The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
加谷珪一・著“お金は歴史で儲けなさい”を読んで
先週から、新型ウィルス流行前の習慣、週一スイミングを久しぶりで再開。考えてみればブランクは3カ月弱にも上る。
水を介しての感染懸念?25m×6レーン・プールで、ほぼ500立米(=500トン)超の水量。ここで泳者が皆で1㎏の唾液を吐きだしたところで、1/50万=2ppm未満の濃度。唾液が100%ウィルスであっても高々2ppmのウィルス濃度で感染するのだろうか。これが細菌であれば水中での増殖の懸念も考慮せざるを得ないが、人感染ウィルスは人体内でしか繁殖しないので、2ppmを超える濃度にはならない。
しかも、その効果に議論の余地があるらしいが、プールでは一般に殺菌剤として次亜塩素酸が使用されている。それを考慮すれば結構問題ないと考えて良いのではないか。後は、人との接触でこれは既に行われているのと同様で対処していれば問題ない。
根拠なき過剰反応は避けるべき、とばかりに泳いだが、長期ブランクは加齢もあって影響甚大。50m泳いだだけで息絶え絶えの惨憺となる。当分、息を上げながらの泳ぎとなるだろう。いつ頃、以前の調子を取り戻せるのやら不安だ。そこで、日曜に引き続き、火曜にも行ったが身体的には変化なし、で愕然。体調戻らぬうちに、第2波では何をしていることやら、となる。残念!
大阪府の新型ウィルス対策専門家会議で阪大の核物理の中野貴志教授がK値の計算結果から休業要請や外出自粛の呼びかけが有効は意味がなかったとの見解を示したという。自粛開始前後でのK値の減少傾向に大きな変化が認められなかったことからの判断のようだ。もう一つ理解できていないが、要するに変化率の変化y’’(2次微分)に着目ということだろうか。
*𝐾=1−(1週間前の総感染者数/当日の総感染者数)
テレビに出られた御当人は“私は政治家ではないので、好きなことを言います。”と仰ってはいたが、学者は自らの学問的見地をしっかり主張するべきで、それは当然の義務でもあるのだ。だから“それでも、地球は回る”とガリレオは言ったのだ。
ところでアビガンの認証が未だ遅れるという。どこまでノンキなのか。オメデタイとしか言いようがない。副作用のほとんどないイベルメクチンはどうなったのか。のど元過ぎれば・・・では困ったものだ。
さて、今回は少々目先を変えて相場観醸成のための本・加谷珪一・著“お金は歴史で儲けなさい”の紹介である。
このところ“お出かけ”できないでいるので、本紹介に注力。生来の遅読であるが、お蔭で結構本を読めている。ブログ投稿をある種の糧にしている効能か。仏教に親しめたし、少々マルクスを通してヨーロッパ哲学にも親しめた。今後、この方面へもさらに深耕したいが、どこまでやれるか。
紹介本についてアマゾンに載っていた“出版社からのコメント”は次の通り。
2020年1月半ばに始まったコロナショック・・・。新型コロナウイルスによる、先の見えない不安から市場が揺れています。10回のバブル、4回の戦争、経済統制、ハイパーインフレ、世界恐慌、大災害…。歴史上のピンチから今の状況を鑑み、投資における「やるべきこと」と「やってはいけないこと」を知ることは重要です。投資は20世紀に学べ!
