見から、今は、マルクスの骨子理論をいくつも批判している。たとえば、こんなふうに。
『中産階級がどうなるかが歴史の帰趨を決します。マルクスはこの点を見誤りました。プロレタリア階級の勢力が増しても、何も起こらず、歴史は動かなかったのです。イギリスでも、フランスでも、革命は、「ストーンの法則」の通り、中間層の識字率が高まることによって起きたのです!「アラブの春」も、中国の革命も同様です』(108ページ)
 その彼がまた、別の所ではマルクスについてこうも述べている。
『私にとってマルクスは重要な存在です。マルクスは、ドイツ、イギリス、フランスというヨーロッパ文化の三大潮流の交差点に位置し、ヨーロッパ・ユダヤ人の典型です。「マルクス主義」ではなく、そのような存在としてのマルクスが私にとっては大事なのです』(102ページ)
 こういう思考からマルクス主義などを経済主義として批判する彼は、経済学ではこんな人物を取り上げている。グローバリズムを生んだ供給サイド経済学には反対らしく、需要不足にこそ現在の世界経済危機問題を見ている経済学者たちばかりだ。この点は僕がここで述べてきた理論に非常に近い。
『経済危機それ自体は、ここでは取り上げません。これについては、トマ・ピケティ、クルーグマン、スティグリッツといった人々の著作を読めばよいわけで、世界で格差が拡大していることは様々に確認できます。世界的に需要不足が顕著で、これが経済危機の原因であることも確かです』(163ページ)

 さて、「日本の読者へ 新たな歴史的転換をどう見るか?」という「はじめに」から全7章を、今後、いつものように順を追ってご紹介していきたい。この極めて体系的な著者の興味深い方法論なども随所に紹介してある各章の表題を紹介すると、こんな調子である。
『 1 なぜ英国はEU離脱を選んだのか?
2 「グローバリゼーション・ファティーグ」と英国の「目覚め」
3 トッドの歴史の方法・・・「予言」はいかにして可能なのか?
4 人口学から見た2030年の世界
5 中国の未来を「予言」する・・・幻想の大国を恐れるな
6 パリ同時多発テロについて・・・世界の敵はイスラム恐怖症だ
7 宗教的危機とヨーロッパの近代史・・・自己解説「シャルリとは誰か?」 』 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「よたよたランナーの手記」(184) またしても、心臓病のこと   文科系

2017年02月09日 11時04分07秒 | スポーツ
 虫垂炎手術による1週間の入院から、標記のことでまた一つ問題が持ち上がった。慢性心房細動をカテーテル・アブレーション手術で完治させて走り続けている僕にとっては、今回の入院はじめにこんな心臓異常が発見されたと宣告があって正に青天の霹靂、人生の悲劇。心臓大動脈弁閉鎖不全症の「中軽度」!
 これを聞いた我が連れ合いなどは僕の人生が予想よりもはるかに短くなると観念して、ひどくがっくりしたのだそうだ。「心臓大動脈の血液出口で逆流が起こっていては、身体のガソリン、酸素が回らず、近くやがては・・・」と考えたわけだ。僕としても、せっかく入院1週間前の23日には90分で11キロ近いLSDもできていたから、前立腺癌治療終了からさー再出発と、そんな時点での青天の霹靂なのであった。予め予約をとっておいた退院明くる日の7日に、八事日赤病院に出かけた。以前の手術でまた走れるようにして下さった循環器内科執刀医の先生が対応してくれたが、診断結果はこういうことだった。

「今日からでも全く以前同様に走って良し」。「念のために改めて心臓エコーを9日に撮」とも言われたが、詳細な診断はこうである。
①「軽度のこの症状は、この年齢なら無い人がいない程のものだ」
②「貴男の場合、8年にも、10年にも軽いこの症状は出ていたけど、あなたへもお知らせしなかったくらいである」
③「今回は『軽中度』ということだが、10年手術以降の今現在言われるように走れている貴男の場合は特に何の心配もない。現に今、血中酸素濃度を測ったが98~7%もある。その割には心拍数も少ないから、心臓の筋肉、拍動が普通よりもかなり強いということだろう」
④「外科医であるお兄さんが大変心配してすぐに診断に行ってこいと言われたとのことだが、循環器内科の到達点は今の外科医さんでも全く想像も付かぬ程のものである」

 この診断結果に、連れ合い共々どれだけ諸手を挙げた万歳三唱をやったことか! 僕として近年では、カテーテル手術前後3年のブランクの後に、12年秋から再びどんどん立派に走れるようになって行った時さながらの喜びだった。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

