カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

八十二冊目・『広き逆転の空白』

2018-07-03 19:48:51 | サスペンスはお好きですか?
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 夢破れ、昔から良い思い出など一つもない故郷に戻って暮らし始めた僕に、何故か周囲の人間はとても親切にしてくれた。子どもの頃に僕を苛めていた奴も、それを見ながら僕を嘲ってきた女も、それどころか顔や名前も思い出せないような連中まで、皆そろって屈託のない笑顔を浮かべながら「あの時は有難う」と礼を言ってくるのだが、僕にとっては全く覚えのない「あの時」に何があったのかについては、何故か笑顔のまま誰も語らない。
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八十一冊目・黒き大都会の黄昏』

2018-07-02 22:10:30 | サスペンスはお好きですか?
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 この街では、身寄りも帰る家もないガキなど珍しくないし、そういったガキは大概大人になる前に野垂れ死ぬ。だから奴も、きっと俺が拾わなければそうなっていただろうが、その日の俺は何故か柄にもなく他人に良い事をしたい気分だったのだ。ただ、それがどうやら巷では運命と呼ばれるものであったらしいと気付いたのは、やがて立派に成長した奴が俺に対する強大な敵として立ち塞がってきた時だった。
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八十冊目・『高き大都会の愛憎』

2018-07-01 22:28:04 | サスペンスはお好きですか?
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 父に捨てられた母は、それこそ雑草を噛み泥水を啜るような苦労を重ねながら僕を大学まで行かせてくれたが、僕が大企業に就職した直後、力尽きるように死んだ。そして現在、ありとあらゆる手段を使って出世街道の上り詰め結果、自社ビルの窓から街を見下ろすようになった僕は、いつの間にか外見だけでなく内面も、かつてあれほど憎んでいだはずの父と変わらぬ外道となり果ててしまっていた。
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