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“ISOを活かす―52. ISO認証取得によって、顧客の監査対応が楽になる”


今回は ISO9001認証取得が顧客監査受審の負担軽減につながるか、という問題です。

【組織の問題点】
最近ISO9001認証を取得したA社では、今まで顧客の監査を年数回受けています。顧客の監査の都度、顧客要求の資料を用意しているのですが、顧客の要求が少しずつ異なるためその作業負荷が多大になっています。
A社はISO認証を活用して、顧客の監査対応の負担を減らすことが可能か、という課題の設定です。

【磯野及泉のコメント】
著者・岩波氏が この本を上梓した頃と今とでは ISO9001認証取得に対する感覚が その後変化してきているように感じます。つまり、総体的にISO9001への世間の信認が低下しているためか、ここで、言われているほど ISO9001認証取得によって 顧客による第二者監査の負担が 目に見えて軽くなるということは あまりないように思うのですが、いかがでしょうか。

顧客が要求する資料は 大抵は ISO9001で要求している資料と重なるものが多いものです。考えてみれば当然のことなのですが、ISO9001とは異なる表現で要求をしている場合が多いので、一見 違うように思えることがありますが、よく整理して考え直して見ると 既にある資料で間に合うのがほとんどではないでしょうか。念のため要求する顧客に それが使えないか尋ねてみるべきです。大抵は 了承してくれるでしょう。
しかし、そうだからと言って、顧客が監査に来ないということはないと思います。何故か。それはISO9001は 要求事項の最低限のレベルを満足していれば 良いからです。顧客は それでは不安を感じているのです。
そして監査があれば必ず宿題が できます。真面目な人が監査員をやると何か指摘しないと不安になるものらしいので、逆に、指摘するスキを見せることも 対顧客の高等テクニックだと思われます。したがって、それなりに 宿題もでき、負担が生じるものです。これは ある程度 しかたないことだと思われます。

ISO/TS16949の場合は 認証を取得すれば そのための顧客監査を省略するということはあるようです。ですが、費用対効果という観点で考えてみると、管理システムが必要以上に重たくなる印象があり、認証取得のためのコンサルタントや認証審査などのコストがISO9001に比べて非常に高いこともあり、ISO/TS16949の認証取得はシンドイだけ、という印象です。多少 面倒でも 顧客の第二者監査を受け入れ、顧客固有のミニマム要求事項で 了承していただくのが 中小企業には良いように思います。ISO/TS16949の全ての膨大な追加的要求事項を満足させるだけでも コスト負担はかなりになる危険性がありますので要注意でしょう。
なので自動車メーカーに直接納入する いわゆるTIER1以外に分類される事業者であれば 無理にISO/TS16949認証取得をしなくても 良いように思います。ISO/TS16949の認証と言っても 結局は それをベースにした追加的要素の多い顧客要求事項CSR*が重要視されるからです。とどのつまりは ISO9001ベースから追加的顧客固有要求事項CSRを満足させるのとあまり変わりないのではないでしょうか。

*Customer Specific Requirements

こうなるとISO9001も 第三者監査(審査)による認証は放棄し、顧客の第二者監査をタダでやってもらう手も無きにしもあらず、です。あるいは、自己宣言という手もあります。いかなる場合もISO9001ベースからの追加的顧客固有要求事項も満足させる必要は あるでしょう。
最近聞いた噂話では、ISO9001認証を取得していたある優秀な会社が、第三者監査(審査)では 全く指摘をもらわなくなったので、その認証は役に立たないと考え、認証審査を受審せず 自己宣言で済ますようになった、という例もあるそうです。その会社は ISO9001認証を止めたため、私の大先輩のISOコンサルタントに“付加価値審査”を依頼してきたのだそうです。
自己宣言や顧客の第二者監査は 費用はかかりません。むしろ ISO9001の第三者監査(審査)による認証などというやり方は 自分たちのビジネスには素人の者に審査してもらうというスキームなので、それ自体に無理があるような気もするのです。だから 返って無駄が多いのでしょう。最近 特にそのように思うようになってきています。

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