これを見れば、株をかじっている者には何かが学べると思うではないか。
今回紹介の本の内容・構成は次の通り。
第1章 100年単位で株価はこう動く
第2章 インフレ時代を前に知っておくべきこと
第3章 戦争と株価の不都合な真実
第4章 バブルは利用するもの
第5章 イノベーションで儲ける鉄則
第6章 金と石油、そして通貨をめぐる攻防
第7章 長期投資は安全に儲かるのか
第8章 未来を見据えた投資戦略
第1章では日本の明治以来の130年間の日本株価の推移グラフ(チャート)を示している。第7章では“長期投資は安全に儲かるのか”を論じているが、このグラフを見れば短期より長期投資、即ちバフェット流が有利であるというのは一目瞭然であろう。以前に読んだ本では、そのように書いていて、それで株にのめりこんだのだ。
しかもインカムには銀行預金より株が有利なのだ。普通企業は、銀行への返済の前に株主に配当することを考える。従業員給与を重視する会社もあろうが、いずれも銀行返済より優先される。残った収益余剰が銀行返済へ回るので、預金より株が有利である。しかも最近は政府当局もROE重視を強制し、企業側も株価を気にして株主還元に苦慮している。
第1章でのグラフの問題は、戦前のデータを東京の株式市場の平均値を使っていることだと思う。戦前は東京より大阪が日本経済の中心だった。だから、日本を代表する株式平均値は大証(大阪証券取引所)の数値を使用することが正しいはずだ。歴史認識を根本的に誤っている。恐らく東証のデータを探している内に事実を知ったはずだが、面倒になってそのままとしたのは不誠実ではなかろうか。もしそれを知ることがなかったのならば、探し方が不十分であり、浅学菲才のそしりを免れ得ない。
東京以外は何でも田舎だという考えは止めた方が良い。関西人が見た関東の文化遺産はどうしても二流に見える。文化遺産は全て大切にすることにはやぶさかではないが、それは事実だ。そういった歴史を無視する議論は本質を誤る。
このところの新型ウィルスの対応も、先述のように関西の方が進んでいる印象だ。私が推測した通り、東京では感染者が増加している。だから先週の東京出張で“お勉強”するのを断念した次第だ。
株式取引で東証が中心になったのは、昭和50年代以降ではなかろうか。その頃までは関西人は大証で商いしていて、次第に東証が中心になって行く様子を見て、“(大証は)東証の写真相場になっている”と嘆く台詞をよく聞いていた。
近年は“東証はニューヨークの写真相場”と思える局面が多く、市場開場前には前日のニューヨークを誰しもが注視している。遠い将来、このまま日本経済が沈下していけば、東証も大証のように消えてしまうこともありうる。
第2章を読んでみても、インフレに関する感覚が、私と著者の間にはズレというかギャップがある。現状が超金融緩和状態にもかかわらずインフレにならない原因について著者が言及していないことに違和感を覚えている。その原因について感覚的にでも言及するのが本来であろう。
私は日本社会の産業競争力の強さの影響が未だに残っていて、供給余力が大きいのが原因ではないかと、最近考えるようになった。要するに、消費市場での供給力が強すぎるのだ。生産者が多すぎて過当競争になっていて、いわばあらゆるマーケットがレッド・オーシャンになっているため、価格競争に陥り、物価が上昇しない。又、モノが売れないので生産性も上がらず賃金も上昇しない。結果としてデフレ状態になっている。
しかし、このところの新型ウィルス騒動でモノ不足が目立つようになってきた。マスクをはじめ、流通にも素早い商流転換が見られず、生鮮食料品関連での不足が目立つようになってきた。どうやらさしもの生産立国もかつての栄光は無くなってきている気配がある。こうしたことが、ジワジワとゆうくりインフレへ加速し始めるのかも知れない、と見ている。日本人は発想の転換が遅い印象が見て取れるような気もするのだ。それでは商機を逃すのではなかろうか。マスクの商売でも多くの日本人は中国商人にしてやられているのではなかろうか。
閑話休題。この本の結論は最終章に次のようにある。(段落番号や括弧内は筆者による)
①米国は旺盛な消費で世界経済を牽引
②米国は人口が増加するので、相対的に優位性が高い
③米中貿易戦争など不確定要素はあるが、基本的にはドル高傾向が続く
④一方、日本は緩やかに経常赤字へ(推移する)
⑤円安が進展した場合、日本がインフレになる可能性は高い
総括としてはこんなところかもしれず、概ね同意できるものだが、少々こなれた表現になっていないのが残念。項目として②は①に含まれる。出版社の編集もいい加減で、文章を体言止めにするか、きっちり動詞や形容詞で終わらせるか統一してほしい。少々原稿がプロの表現者とは思えない部分がある。
