今日のひとネタ

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トラウマは克服できたかも>カフカ「変身」

2022年04月01日 | ブックレビュー

 

 カフカの「変身」は高校生の頃に一度読んで、大人になってからも「あれはなんだったのだろう?」と思いあらためて読みました。結果、巨大な毒虫が仰向けになりたくさんの足をジタバタさせてる様子を思い浮かべてしまい、それ以来この小説がトラウマになりました。さらに、道端で仰向けになって死にかけてる虫を見ると、かなりゲンナリするようにもなり。

 ですが、新しい訳で発売されることを知り、再度チャレンジすることにしました。きっかけは「伊集院光とらじおと」にその訳者の方がゲストで出たこと。そして、伊集院さんとその川島先生は「名著の話 僕とカフカのひきこもり」という本でも対談していて、今回は先にそれを読みました。

 それで、この「変身」をカフカの心情と合わせて読めるようになり、トラウマはある程度解消されたと。(別に大きい虫が好きになったわけではありませんが。) 何より、この川島先生はカフカ研究について現代の第一人者で、今回の文庫にはカフカがどういう人だったかという解説もついています。

 もちろん「変身」が書かれて出版される経緯の解説もあるのですが、カフカの半生の方が興味深く読めます。とにかく相当面倒くさい人だったというのがわかって…。

 カフカ自身は、自分のことを社会生活に向いてなくて仕事が嫌でたまらないダメ人間のように言うのですが、実際職場では有能で順調に昇進していたそうです。また、この人はユダヤ人なんですね。

 さらに、恋多き男性で婚約中に彼女の友人と付き合ってしまって婚約破棄したり、また元の彼女と婚約し直したりまた婚約破棄したり。結婚するとかしないとかは、この人はやたらと多いです。しかも、やたらと手紙を書く人でそれがまた大量に残ってて、相当ほじくり返されてると。そういうカフカの半生についての解説が70ページもあるので、それがこの新しい文庫版の面白いところでもあります。(「変身」の本編は100ページ程度。) 

 そんな感じなので、カフカ自身の人生のこじらせ方からすると、彼自身が「俺なんか、明日起きて虫になってやる!」といじけてたのではないかと思ったりして、この作品自体を割と軽く受け止められるようになりました。

 もちろん、今回は新訳ですので過去の訳で慣れてる人には抵抗があるかもしれませんし、賛否もあるのかもしれませんが、私は普通に読みやすくて良かったです。この本は、すごく読み応えある解説もついて500円ですので、一家に一冊いかがでしょうか。どーですか、お客さん。