『エリザベートTAKARAZUKA20周年スペシャル・ガラ・コンサート』より‐稔幸さん
(公演プログラムより)
「‐今や手の届かない大きな作品に感じる『エリザベート』‐
雪組初演版に出演しましたが、ウィーン版の映像少しと台本と譜面で初めて接した『エリザベート』は、宝塚にかつてない感じの暗い作品というのが第一印象でした。少年ルドルフの役が回ってくるとは思わなくて。ウィーン版や東宝版ではボーイソプラノの子役が歌う、澄んだきれいな声が必要な難しい曲<ママ、どこにいるの?>があり、新人公演ではトート役で大人の声を出さなくてはならず、喉に神経質になった記憶があります。ルドルフは非常に繊細で人とは違う感覚を持ち、王室という普通とは違う環境で育って子供の頃からプレッシャーも大きい。当時猫を飼っていて、「猫を殺した」という歌詞は歌いたくないなと思うくらいショックでした。ルドルフが死に、霊廟でエリザベートが〈ママ、どこにいるの?〉と同じ旋律を歌うことでルドルフの少年時代が再びお客様の記憶に甦るあのシーンがとても好きです。トートは演じていてほんとに楽しかったですね。一路さんのトートが白やグレイの淡いイメージだったのに対し、自分は紫や赤といったパキッとした色の」死ねよと言いそうな野性的で野蛮なトートを演じたくて、ロック・テイストの〈最後のダンス〉は譜面を見ると本当に難しい、一筋縄ではいかない曲で、そこがまたかっこいい。歌いきった時の気持ちよさが半端なくて、コンサートでも歌ったりしています。
その後『エリザベート』は宝塚でも東宝でも何度も再演され、初演の自分たちが作った作品であることを超えて、手の届かない大きな作品になってしまったなと。親の手から巣立っていった子供のようというか、昔出会った何かが大きく成長して、前は肩や手を回していたのが今は握手するのがやったみたいな、そんな遠い作品に感じたりもします。それにしても愛される作品になりましたよね。今回、初演の方々と一緒に少年ルドルフとして歌い、『エリザベート』の世界をまた体験できることが自分自身とても楽しみです。」