蘭の花には知られている限り毒は無く食用や薬用になるものも数多いと本で読んだら、それを真に受けた馬鹿がスズランを口にして死にかけた。あんな清楚な外見で、しかもランの名前が付いているから大丈夫だと思ったという馬鹿は少しばかり見かけで判断する恐ろしさを知って欲しい。
蘭の花には知られている限り毒は無く食用や薬用になるものも数多いと本で読んだら、それを真に受けた馬鹿がスズランを口にして死にかけた。あんな清楚な外見で、しかもランの名前が付いているから大丈夫だと思ったという馬鹿は少しばかり見かけで判断する恐ろしさを知って欲しい。
コレには毒が入っているの、もちろん人を殺す程の毒じゃないけどね。彼女はいつもそんな風に笑って香水瓶の香りをうなじに付ける。その仕草も香りもひどく蠱惑的で、実は本当に香水瓶の中には毒が入っているのではないかと思う程だったが、結局その毒が殺したのは彼女自身だった。
その花瓶の持ち主だった気難しい祖母は似合う花が思い付かないと言って常に空の花瓶を飾っていて、それを曇り一つ無い状態まで綺麗に磨くのは母の役目だった。やがて祖母が亡くなると、母はその花瓶に大輪の白百合を何本も飾るようになり、周囲は頭が痛くなる程の香りで溢れ返った。
強い色彩の華麗な花器に野の花を活けるのには細心の注意が必要だ。野の花が本来持つ可憐だが控えめな雰囲気をものの見事に損ねるからだ。田舎町で見初めた妻を着飾らせて夜会に連れ出した彼はようかくその事に気付いたが、多分その時には二人にとって全てが既に遅すぎたのだろう。
熟したイチゴのような色彩の菓子器を見ていた時に友人がぽつりと、うちの庭先には木苺の茂みがあって季節になると通りすがりの小学生がつまみ食いをするんだが、ブラックベリーの未熟な赤い実を知らずに食べて渋さに悶絶する子が必ず出るんだよなと物騒極まりないことを呟いた。
昔から疑問だったのでキリスト教の護符は異教徒にも有効なのかと友人に尋ねたところ、相性の問題だと答えが返ってきた。第一、同じキリスト教を信じるもの同士が戦争中なら聖人はどっちの味方をしてくれるのが「正しい」と思う?と畳み掛けられ、確かに相性は大切だと思った。
「金属製携帯用カップとは優雅なものを手に入れたな。 で、うがいにでも使うのか?」
「お前が百均で買ってきたシリコン製折り畳みカップと一緒にするな」
「以前、バカラだかラリックだかを小学生に渡してうがいを促す女子高生を漫画で見たが」
「ネタが古いぞ」
薄青色に葡萄色のマーブル模様が入った花器は娘のお気に入りで、時々、花を飾っていない時でも見入っているので何を見ているのかと尋ねると、模様が踊るのよと答えが返ってきた。ずっと同じ模様を見ていると錯覚で動くように見えるだけと言うと娘はペンで印を付け、翌日には確かに印がズレていた。
お前にはまだ早いと高い本棚に仕舞われてしまった天文書がどうしても見たくて、父さんが留守の間に書斎に忍び込んだ。内容はやっぱり僕には難しかったけれど、本を開いたまま眠ってしまった時に見た夢の中の宇宙はとても素晴らしくて、見付かった時父さんにすごく叱られたけど幸せだった。
たかあきは、初夏の裏切りと桜の根に関わるお話を語ってください。
女の子は季節ごとに移り変わると言うが、それが本当なら春の告白が夏には嘘に変わったとしても当然のことなのだ。ただ、その場限りに産まれてすぐ大地に沁み込み、影も形も見えなくなった告白は誰も気付かぬまま桜の根に吸い上げられ、次の春にはきっと今年よりも更に綺麗な嘘を咲かせて人を惑わすだろう。
女の子は季節ごとに移り変わると言うが、それが本当なら春の告白が夏には嘘に変わったとしても当然のことなのだ。ただ、その場限りに産まれてすぐ大地に沁み込み、影も形も見えなくなった告白は誰も気付かぬまま桜の根に吸い上げられ、次の春にはきっと今年よりも更に綺麗な嘘を咲かせて人を惑わすだろう。