“米国は(移民によって)人口も増加するので旺盛な消費が見込まれ、これまでのように世界経済を牽引する。”の見解には、皆の同意するところであろう。新型ウィルスの経済対策も素早く、規模も大きい。経済ダメージは限定的と見られ、失業保険申請者数も減少傾向にある。したがって、経済的に先の見えない日本とは経済面では優位性がある。ニューヨーク市場が上昇傾向にあるのは、ある種の裏付けがあると言える。
米国の問題は、大統領の新型ウィルスそのものへの認識と対策にある。だからこそ全米で一向に減少の傾向にない。
③は不確定要素であるが、対中封じ込めには勝利して欲しいものだ。対ナチスと同じ戦いであるという認識であって欲しいものだ。彼らの“内政干渉するな”という咆哮に動じることなく、彼らの内政・外交に異を唱えるべきだと考える。
しかし、その勝利の暁には前回言及した“ネグリの〈帝国〉論”に依るようにいよいよ資本主義の究極の姿が現れるという、諸手を挙げて喜べない何か恐怖をともなう風景が想像される。同時に、その時負けた中国がどのような姿になっているのかを想像するのも、恐ろしい気がする。その負けた中国に最も強烈に影響を受けるのは日本であろう。
こうした大局に立った、世界観が日本人に見られないことも何か恐ろしさを感じてしまうのは私だけだろうか。
④は大いに問題がある。この想定に問題があるのではなく、“日本が経常赤字へ推移する”ことが問題なのだ。
ところで、“国際収支”は“経常収支”と“資本移転収支”、“金融収支”から構成され次の関係があるとされる。
経常収支 + 資本移転等収支 = 金融収支
“経常収支”は“貿易・サービス収支”,“第一次所得収支”,“第二次所得収支”から構成され、“第一次所得収支”は 対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等の収支状況を示し、“第二次所得収支”は居住者と非居住者との間の対価を伴わない資産の提供に係る収支状況を示す、ということのようだ。
資本移転等収支とは、対価の受領を伴わない固定資産の提供、債務免除のほか、非生産・非金融資産の取得処分等の収支を意味する由。
言葉の定義が最近変化しているようだ。どうやらこの辺りはこれで大丈夫なのかと、素人は考え込んでしまう。とすると著者の示した“資本収支”は何に相当するのだろうか。“金融収支”であろうか。
上表はこの本で紹介している、資本主義国の発展にともなう国際収支の変化を示している。現状、日本は成熟した債権国であり、収支は赤字だが、対外投資などでの所得収支が黒字のため経常収支の赤字は免れている。だが、将来は“債権取崩し国”へ移行せざるを得ない、というのだ。
“日本が経常赤字へ推移”することは、底なし地獄へ日本全体が沈み込んでいくとしか考えられないことだからだ。著者はお気楽にも、“米国は1980年代から既に慢性的な経常赤字になっており、資金の多くを海外から頼る状況となっている。しかし、米国は逆に1990年代以降、めざましい経済成長を実現しており、空前の好景気が続いてきた。・・・この事実は、経常収支の赤字化は、直接、経済成長とは関係しないということを如実に表している。”との指摘。
ここで問題は“資金の多くを海外から頼る状況”を日本が作れるのかということ。米国は自国通貨が国際基軸通貨であり、ニューヨーク株式市場をはじめ金融市場が充実していて、GAFAのような有力新興企業が多数存在しているので、自然に資金が海外から流れ込んできているから、問題が生じないのだ。現状の延長線上のままの将来には、日本には到底無理な話だ。著者はお気楽なコメントで終わっていて、この点には全く言及していない。ここまで読んできて、果たして著者に経済学的常識があるのか、と根本的な疑問を呈せざるをえないのは、大変残念である。
⑤では、私は円安にならなくても供給余力の減少から日本がインフレになる可能性は高いとみている。むしろそれらの要因が互いに原因・結果となり絡み合って、待望のインフレにはなるものの、日本経済は奈落へ転落して行く可能性は高いと見るべきと考えている。
こう考えて来ると、日本の将来に明るい材料はない。だから、①②の結論から、著者は米国企業株を推奨しているが、それには同意するところ大だ。皆が、そうした行動を取れば多量のキャピタル・フライトが日本に生じる懸念があるのだが。
こうした前夜の状況にもかかわらず安倍政権は無駄に時間と金を浪費し、ご自分とお仲間の小さな御利益に執着した。拉致被害者家族をもその道具に使って、政権の座に就き、その後は官僚たちに忖度を強要した。中には、そうした悪行を自らの御利益に利用した高級官僚も居る。実に、憎悪するべき腐敗政権ではないか。しかも、そうした政権をマゾヒスティックにも支持する人々が国民に多数未だにいることに、私は驚嘆せざるを得ない。
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