The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
“ISOを活かす―72. JIS製品規格は品質保証の規格、ISOはPDCA改善の規格?”
今回は、製品規格のJIS規格の捉え方がテーマです。
【組織の問題点】
建設業のA社の資材受入検査では、JISマーク表示品については検査を省略しています。
また、資材の購買先評価も、JISマーク表示品の供給者については、特に評価はしていない、ということです。
ISO9001マネジメントでは、このような管理方式が適切と言えるのか、という課題です。
【磯野及泉のコメント】
こういう資材調達の管理方式で これまで全く問題無かったというのならば、そういうやり方もあるのかなぁ、と逆に感心してしまう方法です。
しかし、これでA社の顧客が十分に満足する結果が得られるのだろうかと考えると 心もとないというのが本音のところでしょう。というのは、JIS規格は 現在の日本の技術水準では最低限の品質を確保するためのベース基準となっており、大抵の 顧客要求は それより高い水準を求めるのが一般的だからです。
そう考えると、逆に A社の技術水準に疑問が浮かぶようで、何かA社の将来に危なっかしい印象を持ってしまいます。
著者・岩波氏もこの不安感が先に立っているようで、次のように指摘しています。
“JISマーク表示品は製品の特性や品質が保証されており、安心して使用できますが、その供給者の納期や価格が、満足の行くものかどうかはわかりません。JISマーク表示品の場合も、供給者の評価は行うべきでしょう。”
しかし、ここでの著者・岩波氏の指摘は 注意深く見ると 私の評価とは少し違っています。
著者・岩波氏は 品質に関しては“JISマーク表示品は製品の特性や品質が保証されており、安心して使用できます。”と言っています。では、何が 問題なのか。A社の供給者、つまり購買先の“納期や価格が、満足の行くものかどうかはわかりません。”と指摘しているのです。つまり、A社の購買先の“顧客満足度”の管理が 十分かどうかは、“JISマーク表示品”というだけでは 保証できないのではないか、と指摘しているのです。
これは どういうことかというと、“JISマーク表示品”は 製品の品質を保証してはいるのだが、実は購買先の“顧客満足度”の管理状態を保証するものではないのだ。それでA社は 満足できる状態なのか、ということなのです。
もし、A社は 購買先の“納期や価格”の管理状態を心配だと言うのならば、“JISマーク表示品であっても、供給者の評価は行うべきでしょう。”と言っているのです。
ということで、今回のテーマ主旨は何かというと、規格には 製品規格とマネジメント・システム規格があり、これを混同してはいけないということです。“JISマーク表示品”は 製品規格に準拠していることを保証しているだけであり、マネジメント・システム規格の遵守状態には言及していない、ということです。
また、ISO9001の認証取得企業の製品へISO9001認証マークの表示が 禁じられているのは、ISO9001は製品の品質を保証するものではないので、一般の消費者が誤解しないようにするためなのです。(ISO9001は JIS Q 9001にJIS化されていますので JISにもマネジメント・システム規格があり、製品規格だけがある訳ではありません。)
そこで、著者・岩波氏は 最後に“JIS製品規格は品質保証の規格、ISOはPDCA改善の規格といえるでしょう。”と言っている訳です。
この項の終りに、“JISマーク表示品”の製造過程では“検査では不良は発生しません。したがって是正処置や予防処置の事例はありません。”と主張する会社が多いと著者・岩波氏はこぼしています。
JISに準拠しているから、不良が発生しない、と言うことも、不良が発生しないから是正処置や予防処置の事例がない、というのも変な話だと思います。これは溌剌とした民間企業での発言とは思えず、どこか黴臭い役所で 紋切り型の頭の硬い役人から聞く台詞のような 耳を疑う発言です。こういう言葉を聞くと 急激に疲労感が広がるのです。
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