The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
出口治明・著“教養としての「地政学」入門”を読んで
賃上げ、賃上げと報道は連日うるさい!
そんなの、ここへ来て急に始まったはなしでもあるまい?それに会社によって事情が違うだろうが!?
それとも ここでも“みんなで渡れば怖くないッ”?!・・・アホか?
SDGsの観点からは賃上げは当然のことではないのか?どうなの?
ここへ来て急に賃上げやって、目立とうとする企業まで出て来た。今まで分かっててサンザン搾取してきたクセに!アホらし!
ところで一体、これまで労働組合は何をしてきたのか?組合の上部団体レンゴーは存在意義があるのか?
“連合”ではなくて、非正社員との“分断”ではないのか?昔は“万国の労働者団結セヨ!”ではなかったか?
労働貴族の怠ける場所の確保を!それが存在意義なのか!
中国は人口減少だという。新聞では大騒ぎ!よその国の国内問題がどうしてこんなに大問題なのか?
中国は日本企業の市場としては既に終わっているハズ!その認識が欠けているのではないか?それとも日本企業に仕事をくれる会社は中国にあるからか?・・・アホか?
足下では“異次元の少子化対策”をヤルと息巻く首相が居た!外国の少子化より日本の少子化が重要なのは当然なのだが、何が“異次元”か?鬼面人を嚇す言葉を使っても虚しいばかりだ。そんなこと30年前から分かっていること。今更ナンヤ・・・アホか?
大勢の国会議員がいて、アァ!イソガシと言いながらナニヤッテ来たンダ?30年も同じことの繰り返し?夫婦別姓ですらできていない!こんな生産性では賃上げもムリ・・・アホか?
一番の少子化対策は当然なことに労働力層に手厚い施策だろう。そんなのアッタリ前ダロー!要は賃上げだ!何やってんだ!?・・・アホか?
アレとコレは違う話ではないのだ。アホアホ日本の象徴のような話だ!
ロシアがウクライナのマンションを破壊した。古い対艦ミサイルを使用した、とかで欧州各国政府は衝撃を受けた由。ウクライナにいよいよ最新鋭の戦車を供与すると言い出ししているという。英チャレンジャー2、独レオパルト2が俎上にのっているという。いずれも耐被弾性に優れているという。一方、ロシアの兵器は損耗が激しく、生産もおぼつかない状態の由。ロシアの攻勢に苦境がいよいよ迫るのか。
だが、肝心のドイツ政府の腰が引けているという。日本政府の腰はアタリマエのようにもっと引けている。
GYAO!が“2023年3月31日(金)午後5時をもちまして、すべてのサービスを終了いたします。”と発表した。急なことで困った!実は、このところ映画をよく見ている。その結果が、このブログでの月初の“前月の映画鑑賞報告”だった。
忙しくない時はBSシネマを見るのと、GYAO!で無料映画を無料で見ること、それにレンタルも!この両輪が可能となって“前月の映画鑑賞報告”がやれるようになった。それができなくなる訳だ。
何とか、それに替わるものを見つけたい。
さて、これまで地政学に関し、先ず佐藤優・著“地政学入門”を読もうとしたのだが、なかなか歯が立たないことが分かり、この本に紹介があった、曽村保信・著“地政学入門 改版―外交戦略の政治学”を読んでみてこのブログでも紹介した。それは主にマッキンダーを紹介していたのだが、当然のように陸の地政学が中心であった。しかし、これまで世界の覇権を握ってきたのは実は、海洋国家英・米であり、逆にマッキンダーが主張したハートランドの覇者がついに世界の覇権を握ることはなく、今や紛争を引き起こしている程度の地域での乱暴者でしかありえていない。否、彼らが生きた当時は新興ドイツが両世界大戦の核となった。そういった力を持ちえたドイツに注目するべきという警告のようなことだったのであろうか。
そこで実は“海の地政学”の方が重要なのではないかと、竹田 いさみ・著“海の地政学-覇権をめぐる400年史”を読んでみて、これもこのブログで紹介した。“海の地政学”といえば米国のマハンだが、その紹介はあっさりとしたものだったので、もう少し理解するのに何とかならないのか、という思いで読んだのが今回紹介する、出口治明・著“教養としての「地政学」入門”であった。この本の概要を例によって下記に示す。この本は、目次に示すように第5章で“地政学の二冊の古典について”にあるように、先ずマハンを紹介し、次いでマッキンダーを紹介していて、私が思うようにマハンの“海の地政学”が先であり、マッキンダーはその次であると考えているかのように思える。この本こそは、豊かな教養の中で海と陸の地政学を総合的に教示してくれる良書であった。
[内容説明]
地政学とは何か―?ナチスも利用した「悪魔の学問」ではない。ビジネスにも不可欠な「弱者の生きのびる知恵」。世界の今の見え方が変わる!
