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ベッラのブログ   soprano lirico spinto Bella Cantabile  ♪ ♫

時事問題を中心にブログを書く日々です。
イタリアオペラのソプラノで趣味は読書(歴女のハシクレ)です。日本が大好き。

スカラ『ナブッコ』~ベルカントなきスカラはスカラでなく、ヴェルディはヴェルディでない。

2013年12月24日 | オペラ

ミラノ・スカラ 2013 第二夜 ヴェルディ『ナブッコ』

≪キャスト≫
ナブッコ・・・レオ・ヌッチ
イズマエーレ・・・アレクサンドルス・アントネンコ
ザッカリア・・・ヴィタリー・コワリョフ
アビガイッレ・・・リュドミラ・モナスティルスカ
ミラノ・スカラ座合唱団、ミラノ・スカラ座管弦楽団
指揮ニコラ・ルイゾッティ
演出ダニエレ・アバド

昨夜はヴェルディ『ラ・トラヴィアータ』でスカラの開幕、
今夜は難曲であるヴェルディの『ナブッコ』・・・本来はこれで開幕すべきと思うが。

☆ ベルカントでない歌手のヴェルディはヴェルディではない。
ナブッコを歌った老齢のヌッチが老いたとはいえ、舞台を支えていた。
言葉が明瞭であり、音楽の間(ま)もヴェルディである。
指揮者のルイゾッティはバリトンとしても歌を聴いたことがある。
マルチ的な才能を持っているときくが、昨夜の指揮者よりはるかに才能豊かで、
スカラのオケもコーラスも「ヴェルディ」を奏でる。まぎれもなくヴェルディの音楽、

しかしアビガイッレを歌ったソプラノはスラヴ声、鋭角的なアタックは期待できないし、歌詞も当然不明瞭。
ヴェルディを歌うということはヴェルディの旋律をなぞるのではない。
ベルカントでないと、ヴェルディを歌ってはいけないのだ。
声が緩んでいるし、スリリングでないのもミス・キャスト、

アビガイッレは誰でもが歌える役ではない。
ドラマティコ・ダジリタといって劇的な強い声でありながら細やかな装飾音を一気に歌えるテクニックと声が必要。
このスラヴのソプラノはロシアオペラが歌えるとも、かつてのロシア系の名ソプラノにあった鷹揚さを思うと、
「根性」優先で、必死さだけが目立つ。
声量があっても鋭角的な共鳴に欠けるので、聴衆は納得した拍手でない。
これはヴェルディのソプラノのなかでは「シチリアの夕べの祈り」「マクベス」「アッティラ」のような英雄的な
ヒロインなのだ。
ヴェルディの強靭なフレージングに乗りきらず、必死さだけで浮足立つ。ぼやけた感じがするのも発声が違うのだ。

イズマエーレを歌うテノーレはブリリアントなスピントに欠け・・・ああ、これがまかり通っているのか。
もし、はじめてスカラを聴く人々が、今のオペラ公演を「伝統的ベルカント」など思うととんでもないことになる。

スカラはもはや自信を失っている。
だから演出も(ダニエレ・アバドはあのクラウディオ・アバドの息子とか)・・・堂々たるスカラの格式あるものではない。実験劇場だ。
ザッカリアを歌うバス歌手もカバレッタなど、声と息にのった見事さなどない。声の空転だ。

ユーロになり、オペラも「改革」とか・・・。「伝統」はどうした?
「改革」という名のもとの文化の破壊!! このような「改革」は文化ではない。思い付きと、迷走だ。根なし草だ。
一にも声、二にも声、声が演技も内包している。作曲家の書いた音楽にすべてがある。
小細工する「演出」や「演技」は音楽の邪魔でしかない。
本末転倒とはこのことだ。

ムーティがスカラと衝突もするだろうと納得もする。
ヌッチもかつての声ではないが、ベルカントの格式は備えており、声は衰えても芸術は保持している。
しかしヌッチも年をとったものだ。老雄にたよる上演となってしまった。
ヴェルディは「声の饗宴」だったのは昔のことか・・・。ヌッチだけが本物だった。
ヌッチがカバレッタを歌うと合唱までが生き生きしてくる。以心伝心だ。これぞイタリアの「伝統」の声だ。

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2 コメント

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難しいお話ですね (rimrom789)
2013-12-25 23:13:43
ベッラ様
批評家真っ青な解説、だと思います。
(本格的過ぎて素人の自分には猫に小判的な内容なのです)

ムーティとはリッカルド。ムーティかな?くらいのレベルですから。
ロシア人もオペラ歌手多いみたいだなぁ、とか。バレーは国技で盛んですがチャイコフスキーの名曲あればこそ、ですね。

先日の「誰も寝ては・・」や「星は光りぬ」を謳った歌手には必ず絶大な拍手を送るのが決まりに見えるのです。
それほど難曲で歌う事自体が素晴らしい栄誉?でしょうか。

紹介の動画のモナコ氏、別の面を知らされました。
楽しげで明るくって朗々とした謳い方だなぁ。
曲が変わると表情まで別人みたいで、俳優みたいに演技も上手な方なんだなぁと。外国人は表情も豊かだから簡単なんですか?

遅ればせながら ベッラさんに
メリー☆クリスマス☆★☆
返信する
メリー☆クリスマス(^^♪ (rimrom789さまへ  ベッラ)
2013-12-25 23:28:32
rimrom789さま、メリー☆クリスマスでございます。
「星は光りぬ」など歌ったらブラーヴォでなくて、
「どう歌ったか」でブーイングの可能性は大きいのです。
昔はブーイングだけでなく、駅まで「送って」というか
追い出された歌手もいました。
昔の聴衆はひとつまずい響きがあってもザワザワ、
花束でなくてカブラを渡されたのがマリア・カラス、
カラスにしてもそうです。有名無名関係なし、
昨夜が最高でも今悪ければブーイング、
まあ、カラスはすごい近眼だったのですぐに野菜と
いうことがわからなくてニッコリだったそうですが。
あとでカンカンだったそうです。
よく見えない(ステージでは眼鏡をはずすので)のに
カンだったのですね。

あのデル・モナコは出演しない予定だったのが飛び入りで客席は大喜びだったそうです。

明日は三宅先生たちがチャンネル桜の「討論」に出演なので楽しみです。
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