カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

068「狐」より ・ 座敷弧

2014-09-13 18:21:22 | 和モノ好きさんに100のお題
 私が小さい頃から家の離れに暮らし、忙しかった両親の代わりに私の相手、主に勉強を見てくれた初老のおばさんが親戚ではなく狐だと知って吃驚した。何でも父が私くらいの年に訪ねてきて以来、ずっとそこにいるらしい。物静かで礼儀正しい態度が祖父に気に入られ、当時から離れは空いていたし無理に追い出そうとすると悪さをすると聞くし、まあ良いかと何となくそのまま一緒に暮らしてきたのだそうだ。
 御稲荷さんみたいに何か御利益があるのかな、などと不謹慎な事を呟いた私に、父は平然と、仙弧は陽の気が集まる場所で暮らしたがるから、おばさんがいなくなるときは多分うちが駄目になるときだろうと答えた。
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