[目次]
第1章 地政学とは?(地政学の一般的な定義について;地政学の最初の一歩 ほか)
第2章 陸の地政学とは?(どうすれば自分の住む国や地域がサンドイッチの具にならずに済むか、という問題;ローマ教皇領を巡る攻防史 ほか)
第3章 海の地政学とは?(半島や海峡の重要性;最も古くから発達し、近世まで世界の中心にあった地中海のシーレーン ほか)
第4章 日本の地政学とは?(日本が置かれている地政学的な現実;これからの日本はどこと同盟を結べるのか、それとも「日本ファースト」か ほか)
第5章 地政学の二冊の古典について(マハンが着目した「シー・パワー」が与えた影響;マッキンダーはなぜ「地政学の祖」と呼ばれるのか)
[著者等紹介]
出口治明[デグチハルアキ]
立命館アジア太平洋大学(APU)学長。1948年、三重県生まれ。京都大学法学部を卒業後、1972年、日本生命保険入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当する。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006年に退職。同年、ネットライフ企画を設立し、代表取締役社長に就任。08年4月、生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険に社名を変更。12年に上場。社長、会長を10年務めた後、18年より現職
人が移動している場合には地政学は必要がない。人類は1万2千年前から何故か定住し始め、食糧を追いかけるのを止めた。“移動しなくなった人類は、隣人対策や災害対策に知恵を絞る”ようになり、“地政学的な問題を人類が抱える”ようになったのだ、ということになる。
世界最古の文明はメソポタミアで起こり、その影響を受けて次にエジプト文明が開花する。その両者の間の地域も文明化しては行くのだが、各地域の利害を巡って争いが勃発する。遂にはメソポタミアとエジプトの対戦となり、現在のシリアとレバノン国境に近いカデシュで争われた。結局は両国の間で世界最古の国際平和条約が締結されることになった、という。“楔形文字で条約文が刻まれた粘土板のレプリカが、ニュー・ヨークの国連本部に展示”されている、という。こういった、著者・出口氏の独特の語り口でこの本は始まっている。
そして、世界史は大河の近辺から始まり、メソポタミア文明を築いたシュメール人は“陸は閉じ、水は開く”ということわざを残したのだと。“定住する場所を求めたこと、求めた定住地にも苦労は生じてくること。そして結局、地理的条件に左右されること。要は、地理と人間の知恵との戦いであること。” 地政学の基本はそこにあると、著者は言う。
そして次第に世界史概論のような内容になってくる。しかし、話の流れは独特で理解しやすいものになっていて大変面白い。おおよそは、知った内容の話かと思いきや、私の知らない以下のようなエピソードもあった。
“プロイセン”という国名は、古代プル―セン人の名残なのだということを初めて知った。そして、“13世紀の間に古プロイセン人(古代プル―セン人)はドイツ騎士団によって征服され、ドイツ人により支配された。ドイツ帝国が統一される前にかつて存在した王国であるプロイセンは、バルト語派の古プロイセン地域からその名前を取り、古プロイセン語は17世紀から18世紀初頭までには消滅した。”という史実があるのだと知った次第だ。“古プロイセン語が消滅した”ということは、古代プル―セン人が絶滅させられたことを意味する。つまり、17世紀から18世紀初頭までにホロコースト(民族消滅)があったという戦慄すべき事実なのだ。ナチスドイツはそのDNAを受け継いだのだろうか。
