徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

抗インフルエンザ薬の使い分け

2014年09月15日 07時34分00秒 | 小児科診療
 現在発売されている抗インフルエンザ薬は以下の4種類(最後のファビピラビルは申請中)。



(参考)各抗インフルエンザ薬の「小児等における使用上の注意」一覧


 すべて抗ノイラミニダーゼ阻害薬という同じメカニズムです。つまり併用しても効果の相乗効果は期待できません。
 では、この4種類をどう使い分けるのか?
 日本感染症学会が指針を出しています。
 ポイントは、入院が必要な重症者や肺炎合併例は全身投与(内服/点滴)が優先され、肺炎の合併無く吸入可能な患者さんには吸入剤も選択可能。
 一般外来の軽症者にはとくにどれがお勧めという記載はありません。 

日本感染症学会提言「抗インフルエンザ薬の使用適応について(改訂版)

A群.入院管理が必要とされる患者
A-I群:重症で生命の危険がある患者
 オセルタミビル(タミフル®)
 ペラミビル(ラピアクタ®)

重症例での治療経験はオセルタミビルがもっとも多い。経口投与が困難な場合や確実な投与が求められる場合、また、その他の事情により静注治療が適当であると医師が判断した場合にはペラミビルの使用を考慮する。その際、1日1回600mgを投与し、重症度に応じて反復投与を考慮するが、副作用の発現等に十分留意しながら投与することが必要である[3日間以上反復投与した経験は限られている]。なお、A-1群では、吸入の困難な患者が多いと考えられるため、吸入剤の投与は避けるべきである。

A-2-1群:生命に危険は迫っていないが入院管理が必要と判断され、肺炎を合併している患者
 オセルタミビル(タミフル®)
 ペラミビル(ラピアクタ®)

オセルタミビルの使用を考慮するが、経静脈補液を行う場合、その他の事情により静注治療が適当であると医師が判断した場合にはペラミビルの使用を考慮する。なお、肺炎を合併しているこの群の患者では吸入剤の効果は限定されると考えられるため、吸入用製剤を投与適応から除外した。また、前述したように、ペラミビルの増量例や反復投与例における安全性は慎重に観察すべきである。

A-2-2群:生命に危険は迫っていないが入院管理が必要と判断され、肺炎を合併していない患者
 オセルタミビル(タミフル®)
 ペラミビル(ラピアクタ®)
 ザナミビル(リレンザ®)
 ラニナミビル(イナビル®)

オセルタミビルの使用を考慮するが、経静脈補液を行う場合、その他の事情により静注治療が適当であると医師が判断した場合にはペラミビルの使用を考慮する。なお、吸入投与が可能な例ではザナミビル、ラニナミビルの投与も考慮する。また、前述したように、ペラミビルの増量例や反復投与例における安全性は慎重に観察すべきである。

B群.外来治療が相当と判断される患者
 オセルタミビル(タミフル®)
 ラニナミビル(イナビル®)
 ザナミビル(リレンザ®)
 ペラミビル(ラピアクタ®)

オセルタミビルやラニナミビルあるいはザナミビルの使用を考慮する。ラニナミビルは1回で治療が完結するので、医療機関で服用することにより確実なコンプライアンスが得られるが、吸入剤であるので吸入可能な患者に使用することを考慮する。経口や吸入が困難な場合や、その他の事情により静注治療が適当であると医師が判断した場合にはペラミビルの使用も考慮できる。なお、外来での点滴静注や吸入投与に際しては患者の滞留時間を考慮し、特に診療所等で有効空間が狭い場合でも、飛沫感染予防策・空気感染予防策など他の患者等へのインフルエンザ感染拡散の防止策を考慮することが必要である。


 しかしこの提言には、以下の問題点に対する言及がありません。
・軽症例への投与の是非
・有効率の比較
・薬剤耐性ウイルス問題
・ラピアクタ点滴による院内感染のリスク

 これらに対する公式見解を出している学会はあるのかな・・・。

 ラピアクタ®については昨シーズン、尾木ママが「インフルエンザに罹ったら点滴で治療する薬もあるらしいわよ」と暗に誘導する内容がテレビCMで流れ、「軽症例に点滴治療は考えられない。インフルエンザ患者が点滴中ずっと病院内にいると他者への感染源になるというデメリットもあることを知らせるべきだ」と発売元の塩野義製薬が医師から非難を浴びたことが記憶に新しい・・・。
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