アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

創造的な演奏(蜜蜂と遠雷)

2019年04月23日 | ピアノ
蜜蜂と遠雷」、読み終わりました。というか、すぐ読み終わってはいたんだけど、数日持ち歩いて読み返してました。

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すごい迫力でした!! 作者は別に、コンクール受けまくってたピアニスト崩れとかいうわけじゃなくて、子どものころピアノを習っていて、ずっと音楽は好きで(クラシックに限らない)、あとは浜コンに取材通い詰めたくらいらしいけど、どうしてこんな説得力ある小説が書けるんでしょう。

この話のコンクールでは、マサルと亜夜と塵という三つのビッグな才能が出てくるんだけど、その中でも特異なのが塵。

原典忠実、研究するみたいに読み解いていって作曲者の意図を…というアプローチではなくて、
自分の表現の中に曲を生かしていくタイプ(そして審査員の先生からは極端な反応を引き出す)。

一番クリエイティブなタイプの演奏者といえるでしょう。(良い悪いではない)

この小説でおもしろいなと思ったのは、クリエイティブというのが、突き抜けた才能によって「無から有」が生まれてくることではなくて、
もちろん天才なんだけど、クリエイトするにあたってはいろんな材料があるというところ。

他参加者の演奏を聴いたり、
(亡き)先生からは、「音楽を外に連れ出してくれ」という方向性が与えられていたり、
似たところのあるピアニストの亜夜と響き合ったり、

あるいはホームステイ先で活け花を教わったり。

コンクール中のホームステイ先は、コンクール運営側からコーディネートされるのがふつうだけれど、塵の場合は、父親の知人のところに宿泊しています。その知人というのが名だたる華道家で、とりわけ「野活け」「景色活け」をする人なんですね。

つまり、自然にある植物の美を切り取って貰い受けてそのままを活かすような華道。そのとき植物に余計な負担をかけないことがとても大事で、そのためにテクニック(切る、折るといった手技や、水や気温、植物の生息域の知識など)がある。

植物の扱いはとても手早い。「一瞬のイメージを逃さないためにはスピードがいる」「急ぐためにはきちんとした技術が必要」

塵は、それらの話を注意深く聞き、鋏の使い方を試したりしたあと、こう質問する:
「失礼ですけど、活け花って矛盾してますよね。それこそ、自然界の中にあるものを切り取ったり、折ったりして、生きているかのように見せる。ある意味、殺生をしてわざわざ生きているように見せかけるのって矛盾を感じませんか」

そこから、野活けをするときはいつも後ろめたさを感じているからこそ、活けた一瞬を最高のものにするように努力していることとか、「たぶん、一瞬というのは永遠なんだ」というような話とか。

すると、塵はいうのだ。
「うーん。活け花って音楽と似てますね」

別に、一般的にいって活け花と音楽が似てるわけじゃないかもしれないけど、塵にとっては響き合うところがあって、ちゃんとそのヒントを生かして「音楽を外に連れ出す」ことができた。

それは「AとBが似ている」ということが正しいとか正しくないとかではないのだけど、その関係を見出した人は何かが得られるということ。

クリエイティブってそういうことかもしれないなぁと思った。

天才の話ではなくて、まったく平凡というか初心者の話であっても、たとえば私が「ピアノと書道は似ている」と思うことで、書道からピアノにヒントが持ち込まれ、またその逆も真なり。


似ている、といえば、塵と亜夜は似たところがあると描かれている。この「似た」二人が、二人だけで、即興アンサンブルを楽しむシーンは圧巻で、二人がそれぞれこのインプロビゼーションから得たものの大きさは計り知れず、あぁこのシーンの音楽をぜひ聴いてみたい、と、思ったんだけどこの小説って映画化されるんですよね? このシーンはどうなるんだろう…

みんながめいっぱいイメージ膨らませたところで、映画では実際の演奏を提示しなきゃいけないわけで、ずいぶん勇気のいることだなと思うわけです。演奏には一流どころをそろえたようで…福間さんは明石役(のピアノ)ですね。楽しみ~


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コメント (2)
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