“ヴァイキング”は“海賊”という意味ではないことも初めて知った。“語源は古ノルド語: víkingr(氷語: víkingur、フィヨルドから来たもの)。・・・スカンジナビア半島一帯に点在するフィヨルドのことをヴィークと呼んだため、その「ヴィークの人々」を指して「ヴァイキング」と呼ぶようになったと考えられている。”ということ。
そして、北海沿岸やバルト海沿岸で活発な活動を行った。海賊行為ばかりではなく、広範囲で公正な商取引も行ったという。そうしたことが都市間のハンザ(同盟)が生まれるきっかけになった、という。バルト海沿岸から上陸したヴァイキングはロシアからキーウ(キエフ)、クリミアに達したという。ロシア人に金髪がいるというのは、その影響なのだろうか。
ところで、この本の肝は“第4章 日本の地政学”にあると考えて良い。
日本のロケーションの客観的な表現は、“周辺の国々(韓、北鮮、中、露)のすべてとトラブルの火種を抱えている歴史上稀な国で、ロシア、中国という大陸の二大国家が太平洋に出て行く障害となる、絶妙な位置に列島が連なっている島国である。”となる。
そして、日本より小さな国との同盟は意味をなさないとすれば、“実効性のある同盟を結べる国は、世界に3つしかない”。米国、中国、EUである。
その3つの何処との同盟が最適か。米国との同盟は現状を見れば分かる。中国との同盟は2,3位連合で対米には意味があると考えられるが、社会主義との連合となり、歴史的にも問題が多くなかなかしっくりしないだろう。EUとは地理的に遠すぎるし、その軍事力は米国には及ばない。
或いは、名誉ある孤立(著者は“日本ファースト”と呼ぶ)か。日本が核武装し“自己充足的に世界から距離をとって平和に存在し得た時代、つまり鎖国時代のありかたに近づける”のがよいのではないか。だが、これは凋落しつつある日本の経済力では非常に困難で無理な話であり、現実的ではない。
となれば現状がベストの選択となる。“みずからは核保有を行わず、アメリカの核の傘に入り、仲良くやっていくという方向”となるのだ。“このことをしっかり受け止めていくしかない”と著者は指摘する。その上で、“日本にとってのパートナーは、どうやらアメリカ一人という状況の中で、アメリカのパートナーは決して日本一人ではない”という現実があることをしっかりと受け止めるべきだと著者は警告する。“それが日本の地政学的な現実”である、と。
米国人と中国人は本来的によく似ていて親しくなりやすいと私も思っている。例えば、両方とも声が大きく騒がしい人々で自己アッピールが強い。だから親近感を抱きやすいだろうと思っている。戦前、米国人は親中であったのはそこにも原因があると思うのだ。
それに著者の指摘によれば、日本からアメリカへの留学生は1995年には5万人を超えていたが、中国からアメリカに行っているのは4万人だった。それが現在、日本からアメリカには2万人以下、中国からは37万人を超えている、という。これが将来的な紐帯の核となる可能性は大いにあるとのことだ。しかも両国間には現在も規模の大きな交易関係があり、米国の国債を一番保有しているのは中国である。過去には突然のニクソン訪中もあった、それ以外に過去にも米国のアジアでの同盟相手に中国を選択する機会はあったと考えると“ある日突然に米中同盟が成立しても意外ではない”とも言っている。それへの対応が日本のリスク管理であろうとの指摘だ。
第5章ではマハンとマッキンダーを紹介している。
“マハンは海軍の軍人である立場から、強力な軍事力は単なる軍事的なパワーとしてのみ存在するのではなく、海洋国家の繁栄と平和と共にあるのだと主張した”。“シー・パワーは平和を保証する「堅確な基盤」であるから、強力であることが求められるという論理に帰結”する。“海賊や敵国が商船隊を襲ったり、海上交通を遮断したりしたら、これを徹底的な砲撃によって阻止しなければならない。”これがマハンのシンプルな主張だという。そして、真実とはシンプルであることも事実だと指摘する。そして、旧海軍はマハンを都合よく援用したことを説明している。
