ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム 価格:¥ 2,100(税込) 発売日:2012-01-23 |
それは「イメージ・トレーニング」
なーんだ、と言うことなかれ。この本には、その方法、理由などがとても科学的に書いてある。
ピアノが弾ける弾けないを、とりあえず「指を動かす神経細胞」の発達度合いではかる。指を動かす訓練をすると小脳の運動野が肥大するそうだ。ピアニストは非音楽家より小脳の細胞が約50億個多いとのこと。
[ハーバード大学での実験]
全くピアノを弾いたことがない人を、以下の3グループに分ける。1.五日間、毎日2時間ピアノを実際に弾いて練習させる。
2.五日間、毎日2時間「実際にピアノを弾いている指の動きを思い浮かべる」つまりイメージ・トレーニング。
3.何もしない。
そして、脳部位を測定するのだが、当然1.のグループが一番発達していて、3.のグループには発達が見られない。
興味深いのは2.のグループも、指を動かす神経細胞の働きが向上していたこと。
さらに驚くのは、そのイメージ・トレーニングの後、2時間実際にピアノを弾いて練習してもらったら、1.のグループとほぼ同程度まで神経細胞の働きが向上したこと!
よく舞台袖などで、ぎりぎりまで指だけ動かしながら出番を待つ光景を目にする。「全く、いさぎよくないんだから・・・」と半ば軽蔑のまなざしで眺めていたのだが、これは立派に練習効果があるということだ。
これは朗報だ! 社会人になったら、なかなか練習時間がない、などと嘆いている人にとっては非常にありがたい話ではないか。
と、昨年、この本を読んだばかりの頃、あちらこちらに吹聴してまわった。
当然、自分も「イメージ・トレーニング」をしてみるのだが・・・。
皆さん、2時間もイメージだけなんて、できますか?
少なくとも私はあっという間にねをあげた。とてもではないが、楽器を弾いて訓練する方が楽だ。イメージ・トレーニングはせいぜい5分とか10分程度のものでしか行えない。
多分それで良いのだと思う。特に楽器を触る暇がない時は、やはり有効だろう。
この話のほかにも、役に立つ話が多々載っていた。私が読み終わるのに1年かかってしまったのは、途中に病気の章があり、これが読んでいるだけで恐くなってしまったので、なかなかその先に進めなかったのが原因である。
去年の段階で、うちの学生でも存在を知っているのは多かった本、しかし読んだ者はほとんどいなかった。
ピアノが中心ではあるが、ヴァイオリンを始め、他に共通する話も多く、ぜひご一読されたし。