群馬県では、保健所の負担を軽減する目的で、
新型コロナPCR陽性者が発生した際のフローを変更しました。
それを扱った記事を読むと、
小学校などで新型コロナ患者が発生した場合、
「保健所が介入して濃厚接触者を特定し検査を促す」ことは止め(!?)、
「各施設で責任を持って対応する」ことにしたのです。
私は耳を疑いました。
これに従うと、学校や園でクラスターが発生した際、
学校長の責任で濃厚接触者を特定することになります。
しかし、従来の“濃厚接触者”の定義、
1.陽性者と同居、長時間の接触
2.1〜1.5mで感染予防なしで15分以上の接触
3.適切な感染防護なしに看護・介護した人
4.陽性者の気道分泌液や体液などに直接触れた人
でオミクロン株の広がりが把握しきれるとは思えません。
私は「マスクなし会話はアウト!」くらいに考えるべきだと思いますが・・・。
学校生活ではどの範囲まで“濃厚接触者”になるのでしょう。
「学校で児童生徒等や教職員の新型コロナウイルスの感染が
確認された場合の対応ガイドライン」(2021.8.27:文部科学省)によると、
2.濃厚接触者等の特定について
・・・
<濃厚接触者等の候補の考え方>
校内の濃厚接触者等の候補の範囲は、感染者の感染可能期間(発症2日前(無 症状者の場合は、陽性確定に係る検体採取日の2日前)から退院又は療養解除の 基準を満たすまでの期間)のうち当該感染者が入院、宿泊療養又は自宅療養を開 始するまでの期間において以下の①又は②いずれかに該当する児童生徒等及び 教職員とします。
①濃厚接触者の候補
・感染者と同居(寮等において感染者と同室の場合を含む)又は長時間の接触が あった者
・適切な感染防護なしに感染者を介護していた者
・感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つば等)に直接触れた可能性の高い者(1メー トル以内の距離で互いにマスクなしで会話が交わされた場合は、時間の長さを問わずに 濃厚接触者に該当する場合がある)
・手で触れることの出来る距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策
なし(※)で、感染者と 15 分以上の接触があった者(例えば、感染者と会話
していた者)
※ 必要な感染予防策については、マスクを着用していたかのみならず、いわゆ る鼻出しマスクや顎マスク等、マスクの着用が不適切な状態ではなかったか についても確認する。
②濃厚接触者周辺の検査対象となる者の候補
・感染者からの物理的な距離が近い、又は物理的な距離が離れていても接触頻度 が高い者等(感染者と同一の学級の児童生徒等)
・大声を出す活動、呼気が激しくなるような運動を共にした者等(感染者と同一 の部活動に所属する児童生徒等)
・感染者と食事の場や洗面浴室等の場を共有する生活を送っている者等(感染者 と同一の寮で生活する児童生徒等)
・その他、感染対策が不十分な環境で感染者と接触した者等
※ 学校において上記①②の候補の速やかな特定が困難な場合は、判明した感染 者が 1 人でも、感染状況によっては、原則として当該感染者が属する学級等 の全ての者を検査対象の候補とすることが考えられる。
以上を読むと
「学校にいる間ずっとマスクを正しく装着していれば濃厚接触者にはならない」
ことになります。
が、実際にはクラスターが発生しているので、オミクロン株はこのガードを突破する感染力があることは明らかです。
前々項目でも「マスク+手洗い+ソーシャルディスタンデング」をすべて守っても、感染予防は87%と100%には届かないと報告されていますし。
小学校・中学校・高校の校長先生は悩ましいですね。
一方、マスクをしていない2歳未満の保育園児のクラスでPCR陽性者が発生すると、全員が濃厚接触者になってしまいます。
すると、あちこちで休園が発生するのは抑止できなくなります。
当然、預けている親は仕事を休まねばならず、社会活動に大きな影響が出ると思われ、大問題です。
また、紹介したガイドラインには学級閉鎖・学年閉鎖・学校閉鎖の目安も記載されています。
参考までに。
【学級閉鎖】
○以下のいずれかの状況に該当し、学級内で感染が広がっている可能性が高い 場合、学級閉鎖を実施する。
①同一の学級において複数の児童生徒等の感染が判明した場合
②感染が確認された者が1名であっても、周囲に未診断の風邪等の症状を有 する者が複数いる場合
③1名の感染者が判明し、複数の濃厚接触者が存在する場合
④その他、設置者で必要と判断した場合
(※ただし、学校に2週間以上来ていない者の発症は除く。)
○学級閉鎖の期間としては、5~7日程度を目安に、感染の把握状況、感染の拡 大状況、児童生徒等への影響等を踏まえて判断する。
【学年閉鎖】
○複数の学級を閉鎖するなど、学年内で感染が広がっている可能性が高い場合、 学年閉鎖を実施する。
【学校全体の臨時休業】
○複数の学年を閉鎖するなど、学校内で感染が広がっている可能性が高い場合、 学校全体の臨時休業を実施する。
現実には、
「クラスで一人陽性になったら学級閉鎖」(2022.1.20:読売新聞)
「全教職員が濃厚接触者、小中学校3校を休校」(2022.1.21:読売新聞)
「感染者一人で学年閉鎖も」(2022.1.21:朝日新聞)
とやや過敏とも思える対応が社会現象として観察されます。
みな、濃厚接触者の定義を、保健所の指示ではなく学校独自に判断することを迫られ、父兄のクレームを考慮するとこうなってしまうのでしょう。
■ 群馬県 コロナ疫学調査を効率化 濃厚接触者 学校・企業は各自で特定 保健所の業務絞り感染拡大に対応
新型コロナウイルスの感染急拡大により保健所業務が逼迫(ひっぱく)しているとして、群馬県は21日、陽性者の感染経路や濃厚接触者を調べる「積極的疫学調査」の効率化を図ると発表した。濃厚接触者調査で保健所が担う範囲を、重症化リスクの高い人が利用する高齢者施設や医療機関などのケースに絞り、それ以外は学校や企業、団体といった当事者に濃厚接触者の特定を依頼する。効率化により、限られた職員で感染拡大に対応できる体制を整える。
県によると、これまで学校などで陽性者が判明した場合、保健所の聞き取りにより濃厚接触者の特定を進めてきた。疫学調査の効率化に伴い、学校などが濃厚接触者を特定し、リストを作成することになった。県が委託する検査会社にリストを送り、PCR検査を受ける。従来保健所が行っていた検査と同様の扱いとなり、費用負担はない。
学校などで陽性者が判明した場合の対応方法を速やかに県ホームページで公表する。必要に応じて保健所が相談も受ける。
濃厚接触者の可能性がある個人については、自ら診療・検査外来を予約し、受診するよう促している。
一方、同居人も含めた家庭内、重症化リスクが高い人が利用する高齢者施設・医療機関については、引き続き保健所が濃厚接触者調査を続ける。
陽性者本人の症状などの調査は療養先を決める際の重要な内容のため、従来通り保健所が担う。これまで発症14日前までさかのぼり聞き取っていたが、オミクロン株は従来株より潜伏期間が短いとされることを考慮し、2日前までに短縮した。
陽性者の急増を受け、県は今月に入り、入院が必要な陽性者を確実に入院につなげつつ、宿泊施設や自宅での療養を積極活用する方針を示している。これまでより細かく療養先を検討する必要もあり、疫学調査の効率化によって、こうした業務に十分対応できる体制づくりを進める。
疫学調査の効率化は保健所が逼迫している間の当面の措置で、前橋、高崎両市の保健所も同様の対応を取るという。山本一太知事は21日の定例会見で「保健所をサポートしてきたが、現在の状況に至っては、同じやり方では難しい。知恵を絞りながら調査を続けたい」と理解を求めた。
<参考>
□ 学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル ~「学校の新しい生活様式」~(2021.11.22 Ver.7)