マッキンダーは単なる地政学の始祖ではないと著者は指摘する。彼独自の文明論の一部として地政学を論じていると見るべきなのだろう。その点で、世間が受け止めるマッキンダー理解は地政学に傾きすぎていて浅いような気がする。
著者はマッキンダーの著書『デモクラシーの理想と現実』を詳細に紹介している。この本は、1919年に公刊されており、第一次世界大戦が終結した翌年であり、ヴェルサイユ条約が締結された年である。したがって、その目的は“第一次世界大戦の原因と結果についての分析と、新たに設置されようとしている国際連盟に対する期待と不安、および求められる現実についての主張に、大きなウェイトが掛かっていた”はずだという。
“国際連盟を実現させることは、フランス革命の自由・平等・博愛の三大原則を国際社会に持ち込むことである。そのことを諸国家で実現させるためには、各国に対して連盟がある程度の管理を行わねばならない。そうすることによって、諸国家が均整のとれた発達を遂げることが、国際連盟の理想となる”とマッキンダーは考えた。そして次のように続けるという。
「各国が均整の取れた発達をとげるという理想のなかに、われわれは博愛の理念にふくまれた自己抑制の原理を見るおもいがする。均整のとれた発達をしない国家は、やがて必ず独特な飢えの状態に見舞われる。これは不注意の結果でもあり、また時としてわざと犯罪的にされることもある。が、いずれにしても、その飢えは他国民の犠牲においてしか満たされない。」
まるで、今のロシアや中国についての指摘のように思える。そして“マッキンダーはこのような「飢えの状態」にある国家の暴走を無くすには、その国内における管理と同時に外からの管理を加えることが必要なのだ、と述べ”ている。そして“それが国際連盟の役割なのだ”と。全くその通りなのだが、今の国際連合UNでもロシアや中国の身勝手を黙認せざるを得ないのが現実なのだ。
そしてマッキンダーは、内政について“国家も一種の地域社会であるから、それを永続させたいのであれば、その組織は国家のなかに存在する地域的な共同体(コミュニティー)を母体とするものであること―そのことが求められる。国家全体の利害を基本にしてはいけないのだと強調”しているという。
共同体(コミュニティー)という曖昧な概念ではなく、ここでは都市自治体と言い直して、現代国家は都市自治体連合に組み直すことが、民主主義社会の共通理念になるべきなのだろう。念を押すように著者はさらにマッキンダーの言葉を引用している。それが地政学という言葉を使わなかったマッキンダーの思いだったのだろう。
「隣人としての感覚、および仲間の住民にたいする友誼的な義務感、これが幸福な市民生活のための唯一の確実な基礎である。その結果は、やがて町から地方を通じて国にまで発展し、ついには世界の国際連盟にまで及ぶだろう。貧乏人のスラム生活も金持ちの退屈も、階級間や国家間の戦争も、たぶんみなこれによって解消できるはずだ。」
しかし、マッキンダーの言うハートランドは今にいたり発展し終えたのだろうか。交通網の発展は既に及んでいると思われるのだが。そして、「飢えの状態」にある国家の暴走だけが見られ、未だに海洋国家の覇権が結構有効なままなのだが。
これで、ようやく佐藤優・著“地政学入門”が読めるようになったのだろうか。いよいよこの本にチャレンジ・トライするべきなのだろう。
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そんなの、ここへ来て急に始まったはなしでもあるまい?それに会社によって事情が違うだろうが!?
