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2022-09-25 | 翻訳物

 

ディーリア・オーエンズ
訳 友廣純
『ザリガニの鳴くところ』★★★

 

図書館の予約本 結構待ったかな?
確か日本橋の本屋さんで見かけて気になり予約した記憶
淡いピンクの装丁がよい感じ。

それがいつの間にか「全世界ベストセラー」と明記

 

--------(抜粋)

 

ノースカロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。
6歳で家族に見捨てられたときから、カイアはたったひとりで生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女を置いて去ってゆく。
以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。
しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく……
みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と交錯するとき、物語は予想を超える結末へ──。

 

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Ⅰ 湿地

 

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潟湖(せきこ)

 

 

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「この子ブタちゃん、おうちに残った」カイアは波にささやいた。

 

 

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母さんからはいつも口を酸っぱくしてこう言われていた。「町なかでは絶対走っちゃだめよ。何か盗んだと思われてしまうから」それでも、砂の小道に着いたとたんにカイアはたっぷり一キロ近くも走り、残りの帰り道も早歩きで進んだ。

 

 

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「今日はわたしの誕生日なの」カイアは鳥にささやきかけた。

 

 

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砂は泥よりも隠し事をするのに向いている。

 

隠し事をするなら、貝殻がいちばんだと言えるかもしれない。

 

 

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前情報でたったひとりで生きていくことを知っていたから、
「父さん」が帰って来ないことは分かっていた。
一瞬だけ盛り返した親子の時間に笑顔があり、切ない気持ちになってしまった。
(それは降り続く雨のせいもある)

 

 

 

 

 

 

 

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母さんは、女には男の相手以上に女の仲間が必要だと言っていた。でも、どうすればその群れに入れるのかは教えてくれなかった。

 

 

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オオアオサギは、青い水面に映る灰色の靄のような色をしている。だから、靄のように景色に溶け込み、射的の的のような目だけを残して姿を消すことができる。彼女は忍耐強い孤独なハンターで、どんなに時間がかかろうと、素早く魚をくわえるその瞬間までひとりじっと立ちつづける。
あるいは、標的を目で追いながら、あたかも獲物を狙う花嫁付添人のごとく、ゆっくり脚を上げて慎重に一歩を踏み出す。ごくまれにだが飛びながら狩りをすることもあり、そんなときは体を矢のようにして急降下し、剣状のくちばしから一気に水中へと突っ込んでいく。

 

 

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その晩、手を頭の下で組んでポーチに横たわっていたカイアは、顔にかすかな笑みを浮かべた。
カイアの家族は彼女を捨て、ひとりで沼地に生きることを強いたが、いまは自分のほうからやって来て林に贈り物を置いていく人がいる。怪しむ気持ちはまだ残っていたものの、考えれば考えるほど、あの男の子がカイアを傷つけるとは思えなくなった。鳥の好きな人が意地悪だなんて、想像ができない。

 

 

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「いまはどこにいるの、母さん?どうしてそばにいてくれなかったの?」

 

 

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母さんがいつもこう口にして湿地を探検するよう勧めていたことを思い出した。
"できるだけ遠くまで行ってごらんなさい―—ずっと向こうの、ザリガニの鳴くところまで"
「そんなに難しい意味はないよ。茂みの奥深く、生き物たちが自然のままの姿で生きてる場所ってことさ。」

 

「クマになんかビビんないわ」
「クマなんて恐くない、だよ」

 

「初めて文章を読んだ日のことを覚えてるかい?あのときのきみは、言葉がこんなにたくさんのことを表せるのかと言ったんだ」ある日、小川のほとりに腰を下ろしてテイトが言った。
「うん、覚えているわ。なぜ?」
「詩はとりわけそうなんだ。詩の言葉は、口で語るよりずっと多くのことを表わせる。人の感情を目覚めさせるし、笑わせることだってできるんだよ」

 

 

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秋の葉は落ちるのではない、飛び立つのだ。飛躍できる一度きりのチャンスに、彼らは与えられた時間を精いっぱい使って空をさまよう。日の光を照り返して輝きながら、風の流れに乗ってくるくると舞い、滑り、翻る。

 

 

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カイアが生物学の本のなかに探しているのは、なぜ母親が子を置き去りにすることがあるのか、という疑問を解いてくれる言葉だった。

 

 

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潟湖には、生命と死のにおいが同時に漂っていた。成長する有機体と、腐敗する有機体が交じり合ったにおい。カエルが嗄れた声で鳴いていた。カイアはどんよりしたまなざしで、夜空に線を描いて飛まわるホタルを眺めた。

ここには善悪の判断など無用だということを、カイアは知っていた。そこに悪意はなく、あるのはただ拍動する命だけなのだ。たとえ一部の者は犠牲になるとしても、生物学では、善と悪は基本的に同じであり、見る角度によって替わるものだと捉えられている。

 

 

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寂しさは、もはやカイアが抱えきれないほどに大きく膨らんでいた。誰かの声を聞きたい、そばにいたい、手で触れていたい、そう願ったが、自分の心を守りたいという気持ちはそれ以上に強かった。

 

 

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Ⅱ 沼地

 

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「あなたにも女の友だちが必要よ。女友だちは消えたりしないから。誓いなんてなくてもね。この世には、女の握手ほど優しくて強固なものはないの」

 

 

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「なぜ私に近づいたの?」カイアは訊いた。「本当のことを教えて」
「いいかい、おれは嘘をつくつもりはない。きみは魅力的だし、自由だし、竜巻みたいにワイルドだ。このあいだは、とにかくきみに近づきたい一心だったんだ。誰だってそう思うさ。だけど、あれは間違ってる。あんな形で事を進めるべきじゃなかった。おれはただきみといたいだけなんだ。わかってくれるかい?きみと知り合いたいんだよ」
「それでどうなるの?」
「互いにどう感じるかわかるだろう。もうきみが望まないことはしないよ。それでどうかな?」
「いいわ」