朝鮮日報VS産経新聞より   らくせき

2017年02月08日 09時57分45秒 | Weblog
日本の戦争犯罪を否定する極右傾向の書籍を客室に置いたアパホテルをめぐり、中国・韓国が反発していることに関連し、在日中国人らが5日、東京・新宿にある同ホテル周辺で抗議デモを行った。デモの計画が日本メディアによって事前に報じられたことから、日本の極右団体も現場に集まり、中国人のデモに対抗するデモを行った。


 中国人のデモ隊は5日午後3時「中日友好」「平和を大切に」などと書かれたプラカードを手に新宿御苑を出発し、アパホテルまでの2.5キロを50分かけて行進。デモ隊は100人程度だったとみられる。「日本は良いが、アパホテルの元谷(アパグループ代表)は嫌いだ」というプラカードを掲げる参加者もいた。日本の全てが嫌いということではなく、アパホテルに抗議しているだけだというメッセージだ。アパホテルの創業者、元谷外志雄代表(73)は裸一貫で会社を立ち上げ、年商900億円の大企業に成長させたが、一方で「韓国・中国が南京大虐殺や慰安婦問題を政治的に利用している」「(自分の信念を伝えるため)安倍晋三首相の長期政権を最大限支援する」など主張する書籍を執筆し、自身の所有するホテル413か所の全ての客室に置いた。


 日本の右翼団体はこの日、拡声器を付けた車数台で現地に集まり、中国人のデモ隊に向かって暴言を吐き続けた。現場には警察150人が出動し、静かにデモを続ける中国人デモ隊と「中国に帰れ」と叫ぶ右翼の間に入り、「人間の壁」を作った。中国人デモ隊に向かって突進しようとする右翼のデモ隊を、警察官たちは体を張って制止した。翌日、日本の主な朝刊は「中国人らがデモを行った」と短く報じただけで、中国人より大人数の右翼が現場に集まり拡声器で応戦したことには一切触れなかった。


産経新聞より  らくせき

日本在住の中国人らが5日、ホテルチェーンのアパホテルが「南京大虐殺」などを否定する書籍を客室に備えていることに抗議したデモで、現場の東京都新宿区のアパホテル付近では、デモ行進した一団を待ち構える「行動する保守運動」を中心とした右派系グループら百数十人が陣取っていた。

 「20万人しかいなかった南京市で30万人の虐殺? ふざけたことを言うな」

 行動する保守運動代表の桜井誠氏(44)が声を張り上げると、「そうだ」「ふざけるな」と声が上がる。桜井氏が「超緊急(告知)」として自身のブログやツイッターで集合を呼びかけたのに呼応して集まった人たちだ。

 「要請文という名の強要書を彼らはアパホテルに出そうとしている。絶対にそんなことさせちゃいけない」

 桜井氏の顔を至近距離から撮影しようとした中国人とみられる2人組と、桜井氏の周りにいた人たちが口論、もみ合いになるトラブルもあり、殺気立った雰囲気に支配されていた。そのとき、桜井氏が1人の外国人男性にマイクを渡した。男性は中国・新疆ウイグル自治区出身で、静かに語り出した。(以下略)


コメント (34)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

随筆紹介  羨望    文科系

2017年02月08日 05時37分32秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 羨 望  S・Yさんの作品です
                                  
 新しい年が明けた。一月生まれの私は新年と同時にひとつ年をとる。
 そして誕生日のたびに老いを意識するようになってきた。ことに体調不良の昨今は不安材料ばかりが気にかかるが、一方、年々親族が増えるという嬉しいこともある。娘夫婦に子どもが次々と授かり、息子には可愛いお嫁さんが来た。この正月はいままでになく賑やかになった。

 お屠蘇でご機嫌の夫、お年玉を手にしたニコニコ顔の孫たち、正月ならではのカルタやスゴロクに興じてみな笑顔である。食卓にはご馳走もいっぱい、幸せの光景だ。
 せっかくみんな集まったのだから初詣に行こうとなったとき、玄関先で私は驚愕した。決して大げさではなくほんとに驚いたのである。娘と嫁が素足なのだ。足指のソックスのようなものは履いているが、スリットの入ったスカートからは二人とも脚が丸出し。暖かな正月とはいえ真冬である。私は厚手のタイツにパンツ、靴下も重ね履きをしている。むろん服装もそれなりに着込んでいる。いつの間にこんなに寒がりで年寄りくさくなっていたのか。
「そんな薄着でいいの?…」
 老婆心ながらつい嫁に言ってしまった。彼女は妊娠六カ月である。「はあい、大丈夫で―す」明るいトーンの声が返ってきた。
 たぶん大丈夫なんだろう。肌はピチピチさくら色、髪もサラサラ艶々の栗色。しなやかな肢体。何度も彼女たちに見とれてしまう。いいなあ。若いってこういうことなのか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