それとも ここでも“みんなで渡れば怖くないッ”?!・・・アホか?
SDGsの観点からは賃上げは当然のことではないのか?どうなの?
ここへ来て急に賃上げやって、目立とうとする企業まで出て来た。今まで分かっててサンザン搾取してきたクセに!アホらし!
ところで一体、これまで労働組合は何をしてきたのか?組合の上部団体レンゴーは存在意義があるのか?
“連合”ではなくて、非正社員との“分断”ではないのか?昔は“万国の労働者団結セヨ!”ではなかったか?
労働貴族の怠ける場所の確保を!それが存在意義なのか!
中国は人口減少だという。新聞では大騒ぎ!よその国の国内問題がどうしてこんなに大問題なのか?
中国は日本企業の市場としては既に終わっているハズ!その認識が欠けているのではないか?それとも日本企業に仕事をくれる会社は中国にあるからか?・・・アホか?
足下では“異次元の少子化対策”をヤルと息巻く首相が居た!外国の少子化より日本の少子化が重要なのは当然なのだが、何が“異次元”か?鬼面人を嚇す言葉を使っても虚しいばかりだ。そんなこと30年前から分かっていること。今更ナンヤ・・・アホか?
大勢の国会議員がいて、アァ!イソガシと言いながらナニヤッテ来たンダ?30年も同じことの繰り返し?夫婦別姓ですらできていない!こんな生産性では賃上げもムリ・・・アホか?
一番の少子化対策は当然なことに労働力層に手厚い施策だろう。そんなのアッタリ前ダロー!要は賃上げだ!何やってんだ!?・・・アホか?
アレとコレは違う話ではないのだ。アホアホ日本の象徴のような話だ!
ロシアがウクライナのマンションを破壊した。古い対艦ミサイルを使用した、とかで欧州各国政府は衝撃を受けた由。ウクライナにいよいよ最新鋭の戦車を供与すると言い出ししているという。英チャレンジャー2、独レオパルト2が俎上にのっているという。いずれも耐被弾性に優れているという。一方、ロシアの兵器は損耗が激しく、生産もおぼつかない状態の由。ロシアの攻勢に苦境がいよいよ迫るのか。
だが、肝心のドイツ政府の腰が引けているという。日本政府の腰はアタリマエのようにもっと引けている。
GYAO!が“2023年3月31日(金)午後5時をもちまして、すべてのサービスを終了いたします。”と発表した。急なことで困った!実は、このところ映画をよく見ている。その結果が、このブログでの月初の“前月の映画鑑賞報告”だった。
忙しくない時はBSシネマを見るのと、GYAO!で無料映画を無料で見ること、それにレンタルも!この両輪が可能となって“前月の映画鑑賞報告”がやれるようになった。それができなくなる訳だ。
何とか、それに替わるものを見つけたい。
さて、これまで地政学に関し、先ず佐藤優・著“地政学入門”を読もうとしたのだが、なかなか歯が立たないことが分かり、この本に紹介があった、曽村保信・著“地政学入門 改版―外交戦略の政治学”を読んでみてこのブログでも紹介した。それは主にマッキンダーを紹介していたのだが、当然のように陸の地政学が中心であった。しかし、これまで世界の覇権を握ってきたのは実は、海洋国家英・米であり、逆にマッキンダーが主張したハートランドの覇者がついに世界の覇権を握ることはなく、今や紛争を引き起こしている程度の地域での乱暴者でしかありえていない。否、彼らが生きた当時は新興ドイツが両世界大戦の核となった。そういった力を持ちえたドイツに注目するべきという警告のようなことだったのであろうか。
そこで実は“海の地政学”の方が重要なのではないかと、竹田 いさみ・著“海の地政学-覇権をめぐる400年史”を読んでみて、これもこのブログで紹介した。“海の地政学”といえば米国のマハンだが、その紹介はあっさりとしたものだったので、もう少し理解するのに何とかならないのか、という思いで読んだのが今回紹介する、出口治明・著“教養としての「地政学」入門”であった。この本の概要を例によって下記に示す。この本は、目次に示すように第5章で“地政学の二冊の古典について”にあるように、先ずマハンを紹介し、次いでマッキンダーを紹介していて、私が思うようにマハンの“海の地政学”が先であり、マッキンダーはその次であると考えているかのように思える。この本こそは、豊かな教養の中で海と陸の地政学を総合的に教示してくれる良書であった。
[内容説明]
地政学とは何か―?ナチスも利用した「悪魔の学問」ではない。ビジネスにも不可欠な「弱者の生きのびる知恵」。世界の今の見え方が変わる!