 

 

その日の午後、チェイスが帰ったあと、カイアはひとりで湿地にボートを出した。けれど、ひとりぼっちだという感覚はなかった。いつもよりスピードを上げ、風に髪をなびかせた。カイアの口元にはかすかな笑みが浮かんでいた。またすぐに彼に会える、誰かと過ごせるとわかっているだけで、これまで知らなかった世界が見えるのだった。

 

 

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身は凍えども心は凍らじ

 

 

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「つまらない男ほど騒がしい音を立てたがるものよ」

 

自然の摂理とは不思議なもので、不誠実なメッセージを送ったり雌を渡り歩いたりする雄には、たいてい最後は相手がいなくなってしまう。

 

昼が押し流されて夜が腰を落ち着かせると、遠くの岸のあちこちで村の明かりが躍るようになった。二人がいる海と空の世界の上で、星が瞬いていた。

 

 

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なぜ傷つけられた側が、いまだに血を流している側が、許す責任まで背負わされるのだろう?

 

 

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P285 29 海草 1969年

ここで一息・・溜息ものです。

 

 

 

 

 

 

 

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砂嘴(さし)

 

青空と雲がせめぎ合う上空を見つめながら、カイアははっきり声にして言った。「ひとりで人生を生きなければならない。わかっていたはずじゃない。人は去っていくものだなんて、ずっとまえから知っていたはずよ」

 

カイアは母親と同じように男の策略にはまってしまったのだった。

 

 

この孤独を理解してくれる者がいるとすれば、それは月なのだろう。

流れのなかにあっても揺らがないものは、ただ、自然だけなのかもしれなかった。

 

 

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彼の目は依然と変わらなかった。苦労をすれば顔は変わってしまうものだが、目はいつでも本当の姿を映す鏡になる。カイアには、彼がまだそこにいることがわかった。

 

 

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カイアは小さくうめいた。「私に孤独を語らないで。それがどんなふうに人を変えてしまうものか、私ほど知っている人間はいないと思う。ずっとひとりで生きてきたんだもの。孤独なのは私よ」

 

「きっと、世のなかには説明のつかないこともあるんだよ。許すか許さないか、そのどちらかしかないことが、おれには答えはわからない。たぶん答えなんてないんだろう。おまえに悪い知らせしかもってこられなくて、本当に残念だよ」

 

「だけどな、カイア、不誠実なのは男だけじゃないぞ。おれだって、だまされたり捨てられたり、遊ばれたりしたことが何度かある。認めるしかないんだよ。愛なんて実らないことのほうが多いってな。だが、たとえ失敗しても、そのおかげでほかの誰かとつながることができるんだ。結局のところ、大切なのは"つながり"なんだよ。」

 

 

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夕暮れはまやかし。
真実を隠して、嘘を秘める。

        ——アマンダ・ハミルトン

 

 

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「だめよ」自分に向かって言った。「また彼に惹かれるなんてだめ。これ以上傷つくなんてごめんだわ」

 

孤独に耐えて生きることと、怯えながら生きることはまったく別ものだ。

 

"死ぬべきときを決めるのは、いったい誰なのか"

 

命綱になるのは自分だけだった―—自分しか頼れる者はいない。

 

 

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サンディ・ジャスティス
やっぱり生き物には心を和ます力がある!
にゃーん(=^・^=)

 

 

 

 

 

 

 

 

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法廷の言葉には、湿地の言葉のような詩情はない。けれど、その本質には似たところがあるとカイアは思っていた。

 

"自然界では優劣順位が場の安定をもたらすが、人間社会も似たようなものなのだ"とカイアは思った。

 

 

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「~いまこそ私たちは、湿地の少女に公平な態度を示さねばならないのです」

 

 

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現在山本周五郎に夢中で・・あまり物語に乗り切れなかった(^▽^;)
数章でストップしてしまい、返却期限の前日に「ヤバッ!」となり一気に完読
後半まではノースカロライナ州の湿地の描写を楽しむ余裕はあったけど、読み飛ばしになったかな。

ネタバレはなしですが、やはり著者が動物学者だけあって、自然が活き活きと描かれていた。
伝わる湿地帯のむっとした匂い、湿地帯に溢れる手つかずの自然
野生に生きる動物たちの息遣い、森に響きわたる鳥たちの鳴き声が聴こえる。
カイアとかもめとの情景なんて勝手に映画化 映えますな。

私的にはカイアに対して寄り添うことは出来なかったし、
何よりテイトはあまりに出来過ぎている(見捨てたことも含)
チェイスに関しては「こういう男はいるな」と逆に人間味

ただとんとん拍子過ぎと言うか、綺麗過ぎやしないかな?
孤独だけど描写が美しくて危うさがないと言うか、アメリカ的ストーリーなのかもしれない。
差別やら何やら、時代を感じさせる場面が多々有
この時代だからこそ、今では失われた懐かしさを感じさせるものがあった。

納得する(そうかと思っていた)ラストで(そうだろうね)

ただこのお話がベストセラー!?
ベストセラーがベストセラーを呼び込んだ感
アメリカに踊らされている@宣伝効果

人それぞれの感じ方はあるかもしれないけど、
もっと心に響く物語はあるもので・・周五郎さんと比べては何だけどね。

 

 

 



映画化されたみたいです。
観に行くかは・・どうかなぁ?DVDor配信を楽しみに。


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