随筆   日本サッカーの金字塔ゲーム   文科系

2017年02月07日 07時48分52秒 | スポーツ
 随筆  日本サッカーの金字塔ゲーム


 コアな日本サッカーファンが、待ちに待った歴史的一勝を、鹿島アントラーズがとうとう上げた。昨年末、世界各大陸チャンピオン・クラブが日本に集ったクラブW杯準決勝戦において、南米優勝者コロンビアのアトレティコ・ナシオナルを三対〇で破って、アジア勢で初めて決勝戦に進んだ。そしてその決勝戦では、世界の攻守きら星を絶頂期を見計らって収集しているかのスペインはレアル・マドリッドに九〇分では「二対二の同点」!
 さてこんな結果から、二種類いると思われる日本人サッカーファンの一方、欧州と南米大陸との崇拝者とも言える人々の悔しがり様が僕の目に浮かぶのである。常々「追いつくには、五〇年かかる」などと吹きまくってきた人々だ。これを苦々しく観てきた僕は逆に、「日本も、そろそろ勝てそうになってきた」とあちこちで吹聴しまくってきたのだった。一昨年末の同じこの大会で、日本のサンフレッチェ広島が、アルゼンチンのリーベル・プレートと演じた白熱のゲームが脳裏に焼きついているからである。なんせ、このゲーム後半には相手リーベル監督は顔面蒼白だった。
 さて 鹿島と日本サッカーは急に強くなったと認識している。二ゲームが同じように「組織的守備」で光った。「攻撃的守備から入り、相手攻撃がよく見えるチーム」と評すことができる。そういう一つの面白い戦い方を築き上げたなと感じる。レアルの鹿島評も、「守備が良い。攻守の切り替えも早い。本当によく走る」というものだし。そして、この走りが落ちてきた延長戦に入って鹿島はレアルに負けたのである。鹿島のエースでレアルから二得点を挙げた柴崎岳が悔しげにそう語っていたが、逆に言えば九〇分走り回されたから延長戦に入って走れなくなって失点ということだろう。アトレティコにしても、世界最高かつ旬の選手を集めたレアルはなおさら、個人能力でいえば鹿島より数段上のチーム。それを、組織の見事さ、特に組織的走りで対等に戦ったという典型的なゲームだった。この一勝と「九〇分は同点」との二ゲームは、今後のアジア勢がビデオを回しては教訓、自信にしていくはずのものであって、今後の世界戦がますます楽しみになってくる。

 二冊の雑誌に載った石井・鹿島監督の言葉で、この偉業を解説してみよう。
① まず鹿島の戦い方の特徴であるが、石井さんはこう説明する。
『自分たちからボールを奪いに行く守備の形や、攻撃では相手陣内で自分たちがボールを動かす時間を長くすることです』
『まずは相手の攻撃力を削ぐことと、自分たちがボールを持ったときに、しっかり相手陣内で動かしてスキを狙って攻撃することがポイントだと考えました』
② 石井さんはまた、①に関わりかつこれにプラスして、次のことを強調している。
『たとえば浦和や川崎のようなスタイルも良いと思いますが、それプラス優勝するためには、勝負に対する執着心が絶対に必要で、その点では三チームの中で、我々が一番だったと思っています』
 とこう語って、クラブの古い選手らと同じように付け加える。
『それはやはり(Jリーグ発足時にこのチームにいた)ジーコの存在が大きい。(中略)二四時間サッカーのことを考え、試合から逆算して日々の生活をしなさい、というプロとしての姿勢から始まって、(中略)プロのサッカー選手とは何かを教えてもらいました』
③ 最後に、今期鹿島の強化から外せない一つのエピソードも上げておこう。選手と監督との感情的もつれから監督の休養にまで発展した大事件がサッカー界に知れ渡っているが、これを石井さんが乗り越えた経過について、ある雑誌がこんな解説をしている。
『ミーティングの最後には、必ず発言の機会を設けるなど、選手の意見を尊重してきた配慮が、結果的に仇となる。選手間で意見が衝突することもしばしばで、チームは方向性を見失ってしまうのだ。そうして、“事件”は起こるべくして起きる』