[目次]
第1章 地政学とは?(地政学の一般的な定義について;地政学の最初の一歩 ほか)
第2章 陸の地政学とは?(どうすれば自分の住む国や地域がサンドイッチの具にならずに済むか、という問題;ローマ教皇領を巡る攻防史 ほか)
第3章 海の地政学とは?(半島や海峡の重要性;最も古くから発達し、近世まで世界の中心にあった地中海のシーレーン ほか)
第4章 日本の地政学とは?(日本が置かれている地政学的な現実;これからの日本はどこと同盟を結べるのか、それとも「日本ファースト」か ほか)
第5章 地政学の二冊の古典について(マハンが着目した「シー・パワー」が与えた影響;マッキンダーはなぜ「地政学の祖」と呼ばれるのか)
[著者等紹介]
出口治明[デグチハルアキ]
立命館アジア太平洋大学(APU)学長。1948年、三重県生まれ。京都大学法学部を卒業後、1972年、日本生命保険入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当する。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006年に退職。同年、ネットライフ企画を設立し、代表取締役社長に就任。08年4月、生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険に社名を変更。12年に上場。社長、会長を10年務めた後、18年より現職
人が移動している場合には地政学は必要がない。人類は1万2千年前から何故か定住し始め、食糧を追いかけるのを止めた。“移動しなくなった人類は、隣人対策や災害対策に知恵を絞る”ようになり、“地政学的な問題を人類が抱える”ようになったのだ、ということになる。
世界最古の文明はメソポタミアで起こり、その影響を受けて次にエジプト文明が開花する。その両者の間の地域も文明化しては行くのだが、各地域の利害を巡って争いが勃発する。遂にはメソポタミアとエジプトの対戦となり、現在のシリアとレバノン国境に近いカデシュで争われた。結局は両国の間で世界最古の国際平和条約が締結されることになった、という。“楔形文字で条約文が刻まれた粘土板のレプリカが、ニュー・ヨークの国連本部に展示”されている、という。こういった、著者・出口氏の独特の語り口でこの本は始まっている。
そして、世界史は大河の近辺から始まり、メソポタミア文明を築いたシュメール人は“陸は閉じ、水は開く”ということわざを残したのだと。“定住する場所を求めたこと、求めた定住地にも苦労は生じてくること。そして結局、地理的条件に左右されること。要は、地理と人間の知恵との戦いであること。” 地政学の基本はそこにあると、著者は言う。
そして次第に世界史概論のような内容になってくる。しかし、話の流れは独特で理解しやすいものになっていて大変面白い。おおよそは、知った内容の話かと思いきや、私の知らない以下のようなエピソードもあった。
“プロイセン”という国名は、古代プル―セン人の名残なのだということを初めて知った。そして、“13世紀の間に古プロイセン人(古代プル―セン人)はドイツ騎士団によって征服され、ドイツ人により支配された。ドイツ帝国が統一される前にかつて存在した王国であるプロイセンは、バルト語派の古プロイセン地域からその名前を取り、古プロイセン語は17世紀から18世紀初頭までには消滅した。”という史実があるのだと知った次第だ。“古プロイセン語が消滅した”ということは、古代プル―セン人が絶滅させられたことを意味する。つまり、17世紀から18世紀初頭までにホロコースト(民族消滅)があったという戦慄すべき事実なのだ。ナチスドイツはそのDNAを受け継いだのだろうか。
