男女の双子だった二人は小さい頃から非常に仲が良く、性格はまるで違うのに大人になって離れて暮らしていても同じ日に同じ菓子を買って実家に遊びに来たり、偶然旅行先で出会ったりの「お揃い」を何度も繰り返したが、さすがに葬式の日は数日だけズレて周囲を複雑な気分にさせた。
男女の双子だった二人は小さい頃から非常に仲が良く、性格はまるで違うのに大人になって離れて暮らしていても同じ日に同じ菓子を買って実家に遊びに来たり、偶然旅行先で出会ったりの「お揃い」を何度も繰り返したが、さすがに葬式の日は数日だけズレて周囲を複雑な気分にさせた。
文章を書く人間なら一本位は拘りの筆記用具を持つべきだと恩師に言われたので、思い切って骨董品店で十字架型のメカニカルペンシルを購入した。文章を書くには使い難いだろうと呆れる周囲に構わず、俺は神の正義を称える筈の十字架で罪深い嘘を連ねた物語をひたすら書き続ける。
従兄の家の食器棚には複数のパーツを金継された、どこか歪な貝殻型のカップが置いてあるが、元々は六客あった非常に高価なカップの破片を搔き集めて何とか一客分だけ再生出来たものだと言う。そんな従兄は昔、とある大事故から一度に五人の家族を亡くして天涯孤独となった身だ。