 石井さんはここから、『(ミーティングの場所としては)自らの方針と要求を伝えるだけで、選手の意見を聞く時間はなくなった』と変化したのである。こうして、『監督の立場なら苦しい時期もあるのだから、そこから逃げてはいけない』ということが、これまでと一番変わったところと語られている。「選手の意見を聞くのは個別におおいにやって、最終方針は監督が一人で孤独に決めて、全員の場所ではこれを言い渡す」と変わったということだ。選手の意見採取と監督方針への集中とをぎりぎりまで最大限闘わせあった上で、最後は監督方針を押し通すと決めたという、こういうチームは確かに強くなると思う。選手の意見としては特に、小笠原、金崎、曽ヶ端などの発言内容、発言力も見逃せないということなのだろう。特に、守備で世界に名だたるイタリアで苦労した経験を持つ小笠原の言葉は、このチームにとってとてつもなく大きいだろう。因みにこの小笠原は、ジーコ監督のドイツW杯代表チームでは大変な失敗、苦労体験も積んできた。

 こうして先期の鹿島は、集団競技の最も肝要かつ難しいところを、一山越えるようにして前進させ得たのである。至難の一山を越えたときには選手らの結集力も一皮むけたのだろうし、こんなチームは強くなるはずだと、二つのサッカー雑誌特集から読ませてもらった。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

病欠お詫び  文科系

2017年02月06日 20時37分46秒 | その他
 このブログ11年、僕がエントリーをこれだけ書かなかったのは、よくやった外国旅行時も含めて先ず無かったはず。30日に腹痛で病院へ、虫垂炎で即日手術、入院、そして本日退院。この間、入院先にネット入口も、ワイファイもなくって、ここを覗くことさえ全く出来ませんでした。読んで下さっている方には、大変失礼いたしました。
 明日からまた、書きます。ただし、思う所あってここについて今後少し手を抜きます。入院1週間という貴重な「物思う時間」を頂いて近年の自分の生活をいろいろ冷静に振り返ったとき、我ながらここに入れ込みすぎていたと反省したのです。ここに書くための読書などいろんな勉強に費やした時間は入れ込みすぎたとは思いませんが、その他多くここに使った時間はちょっともったいなかったと思う所があったのです。一日平均アクセスがいくら140あったって、この10年やはりここに時間を使いすぎていた。僕に与えられている残り少ない貴重な時間をここに使うのをかなり減らした結果ここの一日アクセスが半減したとしても、やはりちょっと手を抜きたい。ここへの1日平均必要時間3時間は、やはり長すぎました。

 ただし、愛読者の方々には、今後もよろしくお願いいたします。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

琉球新報より   らくせき

2017年02月06日 09時44分06秒 | Weblog
辺野古新基地建設阻止などを訴えるため訪米していた翁長雄志知事と稲嶺進名護市長、辺野古に新基地を造らせないオール沖縄会議の訪米団が5日夜、帰沖した。翁長知事は記者団に対し「(訪米は)3回目になるが、手応えは今回が最高。今回は相当議論を交わしたので大変大きな成果があった。県民と向かい合い、心を一つに頑張っていきたい」と成果を語った。

これに対してNHKは、成果はなかった、壁は厚かったと報道。どっちが本当なのかな?
昨日の大河で主人公が「旗が揺れておるのを見て、ある人は揺れているのは旗、
またある人は揺れているのは風、と考えた」といっていましたが・・・

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日刊ゲンダイより らくせき

2017年02月05日 09時50分58秒 | Weblog
度肝を抜かれる統計が出た。2016年のエンゲル係数が、29年ぶりの高水準だったというのだ。

 31日、総務省は12月の家計調査を発表。消費支出(2人以上の世帯)は31万8488円と実質0.3%減で、10カ月連続のマイナスとなった。

「消費支出そのものより、同時に公表されたエンゲル係数に驚きました。12月は27.5%に達し、16年平均では25.8%だといいます。1987年以来の水準です」(市場関係者)

 1987年といえば、国鉄がJRに変わった年だ。中国では、数百人の学生が天安門広場でデモを行った。大韓航空機の爆破事故が起きたのも、この年だった。サラリーマンの平均年収は385万円(2015年は約420万円)。

「生活水準は、その頃に逆戻りしたということです。野菜など生鮮食品の高騰と、輸入物価の上昇で、エンゲル係数は高まったのだと思います」(第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏)
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

