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リチウム電池の将来性

最近、リチウム電池は発火事故を頻発させています。したがって、安全性を厳しく評価する自動車向製品としてはリチウム電池は不適切と考えられているに違いありません。その中で、産業技術総合研究所関西センターが研究講演会・第3回UBIQENフォーラムを “リチウム2次電池の新展開~次世代クリーンエネルギー自動車~”と 題して 先週 大阪で開催しました。
私も、身近な製品に関わるテーマですので 聴講に赴きました。

冒頭、本テーマは 国家的技術開発戦略において次のような大きな意義を持っているとの挨拶がありました。
①次代の自動車産業を支えるキィ・テクノロジーである。
②安全・エネルギー・環境に関連する社会構造を転換するようなコア技術(電源構成の平準化)である。
(ついでながら、この場で 驚愕の安倍首相の辞任の報が 告げられたのです。)

[開催挨拶]産総研関西センター所長 請川孝次 氏
[基調講演]
“次世代クリーンエネルギー自動車への展望”
                  慶応大院・政策メディア研究科 石谷 久 教授
[招待講演]
“次世代クリーンエネルギー自動車に関わる政策の概要”
                    経産省自動車課 野田智輝 技術係長
[研究講演]
①“リチウム2次電池材料開発及び寿命評価”
                        産総研 辰巳国昭 研究Gr長
②“リチウム2次電池用難燃性電解液としてのイオン液体の可能性”
                        産総研松本 一 主任研究員
③“次世代リチウムイオン電池用合金系負極の開発とナノ材料技術”
                        産総研 境 哲男 研究Gr長

基調講演・招待講演の主旨は以下の通りでした。
エネルギー消費の運輸部門の占める割合は大きく(日本:25%,北米:30~40%)、輸送形態では鉄道を越えて自動車が急激に増加しているため、CO2対策としての自動車エネルギーのクリーン化は 非常に重要である。
自動車の類型としては様々なものが考えられるが、最終的に目指すのは電気自動車(BEV)であり、次が燃料電池車(FCV)である。電気エネルギーの供給源としては、原子力は不可欠であり、自然エネルギーは主力たりえない。
自動車排ガス規制は既に限界に来ており、燃費の改善を通じてのCO2・50%削減(サミット等で07年基準)を 目標に変化している。燃費改善は自動車単体だけでなく、タイヤやエアコン,バイオ燃料も視野に入れており、多様な技術で対応することが日本の戦略(米国はバイオ・エタノール,欧州は、クリーン・ディーゼルとバイオ燃料)となっている。即ち、バイオ・シフト,電力シフト,ディーゼル・シフト,IT化が その技術である。*IT化は交通流の効率化により省エネを狙う。(車の平均速度が1km/h向上すると燃費は約1%向上すると言われている。東京18.8km/hに対し、パリ:26km/h,ロンドン:30km/h**)

[筆者注]
*総花的だが 資源の無い日本としては致し方ないないのだろう。
**日本にロータリー交差点が無いためか?横断歩道の有り方も問題だろう。

経産省の描く日本の戦略テーマは以下の通り。
戦略1:バッテリー(次世代自動車バッテリー)
戦略2:水素・燃料電池(燃料電池技術開発とインフラ整備)
戦略3:クリーン・ディーゼル(低燃費・クリーン化)
戦略4:バイオ燃料(「安心・安全・公正」な拡大と第二世代バイオ)
戦略5:世界一やさしいクルマ社会構想(ITを活用した世界一やさしいクルマ社会の構築)

バッテリーの開発ではリチウム電池がその中核技術であり、2030年に性能(容量)を現状の7倍、コストを1/40にすることを目標としている。バイオ燃料は高価格(ガソリン57.9円/ℓに対し、国産さとうきび90.4円/ℓ,国産コメ94.0円/ℓ,ブラジル産エタノール72.9円/ℓ)であり、バイオ燃料としてコスト競争力があるのはブラジルだけであるとのこと。そうなると、石油の中東依存同様、バイオ燃料のブラジル依存となる問題が生じ、さらに食料とのバッティングの問題もある。
特に、充電用電力の電源構成についての質問に対し、石谷教授は 原発40%が目標。安全な運転が必要不可欠で、人口稠密地域では 将来必須の前提条件と考えられる、と答弁されていました。

以上の基調講演等に引き続き 産総研からリチウム2次電池の 性能(容量UP)向上、安全性改善への研究開発報告があり、日本のこの方面での国家戦略と開発体制が整然と機能していることが 推測できました。

特に日本の将来の電源構成について、CO2対策から原子力発電は不可欠であり、交通手段として大きな比重を占める自動車の将来像は 電気自動車または燃料自動車と考えられていることが解りました。また、バイオ燃料は 私が考えるように問題の多いものであることも 改めて確認できました。また電源を支える技術として 当面は リチウム2次電池の安全性や能力向上は 開発要素として必要不可欠であることも理解できました。
ですが、原子力発電についても それをエネルギーの基本政策に加えるのであれば、その安全性確保のための技術開発、管理システムの再検討などを さらに推進しなければならないだろうが、現状はどうなのだろう。そして、国家のエネルギー戦略としては 原発が本流であって、本セミナーでのテーマは むしろ支流ではないのだろうかとの思いも よぎるのです。




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