徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

東京の保育所で「疥癬」が集団発生

2015年03月01日 09時46分27秒 | 小児科診療
 ちょっと花粉症から話題を変えましょう(笑)。

 小さな子どもが体をすりあわせて過ごす保育園/幼稚園は感染症が流行しやすい環境。
 先日、「疥癬」の流行記事が目にとまりました。
 感染源は保育士さんでした。医療機関へ通院しながらも診断が遅れ、感染拡大の後にわかったという事例。

■ 保育士をきっかけに保護者・家族まで感染が拡大 ~昨年9月に東京都の保育所で疥癬が集団発生
(2015/2/25 加納亜子=日経メディカル)
 2014年9月に、東京都中央区の認証保育所で疥癬の集団発生が起きていたことが、国立感染症研究所の疫学調査結果の報告から明らかになった。報告者数は疑い例を含め19人だった。
 疥癬は、人の皮膚角質層に寄生するヒゼンダニ(疥癬虫、Sarcoptes scabiei)により引き起こされ、皮膚病変と掻痒を主症状とし、人から人へ感染する疾患だ。医療機関や高齢者施設などで集団発生事例が増加傾向にあり、問題視されている。
 今回報告された保育所での報告者数は19人(確定例8人、疑い例11人)で、性別は男性4人、女性15人。所属別では、0歳児クラス2人、1歳児クラス6人(うち確定例3人)、2歳児クラス0人、3歳児クラス1人、4歳児クラス2人(同1人)、5歳児クラス2人、保育士1人(同1人)、保護者4人(同3人)、交流保育児1人であった。
 症状は、掻痒感が17人、皮疹が19人(体幹と手の両方10人、体幹のみ8人、その他1人)に認められた。
 なお、通所園児は0~4歳児各7人、5歳児6人の計41人。職員数は、保育士7人、栄養士2人、その他子育てサポート員が10人だった。

◇ 担任保育士をきっかけに感染が拡大
 初発例と考えられた1歳児クラスの担任保育士は、2014年6月中旬に湿疹が脇腹~腹部に出現し、強い掻痒感を自覚していた。医療機関で処方を受けていたが、8月中旬に手荒れが現れ、9月上旬からは手荒れに対して外用ステロイドが処方された。その後、急速に皮膚症状が増悪し、9月16日には保育所で疥癬患者が発生したため、9月17日に確認のため受診し、状況を主治医に伝えたところ疥癬と診断され、翌日の再診で角化型疥癬と診断された。
 初発例の保育士の症状の推移から、手荒れが出現した8月中旬頃より感染力の強い角化型となっていたと推測された。同保育士は、発症後確定診断がつくまでの13週間にわたり、勤務を続けていた。
 こうした事例を受け、国立感染症研究所は「保育所等集団生活を行う場においては、日頃からの職員の健康チェックが重要となる。発疹や掻痒感が長期間続いたり、ステロイド薬の塗布で改善がみられない、あるいは増悪する場合は、所属の看護師へ相談することが望ましい」と説明。
 同事例は、一斉健診による症例の早期発見・早期治療、非症例に対する一斉健診や消毒、職員の予防内服などの予防的処置、発症者の隔離、保護者への適切なリスクコミュニケーションが更なる患者発生の抑制につながったとされた。そのため、「疥癬が保育施設内で発生することはまれだが、万一の場合に備え、発生時の対応を決めておくことが大切である」とまとめている。加えて、「早期の探知を図る上で症候群サーベイランスの一つである保育園サーベイランスが役立つと考えられる」と提言している。


 記事の中で出てきた「保育園サーベイランス」。
 HPを見ると、当地群馬県の状況がわかります。

 私は小児科なので、ふだん見慣れているアトピー性皮膚炎系の乾燥性湿疹と異なる印象があるときは皮膚科受診を勧めています。
 その“違和感”とは、皮疹の様子や分布だったり、処方したステロイド軟膏の効果に手応えがなかったり・・・
 その中の何人かは「疥癬」と診断されて治療に至りました。

 昨年、「スミスリンローション」という塗り薬が認可され使用可能になっています(医師の処方箋が必要)。
 スミスリンと云えば、シラミの治療で使われる「スミスリンシャンプー」が有名ですね(こちらは薬店で市販されています)。
 フ~ン、疥癬とシラミは同じ薬が効くんだ・・・。
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