琉球新報より  らくせき

2017年02月04日 19時12分04秒 | Weblog
あなたのお年玉はいくらだった? 玩具メーカー大手のバンダイ(東京)が、今年の正月に子どもがもらったお年玉の金額を調べたところ、小学生は平均2万2502円、中学生では同3万2130円だったことが分かった。もらった相手は平均5人だった。

 調査はインターネットで1月6~9日に実施。小1~中3の子どもを持つ保護者900人(各学年100人)が、子どもと一緒に回答した。

 結果によると、小学生のお年玉は1~2年が平均1万9473円で、3~4年が同2万2810円、5~6年が同2万5223円と徐々に増加。中学生になると大幅に増えるとみられる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

水井多賀子さんによる『キャスターという仕事』(岩波新書)の紹介  らくせき

2017年02月04日 10時01分43秒 | Weblog
トランプ大統領のメディア攻撃に注目が集まっているが、それを見るにつけ、
日本の宰相はトランプの先駆けだったとつくづく感じずにいられない。
トランプのようにいちいち言葉にしないだけで、この国の総理大臣は放送法をねじ曲げて解釈し、
圧力文書をキー局に送りつけるなどの“攻撃”を仕掛けてきた。
そして、トランプよりもっと露骨に、萎縮しないキャスターたちを次々に降板に追い込んだことは記憶に新しい。

そのキャスターのひとりが、NHKの看板番組『クローズアップ現代』のキャスターを
23年間にわたって務めた国谷裕子氏だ。
その国谷氏が、先日、初の著書『キャスターという仕事』(岩波新書)を出版。
約1年のときを経て、ついにあの降板騒動についても言及しているのだ。

まず、国谷氏の番組降板が判明したのは2016年1月7日のことだったが、本人に降板が伝えられたのは、
その約2週間ほど前の15年12月26日だったという。

「〈クローズアップ現代〉を管轄する組織の責任者から、番組のキャスターとしての契約を
二〇一六年度は更新しないことが決定された旨、伝えられた。
(中略)NHKから契約更新しないと言われれば、私の〈クローズアップ現代〉でのキャスター生活は終わりになる」

 国谷氏も「体力や健康上の理由などで、いつか自分から辞めることを申し出ることになるだろうと思っていた」というが、
「(契約を更新しない理由が)番組のリニューアルに伴い、ということになるとは想像もしなかった」らしい。

 実際、国谷氏が降板を言い渡される1カ月前も、制作現場では来年度も国谷氏でキャスター継続と提案しており、
「一緒に番組を制作してきたプロデューサーたちは、上層部からのキャスター交代の指示に対して、
夜一〇時からの放送になっても、番組内容のリニューアルをしても、キャスターは替えずにいきたいと最後まで主張した」というのだ。

 国谷氏の降板は「上層部からのキャスター交代の指示」によって決定した──。
国谷氏は降板を告げられたとき、こんなことを考えたという。

(略)国谷氏が頭に浮かべたこれらのうち、最大の原因として考えられているのが、
いわずもがな菅義偉官房長官への集団的自衛権にかんするインタビューだ。
この14年7月3日の放送で、国谷氏は舌鋒鋭く集団的自衛権の行使にかかわる問題点を次々に質したが
放送終了後に菅官房長官が立腹し、官邸サイドはNHK上層部に猛抗議をしたと
「FRIDAY」(講談社)が報じたほどに問題となった。

 同誌によれば、官邸は“国谷が食い下がったことが気にくわなかった”というが、
このときの国谷氏の質問はいずれもが正鵠を射るもので、キャスターとして当然、聞き出すべき事柄ばかりだった。
にもかかわらず、「相手に対する批判的な内容を挙げてのインタビューは、
その批判的な内容そのものが聞き手自身の意見だとみなされてしまい、
番組は公平性を欠いているとの指摘もたびたび受ける」(国谷氏の著書より)という現実がある。

 しかし、国谷氏の考え方は違う。「聞くべきことはきちんと聞く、角度を変えてでも繰り返し聞く、
とりわけ批判的な側面からインタビューをし、そのことによって事実を浮かび上がらせる、
それがフェアなインタビュー」と考えるからだ。

「菅官房長官への私のインタビューは、様々なメディアで、首相官邸周辺の不評を買ったとの報道がなされた。
それが事実かどうか私は知らないが、もしそうだとすれば、『しかし』という切り返しの言葉を繰り返したことが、
不評を買うことにつながったのかもしれない。
まだまだ、『聞くべきことはきちんと聞く、繰り返し聞く』ということには、様々な困難が伴うのだろうか」

