学校健診で行われる「運動器検診」。
これは整形外科医が導入し、
整形外科医以外が診察を担当する、
という不思議な健診です。
学校医の中で整形外科医が占める割合は、
全体の5%に過ぎません。
なので、整形外科疾患を普段扱わない医師(小児科医、内科医…)が、
わからないなりに勉強して診察に当たります。
しかし、マニュアルが不十分です。
チェック項目に問題点があると、
ふつう、フローチャートでどう対応すべきか記述がありますが、
運動器検診に関しては、それがはっきりしないのです。
そのため現場での混乱を招いています。
私が一昨年前に学校医を拝命された際、
運動器検診についても一通り調べてみました。
すると、知りたかった「しゃがみ込みができない生徒への対応」
が書かれているマニュアルを探し当てましたので、紹介します。
■ 子どもの運動器の健康〜学校における運動器検診の手引き(日本学校保健会)
より抜粋;
(P19-20)「しゃがみこみができない」場合に想定される疾患
発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)
ペルテス病
大腿骨頭すべり症
オスグッド病
ジャンパー膝(膝蓋腱炎)
分裂膝蓋骨
膝半月(版)損傷
足部の障害(外脛骨障害、扁平足、足根骨癒合症など)
足関節障害(捻挫、骨折など)
シーヴァー病(セヴァー病)など
…う〜ん、股関節脱臼と捻挫・骨折ぐらいしかイメージが沸きません。
他の疾患名は、残念ながら小児科医には縁がありません。
・しゃがみ込みができないのは、疾患のためだけではなく、
疼痛や極端な筋力低下・バランス低下による場合がある。
・股関節・膝関節・足関節がかたい(可動域制限)、
大腿の前の筋肉(大腿四頭筋)が硬いためだけではなく、
肥満が原因であることもあり、原因により対処が異なる。
(痛みがない場合)
→ 経過観察・運動指導
(1週間運動指導してもしゃがみ込みができない場合)
→ 整形外科要受診
(痛みが強くなっている場合)
→ 整形外科要受診
(痛みがある場合)
→ 整形外科要受診
しゃがみ込みができない」とひとことで言っても、下記2パターンが有り、
注意が必要という記述もありました:
…まあ、「しゃがみ込み動作で痛みがあれば整形外科受診」とシンプルですが、
迷うのが「しゃがみ込みができないけど痛みがない場合どうするか?」
です。
上記フローでは、
「1週間運動指導して改善なければ整形外科受診」
とあり、さらに運動指導の内容もイラスト解説されていました。
(P24)運動・ストレッチの仕方
・足首のストレッチ
・ハムストリングスのストレッチ
・ジャックナイフ・ストレッチ
上記の経過措置(特に運動指導の内容)を、
担当の養護教諭に情報提供しておきました。
これで、学校医の責任は果たせたでしょうか…。