カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

旅路その72・土産土法

2019-09-18 22:27:31 | 旅人の記録
たかあきは晩春の観光地に辿り着きました。名所は特に無し、名物は貝料理だそうです。

 仕事のアイデアに詰まった時は知らない場所をウロウロしているが、いかにもな観光スポットよりも普通に人々が暮らしている街並みや商店街の一角で閃きを感じることが多い。今回感じたのは知らない風味の貝料理を味わった結果として、己の知識と技術に拘り過ぎずにこの土地に伝わる調理法をもう一度真剣に見直す必要性だった。
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旅路その71・ジビエのススメ

2019-09-16 13:36:32 | 旅人の記録
たかあきは北国の王都に辿り着きました。名所は個人の邸宅、名物は肉料理だそうです。

 今回の雇い主は北国の領主で、何でも領内で害獣として駆除された鹿や猪を食肉加工してご当地の名物料理を作りたいそうだ。海産物の次は山の獣かと思いながら、僕は仕事前の必須行為として、いつものように愛用の刃物を一振り残らず鏡のように研ぎ澄ましてから切れ味を確認して準備を万端に整える。
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秋の創作怪談・祭りの季節

2019-09-15 21:09:57 | 突発お題

 休日の早朝に何処からか祭囃子が聞こえてきた。こんな朝早くからお祭りかしらと傍らの夫に呟くとアレは狸囃子だ、楽しそうだからと迂闊に近付くと連中に取り込まれて永遠にコチラには戻れなくなるぞ、現にと言いかけてから言葉を止めた夫は、幼い頃二つ下の弟が行方不明になっている。
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夏の創作怪談・宗教勧誘の恐怖

2019-09-14 12:36:52 | 旅人の記録

 課題のレポート作成が進まないで焦っていた時、宅配便が来たと間違えて宗教勧誘員の前で玄関ドアを開いてしまった。丁度レポートが西洋史だったので大航海時代の宣教師の伝道活動の拡散とその結果における宗教分布について詳しく細かく質問してみたら宅配便のお兄さんと入れ替わりに涙目で帰っていった。
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旅路その70・海幸彦

2019-09-14 09:45:10 | 旅人の記録
たかあきは厳冬の地方都市に辿り着きました。名所は公園広場、名物は貝料理だそうです。

 叔父が祀り上げた神様の像を自領の中央公園に作らせたと言うので見に行った。観光客で賑わう公園に安置された巨大な像は僕にとって相変わらず何処をどう見ても活きの良い海産物にしか見えないが、とりあえず屋台で売っている名物の貝は記憶通りに美味かったので、その辺はなるべく考えないことにした。
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旅路その69・神様から神様へ

2019-09-12 18:58:38 | 旅人の記録
たかあきは真昼の都会に辿り着きました。名所は神社、名物は貝料理だそうです。

 叔父の領地から都会に舞い戻った僕は、旅の無事を願って購入したお守りを行き付けの神社に返納した。訳の分からない神様に奉仕してきた身ではあるが、きっと八百万の神にとってはあの神様も同じ一柱だ、そうに違いないと思い込むことにする。なお、友人に配った土産物の干し貝はおおむね好評だった。
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旅路その68・遠方に同じ神在り

2019-09-11 19:59:42 | 旅人の記録
たかあきは離島の地方都市に辿り着きました。名所は名刹、名物は煎餅だそうです。

 叔父が祀る神様は忘れ去られていたとはいえ複数の古文書に詳細が記された存在なので、当然ながら別の土地にも伝承が残っている。わざわざ離島から訪ねてきた巡礼者は故郷の神と叔父の祀る神の共通点や相違点について熱く語ってきたそうだが、叔父自身は手土産の煎餅が旨かったことしか覚えていないとか。
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骨董品に関する物語・天文アストロラーベ

2019-09-11 19:35:58 | 突発お題

 少しの時間、目を輝かせながら手慣れた動作で細密な刻印の入った円盤を回していたお客は購入した商品を無造作にポケットに仕舞いながら、コレのおかげで今度こそ帰り道が判りそうですと笑った。一体何処に帰りたいかは見当もつかなかったが取り合えず良い旅をと挨拶して見送った。
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旅路その67・神が愛したジャム(領主認定)

2019-09-10 19:34:27 | 旅人の記録
たかあきは東国の荘園に辿り着きました。名所は王立図書館、名物は果物だそうです。

 そもそも僕が叔父の領地に呼ばれたのは、特産物の果物を上手いこと土産物に加工できないかという相談だった。一応幾つかのレシピは用意しておいたが最終的に地元の古い図書館で古文書を調べた末に「神が愛した秘伝の味」という触れ込みでジャムを作った。味は普通なので運が良ければ売れるだろう。
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旅路その66・邪神に非ず(多分)

2019-09-09 21:07:39 | 旅人の記録
たかあきは真昼の荘園に辿り着きました。名所は神殿、名物は貝料理だそうです。
 
 自前の荘園で暮らしている叔父が祀る神殿は太古の書物から見付けたという異形の神を独自に祀ったものだが、何故か遠方からも巡礼者が絶えない。おかげで神殿の通りは巡礼者を当て込んだ土産物屋や屋台などで溢れ返り、領主一族秘伝の黒いソースをかけた焼き貝の香ばしい香りが辺り一面に漂っている。
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