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神戸大学“東日本大震災支援・調査活動報告会”を聴講して

神戸大学の震災復興に関わる活動報告会シリーズを これまで4回ほど聴講してきている。これは大阪の大学でリスクマネジャ養成プログラムを受講で知り合った地元神戸の地域活動のリーダをしている人に教えてもらったものだ。
考えてみれば、神戸は結構災害の多い都市であり、そのせいか神戸大学が防災と復興に興味を持ち、研究対象とするのは当然なのかも知れない。私も、今回の震災は日本社会の曲がり角に生じた天災であり、復興のありようによって日本の将来に大きな影響を与える要因となると思っていたので、そうした大学が被災地にどのようにアプローチして何を調査し、問題点と方向性をどのように示してくれるのか、興味深々であったので、いそいそと出掛けることにした。

神大のキャンパスは六甲山系の中腹にあり、眼下に神戸市街地を見下ろす絶好の地にある。まさしく、“♪栄華の巷下に見て~”のロケーションである。学問の府にはこうした俗に目見えない、不即不離である気概・気風が一面においては必要なのだ、とはある人の指摘だが、あの適塾でも塾生が勉学の合間に物干し台に上がって大坂の繁華街を睥睨していたということを思い出す。神大のロケーションは、はるかに雄大なランド・ビューと言うより海への眺望である。
80年代には当時勤務していた会社の社宅が その真下の阪神沿線にあり、そこに居住していたことがあり、週末には散歩にも来ていたことがあった。当時そのキャンパスの雰囲気に触れて、学生時代を思い出し、人生の最後のステージを大学で過ごせればどんなに仕合せだろうかと密かに思ったりしたものだった。今となっては それも見果てぬ夢に終わりそうだ。とにかくそういう気持ちが 当時、経済学部、経営学部の市民公開講座を修了に向かわせたものだった。あの小泉元首相が英国の名門大学の市民講座修了で、“留学したと僭称”しているとのスキャンダルが出回ったこともあったが、その伝で言えば、私は 京大の単位も取得しているので、京阪神大学出身と称しても構わないのではないかと周囲に自慢して、呆れられたこともあった。

この報告会は神大の工学系の都市安全研究センターが主催で、これまでの講演は神大会館(神戸大学百年記念館)六甲ホールや工学部の講義棟で行われている。百年記念館は80年代散歩に来た当時はまだ無かったが、その場所は六甲台の縁にあり、大阪湾をまともに見下ろすところにあり、スマートな印象の建物である。特に 中央エントランス・ホールの海側への開口部は絶景である。
だが、その東側の脇に ひっそりと山口誓子記念館があり、意識しないと見落としてしまいそうな存在となっている。これは、“阪神淡路大震災で倒壊した旧誓子邸母屋の面影をほぼ忠実に復元したもの”とのことだが、もう少し、神大会館との相互存在感を尊重して建設するべきではなかったか、と残念に思うのだ。誓子記念館は確かに戦前の木造建築を“ほぼ忠実に復元したもの”で今は全く見られない雨戸などのあり様に若干懐かしさを覚える。この記念館では 誓子に関連する資料を収集・保管をしているようだが、一般には句会や茶会を催すための使用も認めているようで、事実始めて訪れた時、何の表示もなかったので最初は気付かなかったのだが、何やら年配者が集まっていたが句会が始まるところのようだった。



さてさて、前置きが長くなりすぎた。私の聴講した“活動報告会”は 下記のような内容で開催されている。
第1回 [場所]神大会館六甲ホール;5月19日9:00~12:00
(1)津波火災の発生状況と津波・火災への対応行動についての事例報告―岩手県山田町・大槌町、宮城県気仙沼市・石巻市等での現地調査を中心として―
北後明彦(都市安全研究センター)
(2)三陸沿岸地域の避難、仮設住宅での生活に向けて必要なこと―災害時要援護者の観点から―
大西一嘉(工学研究科建築学専攻)
(3)岩手県大槌町と陸前高田市の災害ボランティア活動と避難所についての報告―「遠野まごころネット」での神大学生ボランティアの活動から
藤室玲治(都市安全研究センター)
(4)アーキエイドと気仙沼における復興支援計画―東日本大震災における建築家による復興支援ネットワーク(アーキエイド)―
槻橋 修(工学研究科建築学専攻)
(5) 東日本大震災における災害復興計画策定の現場からの報告―震災からのよりよき復興に向けて―
塩崎賢明(工学研究科建築学専攻)

第3回 [場所]工学研究科C1―301;5月28日14:00~17:00
(1)保育所・小学校における幼児・生徒の津波避難誘導―事例発生箇所の確認を通じて―
ピニェイロ・アベウ(工学研究科建築学専攻)
(2)津波火災発生状況と消火活動・避難行動調査報告―岩手県山田町船越・田の浜地区を事例として―
池之内裕子(国際協力研究科)
(3)福島原子力緊急避難における周辺自治体の対応プロセスについて―地震発生から一次避難まで―
西野智研(工学研究科建築学専攻)
(4)避難所調査から見た生活復興のための被災地支援の課題
林 大造(都市安全研究センター)

第4回 [場所]神大会館六甲ホール;6月23日9:00~13:00
(1)宮古市の港湾・臨海地区の被害状況調査
前野史朗(海事科学研究科)
(2)東日本大震災における保健医療・社会福祉施設の被害と対応行動
小田利勝(人間発達環境学研究科)
(3)災害応急支援における被災者ニーズ
金子由芳(国際協力研究科)
(4)東日本大震災による歴史環境における被害と問題点
足立裕司(工学研究科建築学専攻)
(5)被災地での地域歴史遺産保全活動・震災記録保存活動とその課題
奥村 弘(人文学研究科)
(6)大船渡における学生ボランティア活動
高尾千秋(人間発達環境学研究科)
(7)津波による地盤汚染に関する調査結果
飯塚 敦(都市安全研究センター)

第5回 [場所]工学研究科C1―301;6月25日13:00~17:00
(1)復興都市計画について―釜石市を事例として―
平山洋介(人間発達環境学科)
(2)東日本大震災の地震の概要と津波波高分布について
吉岡祥一(都市安全研究センター)
(3)高所への避難でいのちを守る―現地聞き取り調査からの考察―
林 能成(関西大学社会安全学部)
(4)地震動および津波による建築構造物の被害
藤永 隆(都市安全研究センター)

第2回はどうしたのか、不思議にあまり記憶がないのだが いつの間にか第5回を迎えている。これからの予定は7月2日13:00~16:00工学研究科C1-301、7月15日18:30~20:30工学研究科C3-302、8月20日午後 神大会館六甲ホール で予定されている。

発表内容は 当初は事実関係についてのものが多く、中には院生の報告もあった。しかし、一般には報道機関の“東京”経由のバイアスのかかった内容でしか知ることができていないが、直接見聞きした人による報告なので価値あるものと感じられた。これからいよいよ“だんだん良くなる法華の太鼓”、震災後の問題点の整理、その背景や分析の報告が多くなるのではないかと想像される。復興のあり方について、“神戸”の経験を踏まえてしっかり分析して提言していただきたい。

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