カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

第八十三夜・高嶺の薔薇にはトゲがある

2017-09-27 21:44:33 | 百人一首と色名で百物語
たかあきで『高嶺に』と『薔薇色』を使って創作してください。

 届かないと思い込んでいた高嶺の花を手にした時は嬉しくて、自分を取り巻く世界が変わって見えた。けれど、同時にその花は咲かせ続けるために膨大な肥料と手間が必要な、少しでも扱いを間違えると鋭い棘を突き刺してくる無慈悲で冷酷な存在でもあった。
 結局、傷だらけになって耐え切れずに高嶺から落ちた私が最期に見上げた花は、はじめて見た日と寸分違わぬ美しい姿をしていた。

 つまり、私はあの花にとって、その美しさに惹かれて現れた虫の一匹にしか過ぎなかったということか。
コメント