第277話 童心

2010年02月24日 05時26分31秒 | 子育て・「おママごと」

主人と二人のドライブ中でも、電車を見つけると「あ、電車」
と、とっさに会話を中断し、身を乗り出してしまう。
あぁ 今日はKが乗っていないから指ささなくてもいいんだ・・・
第197話で「鉄マニ」という話を書いたのだが、えらいもので、
電車の音がきこえてくると、条件反射してしまうほどになった。
これもひとえに走行中、電車を見つけては息子に教え、
共に電車との遭遇を喜んできた賜物であろう。
通勤に電車を利用しているのだが、ガタンゴトンと電車の入ってくる音に
いい音だ などと思ってしまうこともあるし、
新幹線を見て、そのデザインの美しさにうっとりすることもある。
息子を持つまで知らなかった電車の魅力だ。

凧あげをした。
園の連絡事項に書いてあったとおり(第271話 天然)、
やはり息子は持たずに走っていた。だから凧あげちゃうやん とツッコンで、
私があげる。
あがった! だけで嬉しくて、大喜びしてしまう。
空にあがった凧と綱引きしながら、凧の抵抗感が気持ちいい。
へぇ~ 凧ってもっと軽いものだと思ってた・・・空に向かって満面の笑顔。
あげてみないと、面白さはわからないものなのね。

ところで、「3匹のこぶた」ってどんな話だっけ?
2番目のこぶたは何で家を建てたんだっけ?
詳細を思い出せないので、「3匹のこぶた」を図書館で探す。
冒頭、お母さんぶたが子供たちに向かって、
「うちは貧乏だから、お前たち出て行きなさい」・・・って何、これ。
しかも、一匹ずつおおかみに殺されてく・・・怖いよこの話。
子供の頃から本物をとも思うが、息子に笑って読み聞かせるには怖い内容なので、
お母さんから大きくなったから出て行きなさい促され、
兄弟が生き延びるバージョンの三匹のこぶたを借りることにした。
子供に読みながら、私の中のぬけおちた記憶を修復していく。
おおかみになりきって「それは、それは、お前を食べるためさ」(赤ずきん)
できる限りの声色を使って読んでいる自分の下手さ加減にも笑える。
大人になって読む童話は、面白い。

乾いた砂の感触や、濡れた砂の感触。久しぶりに思いだす手の感覚。この追体験が楽しい。
これから先、私がコマ回しやヨーヨーをすることになるんだろうなぁ・・・
男の子みたい(笑)
これから息子が何にハマるのか・・・その折々に私も便乗して遊んでみようと思う。

※私と同じように思い出せず、モヤモヤしているあなたへ。
 正解は木。二番目のこぶたは木で家を建てました。

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第276話 ほふく前進

2010年02月21日 00時09分32秒 | 子育て・「おママごと」

朝、準備ができたと思ったら、息子が私のスカートをひっぱって、
「このスカート、いらん。黒いズボンにしてー」と泣く。
え、なんで?
「ママはこのスカートでいきたいの」と返すと、号泣。
そのこだわり、自分の着る服ならいいよ。どうして私に飛び火?
腑に落ちないが、朝は一刻を争う。すばやく黒いズボンにはき替える平日。

休日は朝から晩まで「おむつ、替えよう」と言っている。
「イヤ」と返されては、
どんなにちっちが、または、うんちが出ているかを解説。
時間の経過と共に、どんな弊害が起こるかを語り、
自発的に「パンツ、替える」と言うまで待つ。
Kが私に「絵本を読んで」とお願いをしてきた。依頼には依頼返し。
「先にパンツを替えてからね」
交換条件が不服だったとみえ、泣いている。私もパンツを替えるまで譲らない。
諦めたのか、「パンツ、替える」と言う。
「もー、して」(手を前につかせおしりをふくポーズをもーというのは関西だけらしい)
「イヤ」とここから、お手つきまでまた長い。
ようやくこぎつけた「パンツ、はこう」で、またひともんちゃく。
「イヤ、イヤ」と、はてしない。
なかなか一筋縄ではいかないおむつ替え。今夜は「かえるさんで行く」らしい。
「じゃあ、かえるさんでこっちにおいで」というと、「ママも」と呼ばれる。
うんち処理班としておしりの平和を守るため、
とはいえ、おむつ交換場所までかえるとびとは・・・やれやれ。

目標時間通り出発できない。予定はあってないようなもの。いっこうに進まない。
ほとほと疲れるんですけど・・・
「ママ、見て。かたつむり」
見ると、フローリングの上をどう見てもほふく前進する息子の姿が・・・
「あ、ほんとだ。かたつむり」と言いながら、この人間掃除機に笑ってしまう。

大変なんだけど、憎めないんだよなぁ。

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第229話 じぃじのテレパシー

2010年02月15日 23時30分44秒 | 子育て・「おママごと」

「あんたは知らんと思うけど、
お父さん、仕事が終わってから毎日、Kに会いに病院に行っててんで。
早く元気になれって、保育器の中にいるKにずっと、念、送っとんてんで」
知らなかった。
母にそう言われるまで私は全く気づくことなく、
病室を訪ねてくれた両親に自分ではどうすることもできない苛立ちをぶつけていた。
息子が新生児仮死。
母として不安に、罪悪感に、やり場のない怒りにさいなまれていた。
そんな自分の気持ちに手一杯で、周りのやさしさに気づく余裕を失っていた私。
父は私の八つ当たりをただ黙ってきいていた。

Kの退院の日が決まった。
父がKの沐浴を担当するという。
家のことはすべて母任せ。何もしないあの父が?!
一同、みんな驚いた。
それからというもの、父は仕事を終えると、寄り道もせず一目散に帰ってくる。
一日働いて汗をかいているからと、まず父自身がシャワーを浴び、身を清める。
新しい服に着替えて、父がベビーバスに慎重にお湯をはる。
お湯の温度にもうるさく、母がちょっと熱いお湯をたそうものなら、
「アホ。Kが火傷するやないか」 母に怒鳴る。
「よし。K、お風呂に入ろう」振り向いた父の満面の笑顔(豹変)
お湯につけながら、いつも決まって「お前、よぉ頑張ったな~ えらかったな~」
毎日毎日、欠かすことなく、保育器からの息子の生還を新鮮に称えた。
父のこの声がけに私はいつも泣きそうになって・・・困った。
今も綴りながら目頭が熱くなる。
最後、ベビーバスを洗って終了となるのだが、
せっかく着替えた服が汗だくになるほど丁寧に磨きあげる。これも、欠かさず毎日。

いつの頃からか娘は父と話す機会が減っていった。
再び、実家を出る日。
照れくさいので、運転する父に後ろから「ありがとう」と言った。
「Kが保育器にいる間、お父さんにひどいこと言ってごめんな」と言った。
「うむ・・・わかっている」と言った。
ありがとう、お父さん・・・

「お父さん、面白いでぇ。
毎朝、携帯の画面(もちろんKの顔写真)に向かって、話しかけてるねん。
元気でやれよって念、送ってるねんて」
母が笑いながら話す。
どうやら父の念はよく効くらしい。
嫁ぐ前、花嫁の手紙というものを書いたけれど、子供を産んだ後、書くのもいいかもしれない。
ありがとう、お父さん・・・私はお父さんの娘で、本当に、よかった。


以上が、初めてエッセイコンテントに送った文です。
ビギナーズラックならず、結果は参加賞。
テーマは「子育て、子育ち」
子供を育てることで、自分もまた子(娘)として成長できた・・・そんな思いで綴りました。
受賞は叶いませんでしたが、私には思い入れの深い作品です。

コメント (6)
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