goo

企業の環境ブランド構築プロセス

先週、“低炭素社会セミナー・最新の新エネ・省エネ情報”と題した無料開催されていた“市民セミナー”に、参加したことを話題にした。そこでは、このセミナーの内容はともかく、冠に使われた“低炭素社会”という言葉に注文を付けた。今度は その内容に触れたい。
講演は2つあって、一つ目の講演は“最新の新エネ・省エネ情報”の総括的な内容であって、とにかく頭の整理にはなったように思うが、“最新”と言うには、殆どどこかで聞いたような事柄ばかりであった。
しかし、二つ目の講演の中には 私には今回初めて聞いたテーマがあった。

それは、企業が環境ブランドを構築するプロセスに最近変化が生じているということであった。
従来は “イメージ訴求型”であって、次のような順でブランドが形成されて行くというのが 通説であった。
①企業の環境活動→②環境情報接触→③環境コミュニケーション→④環境(企業)イメージの高まり→⑤環境(企業)評価の高まり→⑥利用・購入意向
この順で 消費者の企業にたいするイメージ変化から その企業製品の購買行動へと動くと考えられていたという。つまり、まず意識の高い企業が、環境負荷を軽減する活動やその組織化を行う。例えば環境マネジメント・システムの構築、或いはその仕組を活用してエコ製品を商品化して、PR活動し、同じく意識の高い消費者がこれに呼応して、イメージを広げて行き環境ブランドを確立していくという図式だった。

ところが、最近は“エコ商品牽引型”へと消費者行動というか意識が変化して来ていると言うのだ。つまり、企業の提供する製品やサービスそのものが“手軽で、お得で、高性能”なエコ製品であることによって、一般消費者の企業へのイメージを変化させているということである。つまり、上の①~⑥への変化が、逆順となり製品の⑥が基点で矢印が逆になって、①に到っているという。①の企業の環境パフォーマンスそのものは ブランドに与えるインパクトは小さくなって来ているというのだ。つまり、たとえば環境マネジメント・システムを確立して、その認証を取るということ自身よりも、消費者に直接利益をもたらすようなエコ製品を提供することの方が、訴求力があると言うことなのだ。“お得な”エコ製品、いわばメーカー側も消費者も相互にウィン・ウィンの商品が注目される傾向にあるとのこと。

講演者は このことについて、日経BP社の“環境ブランド調査”分析からの引用だと言っていたので、私も その調査結果を確認してみた。この“環境ブランド調査”は 調べてみると“日経エコロジー”の8月号に調査結果を毎年発表しているようだ。そこで、今年2010年の8月号を覗いてみると、“消費者に対する訴求力が大きいのは、省エネなど自分に直接のベネフィットのある商品”であるとの富士総研主任研究員の意見を紹介している。
その上で “A:省エネやゴミ削減など消費者に直接のベネフィットがある商品>B:リサイクル素材を使用するなど消費者に直接のベネフィットがない商品>C:工場でのC02排出削減や節水など消費者とは直接の接点のない取り組み” の順で“消費者への伝わりやすさ”が決まるとしている。その典型例を花王の“アタックネオ”に見ている。“アタックネオ”は“すすぎが1回で済み、1回の使用量も半分以下になり、節水や省エネ、時短に効果がある”として、花王がこれを“お客さまと「いっしょにeco」”を最重点として商品開発していることを評価し、実際に効果を上げていると報告している。

私は、このトレンドを聞いて、さもありなん、と合点が行った。というのは、企業ブランドとは、企業とその顧客との地道なコミュニケーションによって構築された信頼に基づいているはずのもので、そのコミュニケーションの媒体は企業の提供する製品やサービスそのものだからである。従って、ブランド形成の起点が、企業パフォーマンスであることの方が、本来 不自然なのである。企業パフォーマンスなどというものには、第三者から見てどうしても怪しさというか大きな不確実性がある。客観的に確認しづらい面が大きいからである。ところが、企業の提供する製品やサービスにはそういう不確実性の余地は少ない。いい加減な製品やサービスは、どんなにごまかしてもいずれ時間とともに必ず、そのいい加減の本質を現すからだ。
環境コミュニケーションなどと、わざわざイベントを催さなければならないというのには、わざとらしさがあり、少々邪道に近い印象を伴う。企業にとって直接の顧客ではない周囲の住民との相互関係を築くためというのなら、それは意味があるかもしれないのだが・・・。

要は、企業はその製品の提供を通じて、社会に貢献するのが基本機能であり、本来の姿であるから、わき目も振らず真面目にモノ作りに励むのが本筋なのだ。一時流行したメセナにかぶれたような、これ見よがしの環境活動に走るのではなく、そういう地道な基本の姿に立ち帰ることが大切なのではないだろうか。長続きしない無責任な環境活動は、周囲に大きな迷惑をかける結果にしかならないからであり、そのことが結果として環境にマイナスになることもあるはずだからだ。

コメント ( 0 ) | Trackback ( )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “低炭素社会”... びわ湖環境ビ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。