The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
“ISOを活かす―50. 管理責任者を監査することによって、システム全体を改善する”
今回は 内部監査の指摘事項の内容についてです。
【組織の問題点】
4つの部がある会社で内部監査は、これら4つの部に、いずれも管理責任者1人が監査員として年2回実施しています。
審査機関による定期審査では、4つの部に対する指摘事項は少なくなりましたが、しかし、管理責任者への指摘事項は減っていません。このことから、この内部監査のやり方は良くないのではないか。内部監査の方法をどう変更するべきか、という課題です。
【磯野及泉のコメント】
著者・岩波氏の次の指摘は 非常にまともで 当然の考え方だと思います。
管理責任者に対して監査しないことは、“ISOの要求事項という点では不適合ではありませんが、管理責任者に対する内部監査を行った方がよいでしょう。” その理由は、管理責任者の“業務を監査することによって、品質マネジメントシステム全体の問題を見つけて、改善することができるからです。”
ここでは 管理責任者が 話題の焦点になっています。さて、品質マネジメントシステムにおける“管理責任者”の任務は何だったでしょうか。
管理責任者は トップマネジメントに代わり 品質マネジメントシステムの確立・徹底のために何でもすることになっているように思われます。したがって、規模の小さな会社では A社のような 内部監査の態様も 十分あり得ると考えられます。また こういう重要な役割の管理責任者に 監査を実施する他の社内の人には 相当な勇気が要るでしょう。
それに、組織の品質マネジメントシステムの弱点を一番良く知っているのは 管理責任者と言えるでしょう。したがって、第三者監査の審査において指摘事項が減らないのは、分かっていても手が廻っていないこともあるかも知れません。ここにISO事務局の悩みがあるのかも知れません。事務局としては 組織の体質的弱点を改善するために毎年少しづつ対処している場合もあると思われます。体質的弱点は一朝一夕では改善できないからです。そういう時に、審査機関の指摘は一気に 改善へ進める錦の御旗になる場合もあるので、意識的に指摘させていることもあるかも知れません。
それほどのISO専門家の管理責任者に社内の誰かが内部監査を実施する意味が どれほど有るのだろうという疑問も 多少あります。
管理責任者への内部監査を問題にするのなら、もっと重要な トップマネジメントへの内部監査は どうなっているのでしょうか。こちらへの監査は 問題にしなくて良いのでしょうか。
日本の ISO業界(この言い方も変ですが)では あまりトップマネジメントへの面と向かっての指摘は どういう訳か やりたがらないところがあります。関係者の 大企業サラリーマンの経験が そんな意識にさせるのでしょうか。
この点 これまでも引用して来た 加藤重信著の“ISO9001はこう使う” では 次のように述べています。“トップマネジメントの活動が適切であることが保証されないのなら、品質マネジメントシステムが成立しているかどうかが疑わしくなるわけで、この監査を実施しないというのは内部監査についての要求を満たさない恐れがあります。” しかし、“トップマネジメントに直接会う、直接話を聞くと言うことを要求しているわけではありません。活動の結果から、トップマネジメントの責任が果たされているかを監査することを求めていると言える” とも言っています。
ならば、管理責任者に対して、あるいは 各部門についても その“活動の結果から その責任が果たされているかを監査することを求めていると言える”のでしょうか。それで 内部監査の有効性が保証できるのなら、監査のテーマ次第では、それでも良いのかも知れません。
それから “中小企業のためのISO9001・何をなすべきか”では、社外の他企業の応援を求めるか、地元の組織(例 商工会議所,品質コンサルタント会社、検査機関)に 独立した監査員の提供を受けることもできる、と言っています。社外の人の監査員なら 事務局や トップマネジメントへの監査も 立場上難しくないように思われます。もちろん 内部監査員としての適切な力量を持った人を 起用する必要はあります。でなければ 明らかに不適合です。(6.2.1項)
ならば、その社外の監査員が 審査会社の審査員と どう違うのか、つまり内部監査=審査(第三者監査)と いうことが可能なのか、となってしまいます。もうここまで来ると 考え方がグチャグチャになります。ですが、恐らく “「内部監査=審査(第三者監査)」という考え方が ISO9001に適合する” という解釈を支持してくれる 審査会社は皆無でしょう。
いずれにしても、その会社にとって、内部監査は どういうスタイルですることが有効なのかと 当事者が真摯に検討し、実施することが重要なのだと思います。ISO9001でも 内部監査は 組織が自分で計画するべきである、となっています。(8.2.2項)
つまり、品質マネジメントシステムの内部監査の決まった やり方は 無い、と言えるのでしょう。どうすることが、組織にとってリスク・ミニマムとなるのか あるいは継続的改善につながるのか、良く考えるべきなのでしょう。
ISO9001は、一見 厳密な論理と要求事項で固められているようですが、このようにリスクへの評価と対処法に踏み込んでいない点が 弱点なのではないかと思っているのです。
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