 だが、国谷氏が安倍政権から「不評を買った」のは、これだけではないだろう。
たとえば、15年7月23日に放送された『クロ現』の特集「検証 安保法制 いま何を問うべきか」において、
国谷氏がこだわった点はこんなことだった。

 番組づくりの上で、担当ディレクターは番組の構成表において「なかなか理解が進まない安保法制」と
書き出していた、という。当時、当たり前のようにメディアは安保法制を語る際に使っていたフレーズだが、
国谷氏はこの言葉に違和感を抱く。

「果たしてこの言葉の使い方は正しいのだろうか。『なかなか理解が進まない安保法制』という言葉は、
文脈のなかでの置かれ方によっては、安保法制に反対が多いのは、人々の理解がまだ進んでいないからだ、
という暗黙の示唆を潜ませることにならないだろうか。
この言葉は、今は反対が多いが、人々の理解が進めば、いずれ賛成は増える、
とのニュアンスをいつの間にか流布させることにもつながりかねないのではないだろうか。
そういう言葉を、しっかり検証しないまま使用してよいのだろうか、私にはそう思えた」

 テレビは映像の力を発揮するメディアだ。しかし他方で映像は全体像を映し出すものではないし、
ときとして人びとの想像力も奪うことがある。だからこそ、国谷氏は「言葉の持つ力」を信じ、
同時に言葉に慎重だった。
官製報道などではない、いま現在の問題を深く掘り下げて視聴者とともに考える──
そうした番組をつくってきたのだという矜持が、国谷氏の文章には滲み出ている。

国谷氏は本書のなかで、「私は長い間、かなり自由にインタビューやコメントが出来ていたように感じる」と書いている。
そして「気をつけていたのは、視聴者に対してフェアであるために、問題を提起するとき、
誰の立場にたって状況を見ているのか、自分の立ち位置を明確に示すようにしていたことだ」という。

「例えば、沖縄の基地問題を沖縄に行って取り上げるとき、基地負担を過重に背負っている沖縄の人々の目線で
取り上げていることをはっきり伝えていた。基地問題をめぐっては、定時のニュースなどで政府の方針を
たびたび伝えていれば、逆に〈クローズアップ現代〉で沖縄の人々の声を重点的に取り上げたとしても、
公平公正を逸脱しているという指摘はNHK内からは聞こえてこなかった。
NHKが取るべき公平公正な姿勢とはそういうものだと、長い間、私は理解し、仕事をしてきていた」

 しかし、「ここ二、三年、自分が理解していたニュースや報道番組での公平公正のあり方に対して
今までとは異なる風が吹いてきていることを感じた」と、国谷氏は振り返る。
その時期は、安倍政権がメディアへの圧力を強めてきたタイミングと重なる。

「その風を受けてNHK内の空気にも変化が起きてきたように思う。例えば社会的にも大きな議論を呼んだ
特定秘密保護法案については番組で取り上げることが出来なかった。
また、戦後の安全保障政策の大転換と言われ、二〇一五年の国会で最大の争点となり、
国民の間でも大きな議論を呼んだ安全保障関連法案については、参議院を通過した後にわずか一度取り上げるにとどまった」

 これは『クロ現』に限った話などではなく、同時進行で他局でも起こったこと、そしていまもつづいている問題だ。
報道はいつしか骨抜きにされ機能不全に陥り、たとえば南スーダンの戦闘が「衝突」と言い換えられても
大した問題にならないという社会になってしまった。

 オックスフォード大学出版局は、16年を代表する言葉として、客観的な事実が重視されず、
感情的な訴えが政治に影響を与える状況を意味する「ポスト・トゥルース」を選んだ。
だが、日本は数年前からすでにポスト・トゥルースの時代に入っている。このようななかで、
メディアのあり方はどうあるべきか。国谷氏はこう綴っている。

「伝えられる情報のなかに事実ではないものが多くなっているとすれば、人々の生活に大きな影響を
及ぼしかねない決断をする立場にある人間に対して、その人間から発せられた言葉の真意、
言葉の根拠を丁寧に確かめなくてはならない。選択された政策や経営戦略などを検証するために、
『問うべきことを問う』ことがますます求められていくのではないだろうか。
ジャーナリズムがその姿勢を貫くことが、民主主義を脅かすpost-truthの世界を覆すことにつながっていくと信じたい」
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする