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「6時間労働論」,再度のお応え

2017年02月18日 13時47分32秒 | Weblog
【Unknown (ネットの声)2017-02-18 09:29:50
 いやいや、(需要不足を解消するための)賃金を上げる方策としては、やはり1日6時間労働は答えになっていないのでは(スティグリッツ、クルーグマン、ピケティが言及していますか? 言及していないが、彼らの信条からはこういった思考も類推される、などというのでは、それは妄想かと)。
 1日6時間労働についての直近の言及についても、私が触れたことで取り上げられている今回以外では、半年以上語られてこなかったのでは?(もっとか?)】


 僕は嘘をいう性格では全くありません。その証拠に、この「6時間労働論」を昔から今まで語っているというその経済学史的内容を、近い所もあげてみましょう。最初に言っておきますが、貴男は僕のこの論を嘲笑ったのであって、それ自身が今の問題なのです。このようにね。

『Unknown (ネットの声)2017-02-17 11:16:52
 完全粉砕?
 意味がわからない。
〈わが国の就業者はこの4年間で170万人増加した〉と〈2007年を100として、日本(の賃金)は98〉という事実は両立するし並立する。100を越えるように進んでいるのがアベノミクスで、代案がないのが中日新聞や野党の面々。
文科系さんにはあるではないですか。1日6時間労働、でしょ? 反米保守さんや1970さんにボロボロに論破されたので、ご自分の中でも「それはなかったこと」にしているのかな? まあ単なる思いつきだったようですし……1日6時間労働……。』

 問題を総世界有効需要の方にすり替えないで下さいね。「世界的」有効需要という側面でも僕は、最初から労働時間短縮も有効であると出しているのですが。ワークシェアって、一般消費の拡大の問題でもある訳ですよね。失業者を救うのですから。6時間労働で前回最も古い例をあげた理由は、貴男が思ったような事ではなく、そんな昔からずーっと現在まで、僕は語って来たよと答えたつもりでした。

【  グリーンニューディール政策には雇用対策も含まれているわけだが、雇用対策自身を現世界最大の経済課題と語る人の中には、こんな主張もある。
『私は非自発的雇用の解決には労働時間の大幅な短縮が必要だと考えている。具体的には、週40時間、1日8時間の現行法定労働時間数を、週20時間、1日5時間に短縮するように労働基準法をあらためるべきだと考えている。企業による労働力の買い叩きを抑止するためには、年間実質1~2%の経済成長を目指すよりも、人為的に労働需要の逼迫を創り出すほうが有効だからだ。経済学者は、そんなことをしたら企業が倒産すると大合唱するかも知れない』(高橋伸彰立命館大学教授著「ケインズはこう言った」、NHK出版新書2012年8月刊)
 8時間労働制とは、歴史的には既に19世紀の遺物とも言えて、20世紀の大経済学者ケインズが現状を見たら8時間労働制が続きさらに時間外労働までふえていることに驚嘆するはずだ。これだけ豊かになった世界がこれを短縮できない訳がないと。ただ、これを実現するのは、金融グローバリゼーションの抵抗を排して初めてということ。国連などがイニシアティブを取って世界一斉実施を目指す方向になろうが、イギリス産業革命後などの10数時間労働時代が世界的に8時間制度になったことを考えれば、けっして空想という事でもあるまい。近年使われる言葉では労働時間短縮はワークシェアとも言えるのである。
 同じ時間短縮、ワークシェアを語るもう1例を挙げる。
『こうした格差拡大の処方箋としては、まず生活保護受給者は働く場所がないわけですから、労働時間の規制を強化して、ワークシェアリングの方向に舵を切らなければなりません。
 2012年の年間総労働時間は、一般労働者(フルタイム労働者)では、2030時間となっており、これはOECD加盟国の中でも上位に入る長時間労働です。サービス残業を含めれば、実際はもっと働いています。ここにメスを入れて、過剰労働、超過勤務をなくすように規制を強化すれば、単純にその減少分だけでも相当数の雇用が確保されるはずです。(中略)
 私自身は、非正規という雇用形態に否定的です。なぜなら、二一世紀の資本と労働の力関係は圧倒的に前者が優位であって、こうした状況をそのままにして働く人の多様なニーズに応えるというのは幻想といわざるを得ないからです。』(『資本主義の終焉と歴史の危機』、水野和夫・元三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミスト著。2014年刊)。】
(「100年に1度の危機」とは何だったのか(7)  文科系 2016年12月02日)

