日本で普通に暮らしていると、英国はイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドを合わせてグレートブリテン連合国と呼ばれる事など普通に知らないし、その昔、ウェールズで丘を山にする為に村人がバケツで運んだ土を頂上に積み上げたという実話があると聞いても何かの冗談だと思った。
日本で普通に暮らしていると、英国はイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドを合わせてグレートブリテン連合国と呼ばれる事など普通に知らないし、その昔、ウェールズで丘を山にする為に村人がバケツで運んだ土を頂上に積み上げたという実話があると聞いても何かの冗談だと思った。
古い鍵が好きでフェイクも含めて何本かコレクションしているのだが、たまに外れていないキーリングから一本だけと言うような信じ難い状況で行方不明になることがある。それに懲りることなく古鍵を手に入れ続ける私に友人は、まあ、古鍵一本で回避できるなら安いものだねと謎の言葉を掛けてくる。
たかあきは、夏の初恋と桜の花に関わるお話を語ってください。
瑞々しい緑の下で伝えられた後輩からの恋心を最初は嬉しいと思った僕だが、それを大きく成長させるにはお互いに色々と足りないものが有り過ぎた。だから僕は彼女を残して一人故郷に帰り、彼女とも疎遠になった。ただ一枚残るのは卒業式を終えた桜吹雪の中、友達の摂って貰った二人が並んだ写真だけだ。
瑞々しい緑の下で伝えられた後輩からの恋心を最初は嬉しいと思った僕だが、それを大きく成長させるにはお互いに色々と足りないものが有り過ぎた。だから僕は彼女を残して一人故郷に帰り、彼女とも疎遠になった。ただ一枚残るのは卒業式を終えた桜吹雪の中、友達の摂って貰った二人が並んだ写真だけだ。
夜の母は常に不思議な香りを纏っていて、口さがない他の婦人達からは魔女のように呼ばれていた。そんな母の持つ香水瓶入れには何本かの香水瓶が入っていて、不思議なことにどれも母の香りとは違っていた。母が亡くなって、独自に編み出した調香レシピも失われ、母は魔女のままだ。
神を信じない考古学者が生涯を信仰に捧げたキリスト教の僧侶に、十字架の起源は東方からローマにもたらされたもので本来キリスト教とは関わりのない物であったと断言すると、僧侶は穏やかに微笑みながら、この世界の全ては神の創りしものであり、十字架も神のものですと答えた。
二枚貝の合わせは人間の指紋と同じように一枚一枚違い、故に元々の貝以外で完全に組み合う一対は存在しない。東洋の島国ではそれを利用して一対の歌を二枚貝に書き込んで玩具とすると聞いた職人は、その一対がこれからも離れぬようにと蝶番で止め、実に優雅な小物入れを造り出した。
たかあきは、夜の忘れ物と桜の根に関わるお話を語ってください。
桜の木の下で待ち合わせた相手が来なかった日、彼女は夜までそこに立ち尽くしたまま一人で涙を流していた。流れ落ちた涙は地面から桜の根に吸い上げられ、桜は甘くて苦い彼女の感情を一滴残らず味わい尽くし、やがて次の春に花として咲かせた。だから、その年の桜はいつもより少し哀しく見えたのだ。
桜の木の下で待ち合わせた相手が来なかった日、彼女は夜までそこに立ち尽くしたまま一人で涙を流していた。流れ落ちた涙は地面から桜の根に吸い上げられ、桜は甘くて苦い彼女の感情を一滴残らず味わい尽くし、やがて次の春に花として咲かせた。だから、その年の桜はいつもより少し哀しく見えたのだ。
たかあきは、晩秋の異星と桜の上に関わるお話を語ってください。
この惑星で桜は秋に咲くものと相場が決まっていて、わずかな期間に色鮮やかな花を咲かせ、やがて惜しげもなく散っていく潔い姿は季節は違えど地球と同じ様に風物詩となっている。ただ地球と違うのは、何故か桜の花弁の色が燃えるように鮮やかな赤や橙や黄色であることだろうか。
この惑星で桜は秋に咲くものと相場が決まっていて、わずかな期間に色鮮やかな花を咲かせ、やがて惜しげもなく散っていく潔い姿は季節は違えど地球と同じ様に風物詩となっている。ただ地球と違うのは、何故か桜の花弁の色が燃えるように鮮やかな赤や橙や黄色であることだろうか。
母は純潔を意味する白薔薇を模したバングルとブローチを身に付けて着飾りながら、頻繁に父とは違う男性と逢瀬を重ねていた。やがてそれは男性の妻の知る処となり、結局は激しい罵り合いの末、夜会服を血で染めたのは母の方だった。それ以来白薔薇の花弁の奥には赤黒い汚れがこびり付き、どんなに洗っても落ちない。
薄荷飴が嫌いな彼女は、ミントの味を予想してしまうからとピンク色の菓子器を推してきたが、僕は頑として緑色に拘った。最後には折れた彼女がピンク色だと甘そうなのにと呟いたので、器が緑色だときっと君が作るマシュマロのピンクと白が一番美味しそうに見えるに違いないと答えた。