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キャンディーズの曲として優れていると思うものは他にあるのだが、まず、私はキャンディーズのファンではない。なのでファンとしての立場からの見解ではない。この曲には、とても「人間臭さ」を感じるのだ。そこがとても気に入っているので、そこをご紹介したいのである。
興味があるのは歌手ではなく、バックバンドである。(キャンディーズ・ファンの皆さん、ごめんなさい。)
21世紀の今、ビッグ・バンドと言われるジャズ・バンドの形態は、ひょっとしたらオーケストラ以上に風前の灯かもしれないが、当時はまだまだ元気があり、歌謡曲の伴奏はビッグ・バンドの主たる仕事だったはずだ。
この曲はメロディーに若干の「ブルー・ノート(ハ長調で言うミが半音下がる)」を含むところもあり、ジャズとの親近性がもともとある。
冒頭の短いドラムのフィル・インの直後、サックス・セクションが「ベーッベレベベー」といった調子で鳴り響く。クラシックでは絶対使ってはいけない音色、だからと言ってジャズでも魅力的かと言われるとちょいと首をひねる音色、要するに「何も考えていない」無造作な音色でスタートする。
冒頭の短いドラムのフィル・インの直後、サックス・セクションが「ベーッベレベベー」といった調子で鳴り響く。クラシックでは絶対使ってはいけない音色、だからと言ってジャズでも魅力的かと言われるとちょいと首をひねる音色、要するに「何も考えていない」無造作な音色でスタートする。
これを聴いて私はこんな光景を思い浮かべずにはいられない。
ところがどっこい、歌が始まると様相が一変する。いきなり譜面見させられて、これがヒットするかどうかも当然わからないけれど、「書いてある音符は吹いて帰らなきゃ」、という義務感のみの音色。来る日も来る日も仕事に追われてきっと忙しかったのだろう。本当は「むせび泣くサックス」を吹いて帰りたかったな、という気持ちを押し殺して「お仕事、お仕事」の日々をおくるスタジオ・ミュージシャン・・・。
エレキギターによる「ごきげんな」プレーが始まるのだ。当時はやりの16ビートでキューチャカピカチャカ、といった具合に。
そして極めつけはドラムスである。サビの後ろの部分「私のこと、好きかしら」と歌うところの伴奏に注目。ホーン・セクションは単純に「パァッパー」とやっているだけだが、ドラムスはタムをボコボコ叩きまくる。この音が今ではほぼ聞くことができなくなってきた「アナログな音」なのである。(現在のドラムスはシンセ・ドラムが多く、ドコドコボコボコという音はしない。)
サックスの無表情に対して、このエレキギターとドラムスのノリは好対照。世間が注目するのはあくまで歌手だけれど、このような職人芸が光るレコードは嬉しい。これぞミュージシャン魂がさく裂した瞬間だろう。音楽家たるもの、こうでなきゃ、とさえ思う。
ドラムスは最後のリフレイン、「あいつはあいつはかわいい」のところでまた大活躍する。このドコドコボコボコはなかなか聞けるものではないので、本当に楽しくなってしまう。皆さまにもいつか聞く機会があれば、ぜひ注目していただきたい。