'07/07/18の朝刊記事から
ロシア外交官 英が追放
両国関係 悪化は必至
ロシアの元情報機関員リトビネンコ氏殺害事件で、ロシア側が旧ソ連国家保安委員会(KGB)元職員、ルゴボイ容疑者の引き渡しを拒んだことに対し、英政府はロシア外交官追放という強い措置を講じた。
ロシア側の対応に「強く失望した」(ブラウン英首相)結果で、英政府はロシアとの他分野での協力関係の見直しにも入った。
ロシアは、報復として英外交官を追放する構えを見せており、両国の関係悪化は避けられない見通しだ。
(ロンドン・高田昌幸、モスクワ・藤盛一朗)
今回の措置について、ミリバンド英外相は「ロシアに明確で適切なシグナルを送る必要がある」と指摘。
「両国の多くの分野での協力関係を見直す」とし、第1弾として、両国で進行中の査証(ビザ)発給手続き簡素化に関する交渉を凍結することも明らかにした。
英メディアによると、英政府はさらに貿易や教育などの分野で協力見直しを検討しているという。
英国が強硬策に打って出た背景には「英国内で英市民が殺害された事件は当然、英国で裁かれるべきだ」(英外務省)という原則論に加えて、ロシアのプーチン政権が最近、国際社会で欧米への対抗を強めていることなどをけん制する狙いもあるとみられる。
一方、ロシア外務省のカムイニン情報局長は16日、「英国の挑発的行為には、対抗策をもって応じることになる。英ロ関係にも深刻な結果をもたらす」と非難。
駐モスクワ英国外交官の追放など対抗措置を示唆した。
ロシアはリトビネンコ事件の捜査をめぐり、ルゴボイ氏ら関係者の聴取を独自に行うなど、表向きは「真相究明に協力する」(プーチン大統領)構えをみせている。
だが、英当局が求める同氏の身柄引き渡しは憲法規定を盾に拒否してきた。
プーチン政権は、大統領批判を展開してきた故リトビネンコ氏が、同政権と対立するロシア出身の政商ベレゾフスキー氏に加え、英情報当局とも緊密な協力関係を結んでいたとみている。
また、英国在住のベレゾフスキー氏、チェチェン独立派のザカエフ・元チェチェン共和国外相ら21人の引き渡し要求に英国側が応じないことも、ルゴボイ氏引渡しに抵抗する理由となっている。
元情報機関員毒殺事件
ロシア連邦保安局(FSB)の元中佐でプーチン政権を批判するリトビネンコ氏が昨年11月、亡命先のロンドンで体調を崩し死亡。
体内から致死性の放射性物質ポロニウム210が検出された。
英検察当局は今年5月、ロシア在住で、同氏とロンドンで接触した旧ソ連国家保安委員会(KGB)のルゴボイ元職員を容疑者と断定。
英政府は身柄の引き渡しを求めたが、ロシアは拒否している。(共同)