クラシック系の楽譜出版社、以前は十年一日のごとく百年前からの同じ版を、繰り返し印刷して売っていたりしたものだが、最近はかなり工夫して新版を出して、何とか買ってもらう努力をしているように見える。
その一環だと思うが、原典版を出す際に、ピアノ伴奏譜を新しい編曲にするケースが増えてきた。
私は基本的にその試みに対しては歓迎だ。これまでの版は、ロマン派の時代に編曲されたものが多く、現代的感覚からすると音が厚すぎる場合がほとんどだからだ。
と思っていたのだが、そう思っていない人も結構いることを最近知った。
「何、あのショーソン(詩曲)!」
「ベーレンライターのベートーヴェン!」
「そうそう。何、あのつまんないやつ。」
「そう! だから私、音を一杯足して(ピアニストに)やってもらっているの。」
「私も!」
特に仲が良いとも思えない先輩達が、この話題で盛り上がっているのを黙ってそばで聞いていたのだが・・・。
旧来の版は、何も考えずに弾くとピアノの音量がヴァイオリンをはるかに凌駕してしまうことが多い。これを、そうならないように演奏するにはピアニストにかなりの技量とセンスが必要だ。
皆さんよほど良いピアニストとしかお付き合いないのか。はたまたかなりピアノも弾けるということか?
そんなことはないだろうと思う。
よく見ればわかるが、例えばショーソンのピアノパートは、相当難しい。この編曲は恐らく作曲者自身と思われるので、他人が新しい編曲をすること自体、勇気のいることだ。
新しい編曲は、音をかなり少なくしたすっきりしたもので、これならピアニストにも頼みやすい、と思ったのであるが、長年親しんだ響きと違うのには、随分抵抗を感じる、ということなのだろう。かわいそうなヘンレ社。
しかし、時代は21世紀。こんなことを言っているのも今だけかもしれないな。