第753話 保育園の残り香

2014年06月18日 20時19分16秒 | 子育て・「おママごと」
卒園前に書いた話を・・・


帰宅後、保育園に通っている息子を抱くと「園の香り」がする。
朝、送り出す時は柔軟剤の香りがするトレーニング服も朝から晩まで過ごすうち、
すっかり園の香りにのっとられてしまう。
私は一日の終わりに、息子から香るこの園の匂いが好きだ。

最初から園の香りに好意的であったわけではない。
朝、保育園に送り届ける時、息子は泣いて行くのを嫌がった。
主人は残業が多く、育児休暇中、母子密着型の生活を送っていた私は、
「私がいなくて本当に大丈夫なのか。母親が子どもを預けてまで働きに出てよいのだろうか」と
不安と不信に迷わない日はなかった。
担任の保育士との面談や交換ノートのやりとり、何より楽しそうに過ごす息子の写真を見、
少しずつ私の不安は安心に、不信は信頼に変わる。
そんな心の変化と共に、週末持ち帰るお昼寝布団や帽子に残る園の香りが好きになった。

息子は6歳、年長児だ。
初めて登園したあの日から5年が過ぎたことになる。
保育園最後の運動会では組み立て体操に挑戦した。
息子だけでなく、クラスのお友達のあの子もあの子も「みんな、大きくなったな」と感慨深い。
今では一人っ子の息子がおもちゃを奪いあい、喧嘩しあえる場所があることに心から感謝している。

春から息子は地元の公立小学校に通う。
7年前、私は嫁ぐ形で主人の実家があるこの街にやってきた。
子どもを産むまでこの街との接点はなく、希薄だった。
保育園を拠点に私はこの街の方々を知り、この街が好きになった。
私にとっても地元となったこの街の小学校はどんな香りがするのだろう。
期待と不安の中思うのは、
同じ釜の飯を食い、同じ香りの中で育った仲間がいるからきっと大丈夫だということ。
卒園後も私の記憶下に、息子の無意識下に残るであろう園の香りが心強い。
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