【 なお高橋氏はこうして、その最大主張としてこんな事を語っている。
『私は非自発的雇用の解決には労働時間の大幅な短縮が必要だと考えている。具体的には、週40時間、1日8時間の現行法定労働時間数を、週20時間、1日5時間に短縮するように労働基準法をあらためるべきだと考えている。企業による労働力の買い叩きを抑止するためには、年間実質1~2%の経済成長を目指すよりも、人為的に労働需要の逼迫を創り出すほうが有効だからだ。経済学者は、そんなことをしたら企業が倒産すると大合唱するかも知れない』
 週20時間労働? 全く現実みがないように思われる。が、イギリスで起こった資本主義は最初10数時間などと今から見れば途方もない労働時間だったことを人は思い出すべきだ。それが8時間になったのである。人類が必要と認めればこんなことも可能だということだろう。なお、高橋氏がこの本で最大問題にしている非自発的雇用とは年間2000時間働いても200万円に満たないワーキングプアや、週40時間を遙かに超える無給長時間労働を拒否できない正社員たちのことだ。これに関して高橋氏は、ケインズ理解、読み直しの基本として、こんな風に解説してみせる。
ケインズは失業者をなくすために有効需要政策を創出し、論じたのであって、100年後の世界先進国に上で述べたような意味での非自発的雇用の膨大な群れが発生するなどという事態は彼の想定外の(酷すぎる)問題であったと述べているである。 つまり、8時間労働制が実現したのだから将来の世界はもっともっと労働時間が少なくなるはずだと発想していたと、そうケインズを読むのである。ケインズにとっては自明の理すぎて、語る必要もない前提だったということだ。】
(世界経済史の今を観る(9) 経済諸問題解決の方向③  文科系 2014年10月10日)

 すぐ上のこのシリーズの7回目にはこうも書いています。総需要の問題こそ、経済問題で最も大切な事として。それと労働時間短縮って、論理的に結びつくという書き方でもありますね。

【さて、①、現在の世界経済構造である。これを、過去のケインズやマルクスの経済構造把握理論との対比でどういうことになるのかについては、ここまで折に触れて観てきた。要は、新自由主義が、『需要側でなく供給側つまり資本の自由に任せるのが、官僚任せにも等しい、怪しげな「マル公」国家まかせに比べればまだ上手くいくのだ』というやり方である。だが、需要を重視したケインズなどに言わせれば当然こういうことになるだろう。現に有効需要がおおいに不足しているではないか。それで現物経済はどんどん小さくなり、そこでの利子率はどんどん下がってきて、失業者をいっぱい出しながらだぶついた資本はマネーゲームに明け暮れることになってしまったではないか。資本が膨大に余っているほどにこんな豊かな世界なのに非正規労働者が溢れ、死に物狂いで働かなければ正規職もつとまらない世界というのこそおかしなものだろう。 このようにケインズを読むのが、今話題の本、NHK出版新書、高橋伸彰立命館大学教授著「ケインズはこう言った」などである。

 基軸通貨ドルが変動相場制以降どんどん安くなって、世界がふらついているからマネーゲームが起こるのだが、いずれにしても、資本がモノ・実物経済から全く離れてしまったのは大問題である。この点は、金子勝とか浜矩子とかなんらか伝統を踏まえた経済学者のほとんどが指摘し、批判するところと思う。食料、水、エネルギー、地球環境など、人間はモノの中で生きるしかないのだから、確かにそうには違いないのだ。問題は、それらのモノがきちんと生産、確保されて、すべての人々に優しく行き渡る仕組みとして何が相応しいかということだろう。なのに食料は買い占められて世界のあちこちに反乱が起こるほどなのだし、中国の退耕還林政策は水問題で悪戦苦闘している有様だ。なお、金子勝らが強調するグリーンニューディール政策提起などのように、世界の実物経済の新分野で有効需要を切り開き、失業者などに普通の職を作っていくというように新たな有効需要の道を開拓していくことに国家の命運をかけるべきだと語る論者も多い。少し前のオバマもそうだったし、イギリスの政治経済論者にもそういう人は多い。】
(世界経済史の今を観る(7) 諸問題と解決の方向①  文科系 2014年10月08日)
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『問題は英国ではない、EUなのだ』 書評、要約 ④ 最終回   文科系

2017年02月18日 08時11分59秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 今回は二つの章の要約。「4 人口学から見た2030年の世界・・・安定化する米、露と不安定化する欧、中」および、「5 中国の未来を『予言』する・・・幻想の大国を恐れるな」。なお、中国が両方にダブっているのは、各章が別々の講演などを集めたものだからであって、中国については一つにまとめる。つまり、アメリカ、ロシア、ヨーロッパ、中国と、著者の未来予測をまとめる。

 と言っても、初めに一つお断りがある。著者エマニュエル・トッドは歴史人口学者を自認しているが、この学問の限界も自覚している。「人口統計的、家族構造的、社会学的」と呼ぶ域を超えず、「国民のパッションが絡むことは難しい」とか、「ここでは未来シナリオが多すぎて、何とも予言できない」とか、ご自分の学問の限界をも踏まえているように見えるのである。
 なお、この学問のこうした発言可能領域について、僕から観れば、例えばこんな問題には確かに言及できないだろうと思われる。諸国家の特徴だけからは説明できない、将来大きくなるだろうと考えられる国連の問題。諸国家の歴史的現実を時に大きく乗り越えたような史実に関わる思想・理念の問題、などである。

