歩く・見る・食べる・そして少し考える・・・

近所を歩く、遠くの町を歩く、見たこと食べたこと、感じたことを思いつくままに・・・。おじさんのひとりごと

沢口靖子の“小津の秋”で想いをめぐらす -その7-

2010年01月14日 | 映画の話し

昨日の続きです。

今日で、“小津の秋”は、ホントに、ホントに、終わりです。

それで、昨日の記事の最後に「キネマ旬報には、いろいろ、云いたいことがある」と書きました。

それで、その事なんですが、“小津の秋”の制作年度を調べようと、キネマ旬報の“映画データーベース”をみたところ、

小津の秋の“ストーリー”が、こんな風に書かれていたのです。


     ----- 引用開始 -----


“新聞記者の佐々木明子”(沢口靖子)は、父の遺品を持って蓼科に来た。取材もあったが、実は探している人に会えるかもしれない、という予感があった。

高原のホテルは秋の気配が立ち籠め、湖は色づいた木立を映していた。明子が吉岡園子(藤村志保)という老婦人を最初に見かけたのは、観光スポットにもなっている小さな庵、無藝荘だった。

無藝荘の守女である園子に、ホテルの支配人(栗塚旭)が恭しく“紅茶”を注ぎ差し出していた。“薄汚れた老婆に仕える紳士、それは奇妙な取り合わせだった。明子はそんな二人に興味を持つ。”

最初は固く心を閉ざしていた園子だったが、徐々に心を開いていった。“「わたし、人殺しなの」嘘か本当か分からない園子の話に明子は引き込まれていく”。園子の穏やかな顔のなかにも戦争の深い傷痕があった。

また、明子には恋人の達也と少し距離を置いて、もう一度自分を見つめ直したいという気持ちもあった。付き合って5年、達也とも最近なにかしっくり来ない苛立ちを感じていた。結婚に踏み切れない自分の中のわだかまり…。

園子のもうひとつの記憶、それは今の明子と同じような年頃のことだった。戦後の混乱の中、“園子は家族のために働き続けた。結婚なんてする資格がないと考えていた。” そんなとき蓼科に女神湖の開発設計の青年と園子は恋に落ちた。

二人は愛を深めていったが、青年には妻子がいた。二人で外国に行こうと約束した日、青年は来なかった。園子は身篭っていた子供を堕ろし、一人旅に出た。

明子は父の遺品である一冊の文庫本を園子に渡した。「あなたが父に贈ったものですね。あなたのおかげで母は狂い私の家庭は地獄のようになりました。父の心にはあなたしか映っていなかった」

文庫本には愛の証である花が挟まれていた。「たとえこの身が灰になっても、わたしはあの人を愛しつづけます」園子は明子に言った。

蓼科に初雪が降った。園子は一人雪を見ていた。淡い雪は積もることなく、蓼科の高原を滑るように転がり、溶けた。

“「園子さん、今日は温かいスープとサンドイッチを用意しました」振り向くとホテルの支配人が少し足を引きずりながら近付いてきた。「茂ちゃん、いつもありがとう」園子は女神のようにほほえむのだった。”

※文中“”で括ったのは私です。

----- 引用終了 -----


それで、先ず、最初はカワイイ誤りで、“新聞記者の佐々木明子”と、ありますが、明子の台詞で、「灯文社の佐々木です」とか、「貧乏出版社ですから」とかあり、画面にも“灯文社”と映し出されています。これは、どう見ても、明子は雑誌記者です。


もう一つ、カワイイ誤りはも“紅茶”です。このシーンでは、明らかに“ヘミングウェーも好きだったコーヒー”です。

そして、最悪なのが。“薄汚れた老婆に仕える紳士、それは奇妙な取り合わせだった。明子はそんな二人に興味を持つ。”

明子は、藤村志保が演ずる園子を、“薄汚れた老婆”と感じ、“薄汚れた老婆”と紳士の“奇妙な取り合わせ”に興味を持った?    

どのシーンの、どのカットの、どの台詞に、そんな表現があったのか? こんな見方しかできない人が、“キネ旬のデーターベース”でストーリーを書いているのです。

そして、ラストシーンが、
“「園子さん、今日は温かいスープとサンドイッチを用意しました」振り向くとホテルの支配人が少し足を引きずりながら近付いてきた。「茂ちゃん、いつもありがとう」園子は女神のようにほほえむのだった。”

こんなシーン、こんな台詞があったのですか? 私が観たのはテレビで放映したものでした。

もしかして、劇場公開の作品とはラストが異なるのですか? そんな事は無い筈です。

これまでの関係、これからの関係からして、園子が「茂ちゃん、いつもありがとう」何て、台詞は不自然です。

ストーリーを書いた人の、かなりいい加減な想像と思われます。それにしても、キネ旬のデータベースは、この程度だったのです。

もしかして、映画を観ないで、観た人の感想だけを聞いて、それもかなり偏った感想を聞いて、それをもとに想像を巡らし書かれたのでしょうか?

これまで、それなりに参考にしていた“データベース”でしたが、これからは、ホントに“参考程度”にした方がよさそうです。

最終回は、ちょっと、映画の本筋からはかなり遠い話となってしまいました。気に入った映画を、こんな書き方をされ、かなり感情的になってしまった・・・・・・。


兎に角“小津の秋”は、30歳半ば以上の特に女性の方、男女ともに50代以上の方には、特におすすめの映画です。


“兎に角「憎しみを赦すのは女神、女神はあなた自身」です。これまでの時間よりも、これからの時間が長い方は、過去の憎しみを赦し、これからの幸せに向かって歩きだしましょう”

まだ観ていない方は、是非、直ぐに、お近くのレンタルビデオ店に向かって走って下さい。でも、50代以上の方は走ってはいけません。


それでは、また明日。


コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする