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渡辺努・著“世界インフレの謎(講談社現代新書)”を読んで

日本サッカーは残念ながら、ベスト8への道は遠かった。剣が峰のPK戦で敗れたのだ。
PKのマネジメントで敗れたような気がする。あそこでどうして、キッカーにディフェンシブな選手を優先させたのか。日本チームは“オレこそは”の“貪欲な個々”のアグレッシブなゲーム展開を目指していたのではなかったのか。なぜ土壇場で戦略を変えたのか・・・それが問題ではなかったか。実力はあったのではないか・・・・悔やまれる選択マネジメントではなかったか。

旧統一教会が北朝鮮に5000億円献上した事実がある。 
それにもかかわらず国会は穴だらけの被害者救済法を成立させて“無事に問題を糊塗”した。それは大きな理由がマインド・コントロールが定義できないからだというが、それは実は外形的に何とか定義可能なのだ。いい加減な根拠を挙げて、抵抗する保守党のカクレ・トウイツキョウカイ派が全力を上げて阻止した訳だ。そんな自民党に票を集中させて日本の国益になるのだろうか。

週末のTV番組で、ここへきて“世界各地で大規模な火山の噴火・・・世界最大の活火山、ハワイのマウナロア火山が38年ぶりに噴火!この状況が富士山の噴火を読み解くカギに!?”と伝えていた。
ついでに、火山噴火は気候寒冷化に寄与する。それは食糧確保に大きな阻害要因なのだが、このところの温暖化の中でそれを専らCO2増加のせいにしてきたが、大丈夫かの話もあった。

日本社会で虐待・暴行が随所で生じている。高齢者介護施設に始まり自衛隊、保育所、刑務所・・・。
これは日本社会の社会心理が病んでいることを示しているのではあるまいか。何故このような現象がなくならないのか、重大な問題が起きているのではあるまいか。
いずれも人手不足、担い手不足で従業者の低賃金に起因しているように思うのだ。



さて、今週は渡辺努・著“世界インフレの謎(講談社現代新書)”を読んだので、紹介したい。今や、さすがの日本もインフレの波に洗われ始めている。何故、インフレになっているのか。これからどうなるのか。経済に興味ある身には当然、知っておくべきことだろう。TV東京の看板番組で御馴染みの東大の気鋭教授・著書なので、読んでみて非常に良かった。同氏が恐らくはノーベル経済学賞の将来の受賞候補者になるような気がする。
いつもながら、出版社による内容情報、目次・構成、著者略歴等を記す。

《出版社内容情報》
なぜ世界は突如として物価高の波に飲み込まれたのか?ウクライナの戦争はその原因ではないことは、データがはっきりと示している。では"真犯人"は……?元日銀マンの物価理論トップランナー、異例のヒット『物価とは何か』の著者が、問題の核心を徹底考察する緊急出版! 〈なぜ急にインフレがはじまったのか?だれも予想できなかったのか?――経済学者も中央銀行も読み間違えた!〉 〈ウクライナ戦争は原因ではない?――データが語る「意外な事実」〉 〈米欧のインフレ対策は成功する?――物価制御「伝家の宝刀」が無効になった!〉 〈慢性デフレの日本はどうなる?――「2つの病」に苦しむ日本には、特別な処方箋が必要だ!〉 本書の「謎解き」は、世界経済が大きく動くダイナミズムを描くのみならず、日本がきわめて重大な岐路に立たされていることをも明らかにし、私たちに大きな問いかけを突きつける――前著よりさらにわかりやすくなった、第一人者による待望の最新論考!

《本書の目次・構成》
第1章 なぜ世界はインフレになったのか――大きな誤解と2つの謎
世界インフレの逆襲/インフレの原因は戦争ではない/真犯人はパンデミック?/より大きな、深刻な謎/変化しつつある経済のメカニズム
第2章 ウイルスはいかにして世界経済と経済学者を翻弄したか
人災と天災/何が経済被害を生み出すのか――経済学者が読み違えたもの/情報と恐怖――世界に伝播したもの/そしてインフレがやってきた
第3章 「後遺症」としての世界インフレ
世界は変わりつつある/中央銀行はいかにしてインフレを制御できるようになったか/見落とされていたファクター/「サービス経済化」トレンドの反転――消費者の行動変容/もう職場へは戻らない――労働者の行動変容/脱グローバル化――企業の行動変容/「3つの後遺症」がもたらす「新たな価格体系」への移行
第4章 日本だけが苦しむ「2つの病」――デフレという慢性病と急性インフレ
取り残された日本/デフレという「慢性病」/なぜデフレは日本に根づいてしまったのか/変化の兆しと2つのシナリオ/コラム:「安いニッポン」現象
第5章 世界はインフレとどう闘うのか
米欧の中央銀行が直面する矛盾と限界/賃金・物価スパイラルへの懸念と「賃金凍結」/日本版賃金・物価スパイラル 116
参考文献
図表出典一覧

《著者等紹介》
渡辺努[ワタナベツトム]
1959年生まれ。東京大学経済学部卒業。日本銀行勤務、一橋大学経済研究所教授等を経て、現在、東京大学大学院経済学研究科教授。株式会社ナウキャスト創業者・技術顧問。ハーバード大学Ph.D.専攻は、マクロ経済学、国際金融、企業金融。


本書では、世界の先進国でのリーマンショック後の経済について次のように概説している。それは世界的低インフレで説明できるというのだが、その要因は次の3つ。
①グローバリゼーション:世界中に低コストのサプライチェーンが張り巡らされた
②少子高齢化:働き手の減少予測による貯蓄のための消費減少
③技術革新の頭打ちによる生産性の低下

それで生じた世界経済の日本化・ジャパナイゼーションが進行したのだが、そこへパンデミックが生じた。その2年以上続いたパンデミックによって、世界の物流ネットワークが寸断された。これによって、需要より供給が細る効果が出た。
さらに、パンデミックにより需要がレストランなどの外食産業のサービスより、外販のモノへ移った。しかも人材のサービス産業からモノ作り産業への移行が進まない。
これらによって、供給が相対的に細り需要だけが増加する効果によってインフレが発生し始めた。これはエコノミスト等のインフレ予想が、ロシアによるウクライナ侵攻前の21年春から夏にかけて上昇し始めている。したがって、インフレはウクライナ戦争の始まる前から始まっており、ウクライナ侵攻はエネルギーの供給が絞られる効果によって、インフレ促進に寄与しているだけだ、という議論だった。
また、こうした地政学リスクにより世界的なサプライチェーンの見直し、リショアリングが進行してきている。つまり生産コストより安定供給が求められ、生産地を内国化する動きも見られる、ということなのだ。この効果によってもインフレは一時的に加速しているのが目下の現状である。

このようなインフレ傾向下にある世界情勢の中で、デフレに冒された日本経済はどうなっているのか。低い金利の中、貿易を通じて円安となり、それが食料品・エネルギー等の輸入品を通じて物価高となり、いよいよインフレの兆しとなってきている。だが、それが本当にインフレに移行するかどうかは次のサイクルが生じるかどうかにかかっている。

・・・(物価の上昇)→生活者の生計費が上昇→労働者の賃上げ要求→企業の人件費増加分の価格転嫁→(物価の上昇)→・・・

だが日本では90年代から日本人の間に“値上げ嫌い”と“価格据え置き慣行”意識が発生していた。それを“ソーシャル・ノルム(社会的規範)”という概念で説明している。“ノルムとは別の言い方をすると、社会の人々が共有する「相場観」です。今どきの言葉で言えば「デフォルト」と言い換えるとわかりやすいかもしれません。”
行動経済学の影響からか、社会心理に経済が大きく影響をうけるのだということなのだろう。日本のデフレも社会心理の影響によるという説明なのだろう。
これを、別の資料では次のように詳しく説明されている。 

ケインジアンの重鎮である経済学者アーサー・オークン氏は、物価・賃金の変化率には皆が当たり前と考える水準があるとし、それを「ノルム(習慣・規範)」と呼んだ。ノルムは物価や賃金の変化率の過去の値に応じて変化するが、景気循環のような短いサイクルでなく、長期の趨勢で決まる。また、金融政策などの政策レジーム(枠組み)やその他の経済制度もノルムを決める要因と考えられる。

わが国では、物価や賃金は一定率で上昇するものという健全なノルムが1990年代前半までは存在していた。しかしそれがデフレ期に壊れ、代って価格据え置きのノルムが広まったと考えられる。
・・・・・・
価格据え置きのノルムがはびこったのは、20年もデフレが続いたためだ。その意味で金融政策の失敗のツケは多くの人が想像する以上に大きいことを認識すべきだ。その最大の弊害は、企業の価格支配力を低下させ、経済の活力をそぐことだ。グリーンスパン元米連邦準備理事会議長は、米国でデフレ懸念が強まった02年当時、デフレ社会では企業の価格支配力が低下するとの懸念を繰り返し表明した。
・・・・・・
インフレ率の低下とともに企業の価格支配力が弱まるという事実は、ジョン・テイラー米スタンフォード大教授らの研究でも指摘されている。例えばインフレ率がゼロに近い状況では、為替の変化に伴うコストの増加を製品価格に転嫁する度合いが下がることが確認されている。

ここで、日本が長いデフレに入ったのは、安倍政権の政策の間違いによるのだと指摘している。それは価格支配力のある企業に価格を上げさせて、労働者の賃上げを促すという逆方向のサイクルを起こさせようとしたのだが、それは自然な流れではないので、全く生じる流れとはならなかった、というのだ。それに、価格支配力のある企業とはごく少数であって、それが大きな社会的流れとなるはずがない。しかも下手すれば暴利をむさぼっているとの社会的非難を受けることは明らかだろう。だからそれは“絵に描いた餅”にしかならなかった、という指摘だ。

“ここで重要になるのは、経済再開が(パンデミックの終了で)今後本格化すると見込まれる中で、労働需給がどこまで引き締まるかです。日本は感染対策に重きを置いてきた結果、経済再開が欧米に比べて遅れています。・・・労働供給については、なお不確実で、先行きが見通せません。労働需給の今後を考える際のポイントは、米国や英国で見られるような「ロング・ディスタンシング」が日本で広がるかどうかです。”
“(パンデミックによる)行動変容を手掛かりとして、私たちの社会と経済をよりよいものに変えていく、そうした変革の原動力として活用すべきです。それはとりわけ日本にとって、慢性デフレからの脱却の契機になりうると私は考えています。”
(括弧内筆者追加)と言って終わっている。

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