諸外国(とくに先進国)では子どものかぜ薬に制限が設けられています。
主に、市販かぜ薬(OTC)過量投与による中毒事故が後を絶たないことと、効果を示すエビデンスが乏しい、という視点からの施策です。
そんな中、「ハチミツが子どもの咳によい」という話を耳にするようになり、先日「ためしてガッテン!」でも取りあげられました(以前に「世界一受けたい授業」でも)。
ハチミツの中に存在するグルコースオキシダーゼという酵素が、過酸化水素という物質をつくり、これが強力な殺菌作用を持っているそうです。さらにハチミツの成分は荒れた粘膜を保護することにより咳嗽反射を軽減するとのこと。
その関連論文を紹介した記事をどうぞ;
■ ハチミツが小児の咳嗽に有効
(2014/11/20:ケアネット)
呼吸器内科医の間では、ハチミツが鎮咳薬として有効かもしれないという話は有名です。ただし、基本的には小児の咳嗽に対して、だそうです。ご紹介するのはイタリアの研究。ミルクとハチミツを混ぜると咳嗽に対して効果があるとする研究です。
※ Miceli Sopo S, et al. Effect of multiple honey doses on non-specific acute cough in children. An open randomised study and literature review. Allergol Immunopathol (Madr). 2014 Sep 5. [Epub ahead of print]
この研究の冒頭にも書かれていますが、これまでハチミツが有効とされた研究は「夜にスプーン1杯(2.5mL)飲ませるだけ」という研究であり、継続的にハチミツの効果を検証した論文はないとしています。システマティックレビューでも、継続的なハチミツの効果については言及していません(Oduwole O, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012; 3.)。
この研究では、非特異的な小児の急性咳嗽に対してハチミツを3日間連続して夜に投与し、これをデキストロメトルファンとレボドロプロピジンと比較しました。イタリアではこれら鎮咳薬はOTC医薬品のようです(街の薬局で買える)。
非特異的な咳嗽のある134人の小児がランダムにミルク90mL+ハチミツ10mLあるいはデキストロメトルファン、レボドロプロピジンに割り付けられました。効果は両親からの咳嗽アンケートで評価しました。プライマリエンドポイントは鎮咳効果と治療成功としました。治療成功は、咳嗽アンケートによるスコアがベースラインから50%以上改善するものと定義しています。
その結果、治療成功率はミルク+ハチミツ群で80%、そのほかの鎮咳薬で87%でした(p=0.25)。有意にハチミツの効果が上回ってくれたらセンセーショナルだったのですが、差はないという結果でした。というわけで、一般的な鎮咳薬と同じくらい効果があるという結論になっていますが、個人的にはプラセボ効果がどこまで入っているのか、不安です。
「プラセボ」というのは偽薬(外見は同じだけど薬成分が入っていないモノ)のことで、人間は中身に関係なく「これ、よく効く薬ですよ」といわれて飲むと3割くらい効果を実感するという“思い込み効果”があるのです。
さて、大人でもハチミツの効果はあるのでしょうか?
■ 大人の咳嗽に対してハチミツ+コーヒーが有用
(2016.2.5:ケアネット)
以前「ハチミツが小児の咳嗽に有効」という論文を紹介しました。親も快適に眠れるでしょうから、難治性の小児の咳嗽に対して、ハチミツは一考の余地がありそうです。
しかし、大人に対してはコーヒーと合わせて飲むほうが良いそうです。なにっ!?
※ Raeessi MA, et al. Honey plus coffee versus systemic steroid in the treatment of persistent post-infectious cough: a randomised controlled trial.
Prim Care Respir J. 2013;22:325-330.