“ヴァイキング”は“海賊”という意味ではないことも初めて知った。“語源は古ノルド語: víkingr(氷語: víkingur、フィヨルドから来たもの)。・・・スカンジナビア半島一帯に点在するフィヨルドのことをヴィークと呼んだため、その「ヴィークの人々」を指して「ヴァイキング」と呼ぶようになったと考えられている。”ということ。
そして、北海沿岸やバルト海沿岸で活発な活動を行った。海賊行為ばかりではなく、広範囲で公正な商取引も行ったという。そうしたことが都市間のハンザ(同盟)が生まれるきっかけになった、という。バルト海沿岸から上陸したヴァイキングはロシアからキーウ(キエフ)、クリミアに達したという。ロシア人に金髪がいるというのは、その影響なのだろうか。
ところで、この本の肝は“第4章 日本の地政学”にあると考えて良い。
日本のロケーションの客観的な表現は、“周辺の国々(韓、北鮮、中、露)のすべてとトラブルの火種を抱えている歴史上稀な国で、ロシア、中国という大陸の二大国家が太平洋に出て行く障害となる、絶妙な位置に列島が連なっている島国である。”となる。
そして、日本より小さな国との同盟は意味をなさないとすれば、“実効性のある同盟を結べる国は、世界に3つしかない”。米国、中国、EUである。
その3つの何処との同盟が最適か。米国との同盟は現状を見れば分かる。中国との同盟は2,3位連合で対米には意味があると考えられるが、社会主義との連合となり、歴史的にも問題が多くなかなかしっくりしないだろう。EUとは地理的に遠すぎるし、その軍事力は米国には及ばない。
或いは、名誉ある孤立(著者は“日本ファースト”と呼ぶ)か。日本が核武装し“自己充足的に世界から距離をとって平和に存在し得た時代、つまり鎖国時代のありかたに近づける”のがよいのではないか。だが、これは凋落しつつある日本の経済力では非常に困難で無理な話であり、現実的ではない。
となれば現状がベストの選択となる。“みずからは核保有を行わず、アメリカの核の傘に入り、仲良くやっていくという方向”となるのだ。“このことをしっかり受け止めていくしかない”と著者は指摘する。その上で、“日本にとってのパートナーは、どうやらアメリカ一人という状況の中で、アメリカのパートナーは決して日本一人ではない”という現実があることをしっかりと受け止めるべきだと著者は警告する。“それが日本の地政学的な現実”である、と。
米国人と中国人は本来的によく似ていて親しくなりやすいと私も思っている。例えば、両方とも声が大きく騒がしい人々で自己アッピールが強い。だから親近感を抱きやすいだろうと思っている。戦前、米国人は親中であったのはそこにも原因があると思うのだ。
それに著者の指摘によれば、日本からアメリカへの留学生は1995年には5万人を超えていたが、中国からアメリカに行っているのは4万人だった。それが現在、日本からアメリカには2万人以下、中国からは37万人を超えている、という。これが将来的な紐帯の核となる可能性は大いにあるとのことだ。しかも両国間には現在も規模の大きな交易関係があり、米国の国債を一番保有しているのは中国である。過去には突然のニクソン訪中もあった、それ以外に過去にも米国のアジアでの同盟相手に中国を選択する機会はあったと考えると“ある日突然に米中同盟が成立しても意外ではない”とも言っている。それへの対応が日本のリスク管理であろうとの指摘だ。
第5章ではマハンとマッキンダーを紹介している。
“マハンは海軍の軍人である立場から、強力な軍事力は単なる軍事的なパワーとしてのみ存在するのではなく、海洋国家の繁栄と平和と共にあるのだと主張した”。“シー・パワーは平和を保証する「堅確な基盤」であるから、強力であることが求められるという論理に帰結”する。“海賊や敵国が商船隊を襲ったり、海上交通を遮断したりしたら、これを徹底的な砲撃によって阻止しなければならない。”これがマハンのシンプルな主張だという。そして、真実とはシンプルであることも事実だと指摘する。そして、旧海軍はマハンを都合よく援用したことを説明している。
