井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

ヴァイオリン協奏曲の何曲探検

2012-10-16 00:41:44 | ヴァイオリン

ヴァイオリニスト、アーロン・ローザンドがその初来日の際に紹介されたコメントの中に「協奏曲のレパートリーを百曲以上持ち、現在も開拓中」というのがあった。

まず、世の中に百曲以上もヴァイオリン協奏曲があるのか、ヴィヴァルディやヴィオッティを全部数えたら、そりゃあるのだろう、ということにはなるけれど、あまり弾きたいとも聞きたいとも思わない、というのが一般的な感覚だと言って差し支えないと思う。

では、どのくらいの曲が演奏され、普通のヴァイオリニストはどの程度のレパートリーを持つか。何となくかぞえたら20曲程度か、となった。大した数字ではないが、それでもチェロやフルートより断然多い。まあ、ちょうどいいってことだと理解している。

さて、具体的には・・・

筆頭に上がるのは四大協奏曲、チャイコフスキー、メンデルスゾーン、ブラームス、ベートーヴェン。本当にこればかり演奏されていて、これ以外になると演奏頻度はものすごく落ちてしまう。

では次には、多分シベリウスとモーツァルトの第3,4,5番ということになるだろう。モーツァルトは一曲ずつで演奏頻度を見ると、そこまで高くはないかもしれないが、3曲合わせると、確実にシベリウスよりはよく演奏される。

また、ヴァイオリン協奏曲という認識は低いかもしれないが、バロックにはヴィヴァルディの「四季」というのがある。これはシベリウスやモーツァルトよりも多いかもしれない。

そして、以前に紹介した「おけいこニストのための協奏曲」がようやく登場するのだが・・・。

まずはラロのスペイン交響曲。そしてブルッフの第1番。ヴァイオリンを練習する人間からすると必修教材のようなものだから、体に染みついているレパートリーなのだが、その身からすると、演奏会場で聴くチャンスは驚くほど少ない。コンクールを除くと、筆者の経験はラロを「弾いた」のが一回、ブルッフを「聴いた」のが一回しかない。

それ以下、と言いたくないのだが、サン=サーンスの第3番、ドヴォルジャーク、ヴィエニアフスキの第2番、と続く。同じくヴァイオリン弾きにはお馴染みでもオケメンには馴染みが薄く、サン=サーンスの3楽章冒頭など、最初の練習では木管楽器が必ずボロボロになる。

一方、近代の曲になると、もう少し演奏されているかもしれないのがある。プロコフィエフの2曲、ハチャトゥリアン、そしてショスタコーヴィチの第1番。特にここ十年くらいだろうか、ショスタコがなぜかよく演奏されるようになってきた。難曲に挑戦したい、という雰囲気を醸し出しつつ…。筆者の学生時代、桐朋学園大で流行していると聞いたが東京芸大で弾いていた人間は皆無だった。

東京芸大で頻繁に演奏されていたのはバルトークの第2番。なので、学生の演奏はよく聞いたものだが、これとて一般のコンサート会場で聴いたのはコンクールのみ。似たような存在のものにベルクもある。

難曲と言えばパガニーニ。これも似た感じで、音大やコンクールではよく聞くものの、演奏会場では我が師匠が読響バックに弾いたのを聴いたことがあるのみ。

さらに地味な難曲としてグラズノフ。こうなるとテレビ・ラジオのライブ演奏さえ一回くらいしか聴いたことがない。昔日本では、ピアノ伴奏で江藤俊哉先生がよく弾かれていたという話を聞いたことはあるのだが。

同じく江藤先生が好きだったらしい曲にコルンゴルドがある。これも近年、時々演奏されるようになったが、そこまで良い曲だという認識は筆者にはない。同じ映画音楽風?ならば、アメリカのバーバーの方がずっと良い。

個人的にはイギリスのウォルトンが大好きで、筆者の卒業演奏に選んだくらい。本国イギリスでは割と演奏されていると聞くが、日本では聴いたことがない。ウォルトンはヴィオラ協奏曲とチェロ協奏曲もあり、こちらは時々演奏されている。はっきり言って、それはヴィオラやチェロに曲がないからだ。それらより断然名曲のヴァイオリン協奏曲が演奏されないのは皮肉としか言いようがない。

イギリスと言えばエルガーもあった。これも桐朋では弾かれていたと聞いていたが、自分で弾くの以外聞いたことがない。これはウォルトンとは違い、チェロ協奏曲は名曲。ヴァイオリンはまあまあ、くらい。

ついでに難曲中の難曲と言えばシェーンベルクになると思われる。師匠曰く、譜読みに一年かかったとのこと。そう伺うと、これはレパートリーとしては数えられない曲というのが筆者の認識である。

詳しい人の話によると、ピアノ協奏曲より良い曲だそうだ。そのピアノ協奏曲を日本で初演したのがポリーニ。「大変名誉なことです」とインタビュー記事で語っていたが、このためにオーケストラはポリーニに1000万円払ったそうだ。そして、ポリーニは翌日に日本の子供たちのためにNHKホールで無料コンサートを開いたのだった。1980年代の話である。

そしてヴァイオリン作曲家の作品、ヴィオッティの第22番、パガニーニの第2番、ヴュータンの第5番などがある。知名度の低さに、ここで紹介するのもためらわれるが、その昔、NHKの洋楽プロデューサーが作成したオーケストラ名曲333曲に載っていたので、最後に話題にした。

もの好きな人は、シューマンとかリヒャルト・シュトラウスなどというものを弾いたりするけれど、これはゲテモノと筆者は見なしている。

シマノフスキやペンデレツキ等、ポーランド勢もあるけれど、ここまでくると珍曲の類に近付いてくるので、このあたりにとどめておこう。

これで何曲あるか?

数え方によるけれど、二十数曲ある。これがヴァイオリニストのレパートリーと言えるだろう。このくらいは頑張ろう、ということになるか・・・。