「おばあちゃん、また明日来るからね」
いつもそう約束をして帰る。
この約束を守ることが祖母にとって何よりの励みになると信じて、続けた。
祖母は10月の上旬に倒れ、入院していたのだが、
危篤ときき、かけつけたそこには祖母の変わり果てた姿が・・・衝撃であった。
きっかけは脳にたまった血を取り除く15分程度の簡単な手術だった。
本来であれば、一度で無事終わるはずの手術だが、
術後のCTにて状況芳しくなく二度目の手術へ向かったが、その途中、心肺停止となり、
一命は取り留めたものの意識不明の状況に陥ったのだ。
脳の手術のため、髪の毛を剃って挑んだ祖母は丸坊主姿のまま横たわっていた。
祖母の頭のCTスキャンを見ながら、担当医が説明する。
血が溜まり、圧迫されたこのような状況下で本来辛いはずなのに、
我慢強い方で、しんどいですか?とたずねてもしんどい、辛いと訴えないんですね・・・
危篤状態になる5日前に会った祖母のことを思い出す。
息子の運動会を楽しみにしていた祖母。
運動会後に会いにいった折、「何等だった?」ときく。
息子はビリだったので、答えずモジモジしていると、祖母が顎で左の戸棚を指す。
祖母は点滴を打っていたので、手が動かせない。財布を出せといっているのだ。
おばあちゃんはKにおこづかいを渡したいのだ・・・いつだってそうだ。おばあちゃんらしい・・・
もともと体が丈夫な方であったので、祖母は人工呼吸器に頼りながらもよく持ちこたえた方だと思う。
日に日にむくんでいく手を握りながら、一方的に話しかけて帰る。
その日も職場の帰りに立ち寄った。
看護婦さんにもう血管がとれないので、覚悟しておいて下さいと言われる。
「おばあちゃん、また明日来るからね」驚いた看護婦さんを残し、病室を出た。
私と別れて1時間後、祖母が亡くなった。
結果として祖母に最後に語りかけたのが、私となった。
おばあちゃんの思い出話を書きたいと思っている。
それは気合も時間も要する作業で、いまだ書けずにいるが、必ず書き上げたいと思っている。