これはイランの大学病院で実施されたランダム化比較試験です。3週間以上続く感染後咳嗽の成人患者97人(平均年齢40歳)が被験者です。
・お湯200mLにハチミツ20.8gとインスタントコーヒー2.9gを溶かして8時間ごとに1週間飲み続けるハチミツコーヒー群(29人)
・ハチミツ+コーヒーの代わりにプレドニゾロン13.3mgを入れるステロイド群(30人)
・同じく鎮咳薬グアイフェネシン25gを入れるコントロール群(26人)
を設定し、ランダムに割り付けました。ハチミツはイランの山奥で採れたものを用いました。スーパーで買ったんじゃないんでしょうか、高級ハチミツなんですかね? アウトカムは介入前と介入1週間後の咳の頻度をスコアで比較しました。
97人中12人が脱落しているのが気になりますが、残りの85人で解析が行われました(ITT解析ではない)。その結果、ハチミツコーヒー群とステロイド群では有意に咳嗽の頻度が減りました。スコアの変化は圧倒的にハチミツコーヒー群で高かったようです。ハチミツコーヒー群は、ほぼ咳嗽スコアがゼロになっています。
ハチミツだけでなく、コーヒーにもある程度気管支拡張作用がありますから、これも咳嗽の軽減に寄与したのかもしれません。なるほど、ハチミツコーヒーか。今度、難治性咳嗽の患者さんにも勧めてみようか。
Wikipediaの「蜂蜜」の項目には薬用の歴史について記載されていますが、“咳止め”効果は見当たりません。
主に、市販かぜ薬(OTC)過量投与による中毒事故が後を絶たないことと、効果を示すエビデンスが乏しい、という視点からの施策です。
そんな中、「ハチミツが子どもの咳によい」という話を耳にするようになり、先日「ためしてガッテン!」でも取りあげられました(以前に「世界一受けたい授業」でも)。
ハチミツの中に存在するグルコースオキシダーゼという酵素が、過酸化水素という物質をつくり、これが強力な殺菌作用を持っているそうです。さらにハチミツの成分は荒れた粘膜を保護することにより咳嗽反射を軽減するとのこと。
その関連論文を紹介した記事をどうぞ;
■ ハチミツが小児の咳嗽に有効
(2014/11/20:ケアネット)
呼吸器内科医の間では、ハチミツが鎮咳薬として有効かもしれないという話は有名です。ただし、基本的には小児の咳嗽に対して、だそうです。ご紹介するのはイタリアの研究。ミルクとハチミツを混ぜると咳嗽に対して効果があるとする研究です。
※ Miceli Sopo S, et al. Effect of multiple honey doses on non-specific acute cough in children. An open randomised study and literature review. Allergol Immunopathol (Madr). 2014 Sep 5. [Epub ahead of print]
この研究の冒頭にも書かれていますが、これまでハチミツが有効とされた研究は「夜にスプーン1杯(2.5mL)飲ませるだけ」という研究であり、継続的にハチミツの効果を検証した論文はないとしています。システマティックレビューでも、継続的なハチミツの効果については言及していません(Oduwole O, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012; 3.)。
この研究では、非特異的な小児の急性咳嗽に対してハチミツを3日間連続して夜に投与し、これをデキストロメトルファンとレボドロプロピジンと比較しました。イタリアではこれら鎮咳薬はOTC医薬品のようです(街の薬局で買える)。
非特異的な咳嗽のある134人の小児がランダムにミルク90mL+ハチミツ10mLあるいはデキストロメトルファン、レボドロプロピジンに割り付けられました。効果は両親からの咳嗽アンケートで評価しました。プライマリエンドポイントは鎮咳効果と治療成功としました。治療成功は、咳嗽アンケートによるスコアがベースラインから50%以上改善するものと定義しています。
その結果、治療成功率はミルク+ハチミツ群で80%、そのほかの鎮咳薬で87%でした(p=0.25)。有意にハチミツの効果が上回ってくれたらセンセーショナルだったのですが、差はないという結果でした。というわけで、一般的な鎮咳薬と同じくらい効果があるという結論になっていますが、個人的にはプラセボ効果がどこまで入っているのか、不安です。
「プラセボ」というのは偽薬(外見は同じだけど薬成分が入っていないモノ)のことで、人間は中身に関係なく「これ、よく効く薬ですよ」といわれて飲むと3割くらい効果を実感するという“思い込み効果”があるのです。
さて、大人でもハチミツの効果はあるのでしょうか?
■ 大人の咳嗽に対してハチミツ+コーヒーが有用
(2016.2.5:ケアネット)
以前「ハチミツが小児の咳嗽に有効」という論文を紹介しました。親も快適に眠れるでしょうから、難治性の小児の咳嗽に対して、ハチミツは一考の余地がありそうです。
しかし、大人に対してはコーヒーと合わせて飲むほうが良いそうです。なにっ!?
※ Raeessi MA, et al. Honey plus coffee versus systemic steroid in the treatment of persistent post-infectious cough: a randomised controlled trial.
Prim Care Respir J. 2013;22:325-330.
これはイランの大学病院で実施されたランダム化比較試験です。3週間以上続く感染後咳嗽の成人患者97人(平均年齢40歳)が被験者です。
・お湯200mLにハチミツ20.8gとインスタントコーヒー2.9gを溶かして8時間ごとに1週間飲み続けるハチミツコーヒー群(29人)
・ハチミツ+コーヒーの代わりにプレドニゾロン13.3mgを入れるステロイド群(30人)
・同じく鎮咳薬グアイフェネシン25gを入れるコントロール群(26人)
を設定し、ランダムに割り付けました。ハチミツはイランの山奥で採れたものを用いました。スーパーで買ったんじゃないんでしょうか、高級ハチミツなんですかね? アウトカムは介入前と介入1週間後の咳の頻度をスコアで比較しました。
97人中12人が脱落しているのが気になりますが、残りの85人で解析が行われました(ITT解析ではない)。その結果、ハチミツコーヒー群とステロイド群では有意に咳嗽の頻度が減りました。スコアの変化は圧倒的にハチミツコーヒー群で高かったようです。ハチミツコーヒー群は、ほぼ咳嗽スコアがゼロになっています。
ハチミツだけでなく、コーヒーにもある程度気管支拡張作用がありますから、これも咳嗽の軽減に寄与したのかもしれません。なるほど、ハチミツコーヒーか。今度、難治性咳嗽の患者さんにも勧めてみようか。
Wikipediaの「蜂蜜」の項目には薬用の歴史について記載されていますが、“咳止め”効果は見当たりません。