徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

奨学金という名の“借金”

2022年01月14日 06時58分45秒 | 小児科診療
私は大学生時代に奨学金を3つもらっていました。
日本育英会と、市町村と、もう一つ(詳細は忘れました)。
日本育英会以外の2つは、一定の基準を満たすと返済を免除される仕組みだったと記憶しています。
日本育英会の奨学金は借りた期間の倍くらいの期間をかけて返済したと思います。
親への仕送りもしていた私には結構な負担でした。

さて近年、奨学金の返済が社会問題として取り上げられることが増えました。
「日本の奨学金制度は“無利子の借金”に他ならない」と。
これは、外国の奨学金が返済不要であることとの比較です。
「大学まで授業料が無料」という国もありますね。

数年前に大学+大学院を卒業した知り合いのお子さんは、
なんと就職時に1000万円の借金を抱えていると聞きました。
ちょっと、それはなんでもひどいんじゃ・・・。

一方で、返済不要の奨学金は「返済不要の借金」と同じだから、
人間をダメにする・・・という意見も無きにしも非ず。

そこで最近の奨学金に関する記事を読んでみました。

「奨学金240万円」借りた女性が抱く父への葛藤〜兄にはポンと数百万円出したにもかかわらず…
千駄木 雄大 : 編集者/ライター(2021/12/29:東洋経済オンライン

ふつうに借りて、ふつうに返済している女性のエピソード。
特に返済に困難感はなく「ふつうに痛い」レベル。
「貧困にあえぐ学生時代ではなかったことに感謝」と、
現行の奨学金制度には肯定派。

「奨学金400万円」借りた男性に父が驚きの一言〜ダメ学生が真面目サラリーマンに成長するまで
千駄木 雄大 : 編集者/ライター(2022/01/12:東洋経済オンライン

ふつうに返済できている男性のエピソード。
「学歴社会のこの時代、借金(≒奨学金)をしてでも手に入れるべき」と、
前例洞様の肯定派。

奨学金の借金1100万円、早大生の貧困と苦悩〜通い続けるべきか、それとも中退して働くか
藤田 和恵 : ジャーナリスト(2017/09/23:東洋経済オンライン

奨学金をもらいながら大学に通う男性のエピソード。
肯定・否定というより、奨学金がないと大学生活が成り立たない経済状況に追い込まれており、かつ膨大な借金返済が待ち受ける未来に不安を抱いている・・・。

以上、3つのエピソードを読んでみました。

論点その1)要返済の奨学金について
1も2も3も“要返済”は論点になっておらず、“要返済ありき”という前庭で話が進んでいました。

論点その2)返済の苦労
1も2も無難に就職できて返済地獄に陥っているわけではなく、この論点も顕在化していませんでした。
3の例は、卒業時に1000万円超の借金を抱える身となり、返済地獄が待っていると思われます。

というわけで、私が問題視した論点を微妙に外しているエピソードばかりであり、単なる経験談で終わっている残念な記事でした。


<参考>
■ 【国立大学・公立大学・私立大学】1975年~2021年「大学授業料の推移」


■ 独自集計!全大学「奨学金延滞率」ランキング〜平均は1.3%、延滞率5%以上の学校は7校

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