カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

ネタバレ注意の思い出交換

2013-09-14 22:19:12 | 即興小説トレーニング
 スポーツに興味はないけれど、映画『フィールド・オブ・ドリームズ』は好きだな、と彼は言った。

 もう随分昔の作品だけど、啓示を受けた主人公の男が自分の所有していたトウモロコシ畑を潰して野球場を造り、家族を除く周囲から変人扱いされるけれど、その野球場に一人、また一人と歴代大リーガーの選手(その時点で全員故人)が現れて野球練習を始めるんだ。
 で、結局彼らの野球を見るために大勢の人がその野球場を目指す車のライトが連なっているシーンがクライマックスかな。ラストシーンはその野球場に現れた主人公の父親(もと野球選手、もちろん故人)と主人公が無言のままキャッチボールをするんだけど、何か胸にこみ上げてくる物があったね。

 君の方はどうなんだい?と聞かれた私はドン引きされるのを覚悟で答える。

 子どもの頃に読んだ漫画『アストロ球団』かしら。
 第二次世界大戦で戦死した沢村栄治投手が、戦地で仲良くなった地元民の男の子に死地に向かう前日、自分は死んでも九人の野球戦士として必ず生まれ変わる。だから君はその九人を見付けて野球チームを作って欲しいと遺言を残して、後に実業家として成功したかつての男の子は資産を活用して一人、また一人と野球選手を見付けていき、アストロ球団を設立したの。
 でも話のキモは、元ネタになった八犬伝と同じく野球選手が九人集まるまでの戦いだったから、プロ野球球団なのにメンバーが揃わないまま超絶打法と殺人投法で試合を無理矢理進めていって、最後には危険だという理由でプロ野球界から永久追放されるの。それでも野球戦士は揃ったから新天地を目指そう、先ずはアフリカへ。みたいな終わり方で何だか感動すればいいのか良く判らなかった気がするわね。

 とりあえず、今度会える休日は彼の家で『フィールド・オブ・ドリームズ』を一緒に見ることになった。ついでに彼は『アストロ球団』の文庫本をネット通販購入を目論んでいるらしい。

 そんな事を何となく共通の友人に話すと、『あんたらって本当にお似合いのカップルだわ』と空の果てでも視ているかのような遠い目をされた。
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