goo

サントリー山崎蒸留所での食品品質保証の講演

先々週の話だが、サントリー山崎蒸留所で “サントリーの品質保証” という標題で講演が行われ、聴講した。
実は、昨年 京都中小企業技術センターから “食品・バイオ技術研究会の開催のご案内”が来たのだった。サントリーの品質保証とあれば、当然に “食品の品質保証” がテーマになるだろうと思った。ついでに ウィスキーの試飲会もあるだろうと 大いに期待を抱いたのだった。
しかも、先月末には 殺虫剤入りギョウザのニュースが 駆け巡り始めた頃だった。大いに講演内容に 興味がそそられたのだった。あらかじめ案内された講演内容は 次の通り。

“サントリーの品質保証~社内分析センターの役割”
サントリー㈱品質保証本部 副本部長 兼 安全性科学センター所長 但馬良一 氏

実際の講演では “企業分析センターの役割―分析業務からの品質保証取り組み事例” という標題になっていた。こちらの標題が 実際の講演の内容には ふさわしい印象だ。ここで拝聴した講演の紹介をするつもりであるが、頂戴した資料や 講演の際に書き取ったメモを あとから振り返ってみても、どうにも私が 浅学過ぎるせいか、キィ・ワードがつながって論理の糸にならない。しかし、折角なので ここでは以下にキィ・ワードを羅列し、その紹介に留めるだけとする。



社是は いろいろ 難しいことを書かれているが、本当は “やってみなはれ、みとくんなはれ、やらしてみなはれ”であって、大阪の会社だから大阪弁で、こっちの方が 分かり易い。
またサントリーの分析部門関係者は、誰にでも“エビデンスに基づき説明できるようにする”科学的態度が大切と考えている。

品質保証とリスク・アナリシスは関連が深く、リスク・アナリシスについては 3つの要素がある。
①リスク・コミュニケーション:情報/意見の相互交換 [社会学,心理学 その他]
②リスク・マネジメント(Policy):リスク削減のための選択肢評価,施策の決定と実施,施策の有効性評価 [政治学,経済学,法学 その他]
③リスク・アセスメント(Science):有害性分析と機構解明,暴露評価,リスク評価 [分析化学,毒性学,生物学,疫学,統計学 その他]
この3つは本来は分離して実施しなければならないと なっているが、但馬氏自身、品質保証と安全科学センターを兼務することで統合的にやっている とのこと。

サントリーの社内分析機関は 従来は “製造・管理”と“分析業務”の2軸でしか 業務を捉えられていなかったが、但馬氏自身の努力もあり、近年は 次第に 積極姿勢の“開発・設計”と“指導・改善”の視点で より広い業務展開になるようにして来た。社内分析機関の組織も そういう考え方の変遷につれ人員の拡充を重ね発展してきた。
また、社内分析機関とは 自主的に活動し、“問題点を把握し、解決のための計画を立案し、分析実施、結果を考察し、報告書をまとめる。これをフォローアップ/水平展開する。” というのが本来の姿であると考えている。また 得られた知見のデータ・ベースへの蓄積は企業にとっては 非常に重要であると認識している由。

“「不安」は情報不足から (「安全」≒「安心」)” と考えている。これは ジークムント・フロイトの 次の言葉に拠っている。“私たちは、正体の判っているものに恐怖を感じ、正体の判らないものに不安を感じる。”
したがって、“正確な情報の提供 or 信頼の確保” が 重要である。どちらかというと、“安心” を与えることが、企業の社会的信頼性向上に役立つと考えている、とのこと。

品質判定は ジャスト・スペックでなければならない。そして、ジャスト・スペックとなるためには技術力がなければならない。オーバー・スペックは無駄金を使っているし、アンダー・スペックはトラブル発生につながる。

“保証すべき品質=安全性+安定性+機能性” であるが、これを確実にすることで、お客様満足を得ることができる。
“商品価値は V = F/C” であると考えている。すなわち、V:価値(儲かる商品),F:機能(新鮮・驚き・感動,安全・安心・信頼・・・),C:価格(安い,利益率・・・) そこで 各部門の役割は 次のようになる。
‐ 研究開発部門の役割:機能性を上げる
‐ 分析・評価部門の役割:分析・技術的支援+安心・信頼向上

後は、安全性科学センターの役割についての説明があった。活動内容は、品質保証活動,分析・評価技術開発,試験方法開発と全社統一の「試験標準」の発行,生産品質管理支援,会社としての信頼確保活動 などとのこと。



以上で、恐縮ながら 講演で知りえたキィ・ワードの羅列を終える。
講演後の質問タイムでは、“商品価値は V = F/C”に 関して話題となったが、但馬所長は 突然 “消費者からみれば V = F*C なんでしょうネ。” と 発言されて、質問者も呆気にとられた表情だったが、私も少々混乱した。Cが コストなのか、価格Pなのか、といった定義が不明確なせいなのか、今もって講演者の真意不明なところである。
今 注目の殺虫剤入りギョウザに関する見解については、“実際上は発生率も低いので大したことではない、騒ぎ過ぎ”、というような、楽観的なムードだったように思う。その様子は何となく“不安”の残る印象であった。
繰り返し恐縮だが、他のホーム・ページでは もう少し分かり易い説明があったが、この講演では 私自身の浅学のせいか、全体に 腑に落ちない内容であった。

ISO9001あるいはHCCPなどの品質マネジメントシステムと品質保証、ひいてはリスクとの関係を サントリーではどの様に考え、それが食品業界一般の対応状況と どう関係(共通または特徴)しているのか などが 聞けるものと思っていたので、私には、若干 肩透かし的 内容であった。
この点につき、講演終了後、質問に立つべきであったが、どのような切り口が良いのか頭の中を整理している内に時間切れとなり、試飲会に移ってしまった。その後は アルコールのせいで我が低脳はさらに機能不全に陥った次第であった。
どうやら マスコミ受けのする但馬所長の講演であったにもかかわらず、当方の消化不良となったのは 我が理解力不足に歯がゆい思いが しきりであった。



コメント ( 0 ) | Trackback ( )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “ISOを活かす―... “ISOを活かす―... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。