ショスタコーヴィチの交響曲第9番は、NHK交響楽団の演奏で知った。指揮は岩城宏之。
高校生の私は、生意気にも「岩城さんでも良い演奏をするんだぁ」と思ったものである。
で、その後、別の演奏を聴くともっと良くて「やっぱり岩城さんは……」と思った。
なんてことを思っているのが態度に出るのだろう、その後、岩城さんご本人からちょくちょく意地悪された……。
その岩城さんが40代だった頃の持論に「N響が演奏する外山雄三の《ラプソディー》は世界一」というのがある。
YouTubeなどの無い時代、なかなか聴く機会が訪れなかったが、ある日FMの日本民謡番組で放送されることを知り、待ってましたとばかりにエアチェック。
なるほど面白い、と思ったものだ。演奏は岩城=N響のレコードである。
そのレコードは、その後高校の音楽室にもあることがわかって(なーんだ)、母校で行った教育実習でも使わせてもらった。
この曲のすごいところは、日本民謡のクオドリベットとでも言うのか、同時に二つの民謡を演奏させてしまうことだ。
(なので、教育実習でも「あんたがたどこさ」と《ソーラン節》や《炭坑節》を同時に歌わせたりもした。)
おまけに《炭坑節》の背後ではホルンが《お江戸日本橋》を奏で、民謡が三重に重なっている!
また、ラテンパーカッションが一般的な打楽器と一緒に違和感なく使われているのも素晴らしい。
そして、遠慮なく使われる長三和音も新鮮に響く。
その後、演奏する機会にも恵まれる。
打楽器の有賀誠門先生の指揮だと、
「ここは何回繰り返しても良い」
「ここは岡田君と僕の駆け引きが面白かったところ」
など、初演に携わった人ならではのコメントが興味深かった。
演奏するには、音楽之友社のレンタル譜を使うのが一般的。
ところが、N響ではオリジナルの譜面を使っているようで、カットの仕方が違ったりする(大抵《串本節》が無い)。
実はオリジナルはもっと長かったのだが、長すぎるとの判断で、作曲者自身がばっさりカットしてしまったそうだ。
こうなると、そのオリジナルを聞いてみたくなる。せめてスコアを見てみたい。
と、一ファンでもこれだけのことが書けるのだが、作曲者は現存の作曲家だ。偶然にも、ラプソディーを聞いたその日の夜、別番組で外山雄三先生が司会をされているのを聞いたくらい、バリバリの現役である。
こんなことを、どこかの若造が言っていて良いのだろうか。
カットされる前が知りたければ、直接連絡をとれば良いではないか、と思わないではない。
でもその勇気が、無い。
何せ、恐い指揮者だったのだ。80代になってまで恐いことはないかもしれないけど、できれば誰かがいろいろ訊いてくれれば良いのに、と思ってしまう。
誰か、やってくれませんか?