 さて、ともあれ、先ずアメリカ
 結論を言えば、安定はしているだろうが、ダイナミズムを失った国というものだ。そういう根拠として以下の説明がなされている。
 どの国よりもここは、高等教育進学率が早く普及した。ちなみに、高等教育とは、大学、短大、専門学校などを含むというのが世界の基準のようだ。その伸びが65年ぐらいから頭打ちになって、80年頃からは女性の方が男性よりもそれがどんどん高くなり、若者自殺、訴訟の激増、相互不信社会になっていた。が、95年以降は、若者自殺率が低下し、出生率も2・0と安定した社会になりつつある。ただし、男性の高等教育進学率低下が95年辺りから起こっていて、これが依然として高くなっていく女性との間で、現在15%もある開きが、なお進んでいるのである。トッドがダイナミズムが少ない国と規定するのは、こういう希望が少ない若者男性を念頭に置いているようだ。
 なおここで、同じ高等教育進学率成長曲線の現状(2000年までの数字であるが)を日本で見てみよう。アメリカと非常によく似ていると分かる。率はほぼ30数%で世界でも最も高い部類。男性よりも女性の方が高いのも同じ。それどころか、この進学率男女差はアメリカよりも日本の方が大きいのだ。女性はなお急に伸びていて、男性が停滞しているからである。アメリカと同様に日本も、若者男性高等教育進学率が停滞しているという点で、ダイナミズムを失っている社会と見ているのだと思う。

 次はロシアである。
 ソ連崩壊の危機を乗り越えて、安定化していると語られている。高等教育進学率は両性とも伸び続け、出生率は1・8、乳児死亡率も平均寿命も改善されている。父権的共同体家族という家族形態は中国やアラブと同じだが、女性の地位がはるかに高いとか、集団行動の文化という長所があるのも強みと述べられている。西欧の評判とは異なって、政府も信頼されていて、1億4000万人の人口では他国の脅威にもならないだろう、とも。弱点と言えば日米と同じで、男性の進学率が1990年代後半から下がっているということだ。ただこの国の高等教育進学率は、日米とは違って男性の方がかなり高い。
 ちなみにまた、ウクライナ問題は西欧が仕掛けたという側面もあって、ロシアにとってはむしろ強みになっていると語られてあった。国土の割に人口が少ないロシアにとって、ウクライナから高学歴でロシア語が話せる経済移民が入っているのが強みになると。
 
 さて次が、ヨーロッパだが、ここはドイツ支配を重く見て、ほぼドイツのことだけが語られている。
 出生率は、英仏などがほぼ2なのに、ドイツだけが1・4だ。この超高齢化社会を控えて、多すぎる移民受け入れが社会を不安定にするだろう。高等教育進学率は、1990年代から男子で低下し、女子が増え続けているから、日米にちょっと遅れて同じように女子の方が上になるという逆転現象が始まっている。男性の進学率低下が米ロよりも激しく、これが不安定要因になるはずだ。
 また、ここの経済がグローバリゼーションの先頭を走っていて輸出も金融も好調なのに、高齢化社会を控えてなおこのパワーを求めている点から積極的移民政策があるということだ。私、トッドとしては移民政策には賛成だが、ドイツのは極端すぎる。文化の差違を無視すると、手ひどいしっぺ返しを受けるだろう。一例としてイトコ婚を例に取ると、トルコは10%、シリアに至っては35%なのだ。
 盟主ドイツがこうだから、EUの近未来も非常に不安定だと考えるべきだ。イギリスの離脱にはそんな背景もある。イギリス離脱が決まった時、フランスとイタリアとの元首が真っ先にドイツに馳せ参じたというのも、今のEUを象徴しているように思われる。

 次に中国である。 
この国は不安定で、問題山積である。まず、良いと言われる経済だが、自力でやったものではない。米欧などが投資して、労働力が安い製品を中国から輸入して、米欧もおおいに儲けたのだ。好調なのはインフラ拡大で、国内個人消費は35%に過ぎず、旧ソ連型経済と同じだ。さらには軍事技術は遅れていて、親米国に囲まれているのに、帝国のように振る舞っている。
 出生率がまた極端に少ないので猛スピードで高齢化しているだけでなく、女100の出生に対して男117という点がまた不安定要素になる。高齢化社会の社会保障をいったいどうするのだろうか。
 こうして、13億人口のこの国は問題が多すぎるが、将来シナリオも多すぎて行く先不明である。が、良いシナリオだけは思い浮かばない。良いという意味は、安定成長が続き、消費も増え、権力も安定し、腐敗が減るというようなことだ。
 強い父権の下で子どもは平等というここの家族制度は、今の大きな格差を受け入れ難いものだ。これを指導者がショナリズムの強化で乗り越えようとしている。ちょうど、西欧で共通してナショナリズムが激化した1900年ごろの状況に今の中国が居ると考えればよい。日本はこのナショナリズムにけっしてナショナリズムで付き合うべきではないと、特に強調しておきたい。プラグマティックにだけつき合うべきなのだ。ちなみに、中国経済がダウンしたら世界が困るのだから、日本は中国経済を支援した方がよい。そして、こういう中国との緊張関係からしても、日本はロシアとパートナーシップを確立することが最優先事項の一つになる。また、アメリカが世界の警察をやめたのだから、こういう中国を前にしたら、日本の防衛力強化も不可欠であるとも言っておきたい。

 これで、終わりです。
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