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“マグロ禁輸”の否決に絡んで

ドーハでのワシントン条約締約国会議においてマグロの禁輸が否決されて 農水大臣は大変喜んでいた。はしゃいでいるようにすら見えた。
ほとんど可決されるものと“読んで”いた結果が否決され、良い方に見込み違いとなったのだから そういう反応もありうるか、とは思うが、一国の代表者としての対応としては いかがなものか、と思うのだ。

日本の その場限りの“ノー天気な”対応に対し、中国は アジア、アフリカ諸国への影響力を さらに見せ付けたのだ。小沢環境大臣は的確にも そういうコメントをしていた。
日本では マスコミを含めて誰も今回の否決の “読み”が 全くできていなかったのだ。途上国側の国益に 乗ることができただけで、偶然任せ、他人任せでたまたま上手く行っただけで、結果を読めていなかったのだ。こんな ことで世界中の 各国が死活をかけて権謀術数をしかける外交戦に参戦できるのか、と 不安に思うのは 私だけてあろうか。

そう言えば 前回 紹介した本“世界を知る力”で寺島氏は 日本には“強力な通信社が無い” と指摘していた。日本の現在の通信社の規模では 世界を相手にしての的確な情報は入手できないはずだ、と言うのだ。“時事通信社、共同通信社が世界に派遣している特派員の数は、国際通信社の代表的な存在であるイギリスのロイターやアメリカのAP通信、あるいは中国の新華社などと比べたら、一桁ではすまないほど桁違いに少ない。日本の新聞社で一番海外に特派員を駐在させている日経、朝日クラスでも100人前後。まったく桁が違うのである。”と、書いていた。

日本の敗戦の主因は情報戦に 積極的でなかったことにあると言われて来た。逆に ゾルゲ等のスパイによって日本の南進戦略が ソ連首脳陣の知るところとなり、ソ連は後顧の憂い無く対ドイツ戦線に シベリアの精鋭軍団を投入することができ、枢軸側(日独伊)が 敗勢に傾いて行ったという事実が あった。海軍はミッドウェイ海戦で暗号が解読されており、手の内をさらしていることを知らず、しかも下手な索敵で相手の動静を把握できず、主力の艦船を一気に喪失してしまった。その後の日本軍の作戦指導は 敵の動静を冷静に把握するどころか、ご都合主義と妄想を頼りに多数の犠牲を強いて敗北を重ねるのみであったのだ。
こういった教訓を、これまで様々に語られて来たにもかかわらず、未だに “情報”の重要性を認識せず、寺島氏の言う“大人の外交”ができる状態ではないという事実に 愕然とする思いなのだ。
古代の兵法書の孫子ですら指摘していた諜報戦について、現代日本は未だ全く 未開状態なのである。現代はIT時代だと言われる。ITのⅠはinformation情報であることを肝に銘じるべきではないのか。
こういう問題は、私のような者が 歯噛みしたところで どうにもならないことなのは、十分承知しているが、一体 日本は独立国なのだろうか。こんな情けない状態で、どうやって、外交的主張を貫徹しようというのか。やっぱり、米国のポチでしかあり得ないのではないか。

ところで、日本政府は一方では“環境”を 言いつつも、一方では“クジラ、イルカ、マグロ”と 欧米先進国の方向性と袂を分かって、これで矛盾したマタサキ外交に見えるが、そういう批判を どう回避し、世界に説明するのだろうか。特に、今年は 名古屋で生物多様性条約締約国会議COP10が 開催されるが、その時 日本の環境大臣はどんな顔をして出席するのだろうか。
日本は欧米とは異なる文明圏にあるから仕方ないことではあるが、そういう微妙な立場であるからこそ、一貫した緻密な外交戦略、一貫した適切な論理の必要性を 痛切に感じる。一貫性のない所には 信頼は生まれない。このブログで何度も言うようだが、integrityとは そういうことなのだ。その論理は 人口増大に伴う資源不足対策がベースであるのは これまで指摘して来た通りである。
この論理や戦略性を欠いたままでは 日本は世界から孤立する危険性を孕んでいる。日本は地理的に見ても海洋国家であり、外に向かっていかなければ生きて行けないにもかかわらず、このままの状態では低落して行く一方となろう。

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