マッキンダーは単なる地政学の始祖ではないと著者は指摘する。彼独自の文明論の一部として地政学を論じていると見るべきなのだろう。その点で、世間が受け止めるマッキンダー理解は地政学に傾きすぎていて浅いような気がする。
著者はマッキンダーの著書『デモクラシーの理想と現実』を詳細に紹介している。この本は、1919年に公刊されており、第一次世界大戦が終結した翌年であり、ヴェルサイユ条約が締結された年である。したがって、その目的は“第一次世界大戦の原因と結果についての分析と、新たに設置されようとしている国際連盟に対する期待と不安、および求められる現実についての主張に、大きなウェイトが掛かっていた”はずだという。
“国際連盟を実現させることは、フランス革命の自由・平等・博愛の三大原則を国際社会に持ち込むことである。そのことを諸国家で実現させるためには、各国に対して連盟がある程度の管理を行わねばならない。そうすることによって、諸国家が均整のとれた発達を遂げることが、国際連盟の理想となる”とマッキンダーは考えた。そして次のように続けるという。
「各国が均整の取れた発達をとげるという理想のなかに、われわれは博愛の理念にふくまれた自己抑制の原理を見るおもいがする。均整のとれた発達をしない国家は、やがて必ず独特な飢えの状態に見舞われる。これは不注意の結果でもあり、また時としてわざと犯罪的にされることもある。が、いずれにしても、その飢えは他国民の犠牲においてしか満たされない。」
まるで、今のロシアや中国についての指摘のように思える。そして“マッキンダーはこのような「飢えの状態」にある国家の暴走を無くすには、その国内における管理と同時に外からの管理を加えることが必要なのだ、と述べ”ている。そして“それが国際連盟の役割なのだ”と。全くその通りなのだが、今の国際連合UNでもロシアや中国の身勝手を黙認せざるを得ないのが現実なのだ。
そしてマッキンダーは、内政について“国家も一種の地域社会であるから、それを永続させたいのであれば、その組織は国家のなかに存在する地域的な共同体(コミュニティー)を母体とするものであること―そのことが求められる。国家全体の利害を基本にしてはいけないのだと強調”しているという。
共同体(コミュニティー)という曖昧な概念ではなく、ここでは都市自治体と言い直して、現代国家は都市自治体連合に組み直すことが、民主主義社会の共通理念になるべきなのだろう。念を押すように著者はさらにマッキンダーの言葉を引用している。それが地政学という言葉を使わなかったマッキンダーの思いだったのだろう。
「隣人としての感覚、および仲間の住民にたいする友誼的な義務感、これが幸福な市民生活のための唯一の確実な基礎である。その結果は、やがて町から地方を通じて国にまで発展し、ついには世界の国際連盟にまで及ぶだろう。貧乏人のスラム生活も金持ちの退屈も、階級間や国家間の戦争も、たぶんみなこれによって解消できるはずだ。」
しかし、マッキンダーの言うハートランドは今にいたり発展し終えたのだろうか。交通網の発展は既に及んでいると思われるのだが。そして、「飢えの状態」にある国家の暴走だけが見られ、未だに海洋国家の覇権が結構有効なままなのだが。
これで、ようやく佐藤優・著“地政学入門”が読めるようになったのだろうか。いよいよこの本にチャレンジ・トライするべきなのだろう。
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