カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

旅路その62・海の見える街

2019-08-13 08:27:52 | 旅人の記録
たかあきは真夏のかつての故郷に辿り着きました。名所は駅、名物は海鮮鍋だそうです。

 数年前、波に根こそぎ攫われた街に私の知る面影は残っていなかった。それでも眼前に広がる海は記憶のままで、そこでは既に海の恵みを受けながら新しい街の新しい生活が繰り広げられている。半世紀に一度の割合で流される街は、これからも姿を変えながら人々と共にその営みを続けてていくのだろうか。
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骨董品に関する物語・ナポレオン・トロワの爪磨きセット

2019-08-13 07:54:12 | 突発お題

 就業規則からマニキュアを許されない彼女は引き替えに爪を丁寧に磨く。仕事で酷使される爪は気付くと先端が砕けて薄くなっているが、そうなることで彼女は一層爪の手入れに気を使う。一度だけ何故そこまで気を使うのかと尋ねると、爪を振るわずに済むようにと答えが返ってきた。
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骨董品に関する物語・ボヘミアンガラスのフラスコと小物入れ

2019-08-13 07:50:54 | 突発お題

 自然を写し取るという行為は造物主に対して決して勝てない勝負を挑むことだが、それ故己自身の眼に映る要素を加味することで造物主の手を離れた唯一の存在となる。だから己の視点という要素無しに凍結させた完璧な自然を造り出そうとする事自体が大いなる罪悪なのだと私を見る彼の笑顔は、何故か酷く歪んでいた。
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