徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

インフルエンザ診療、今昔

2012年01月15日 07時42分20秒 | 小児科診療
 冬季になると「熱が出てインフルエンザが疑われたら早めに病院へ行きましょう」というフレーズが毎年マスコミから流されます。
 これは私が小児科医になった四半世紀前からずっと変わりません。

 でも、研修医だった私はいつも疑問に思っていました。
 「インフルエンザウイルスをやっつける薬はないのに、早めに受診して何かよいことがあるんだろうか・・・?」
 当時はタミフル、リレンザ等の抗インフルエンザ薬はありませんでした。
 つまり、高熱でつらいなら解熱剤、咳がつらいなら鎮咳剤など、対症療法薬でしのぐのみ。ベテランの先生の中には、解熱剤を1日3回飲ませるという究極の対症療法をしている方もいらっしゃいました(現在は逆に治りが悪くなる、病悩期間が長くなるというデータがあり推奨されていません)。
 もちろん、こじれていないかチェックして抗生物質の投与タイミングを図るのは今と変わりません。

 治療が激変したのは2000年頃、上記の抗インフルエンザ薬登場以降です。
 その少し前にインフルエンザ迅速診断キットも開発されてようやく「診断&治療」が確立し、「早めの受診」が現実的に有意義になったのでした。
 医師の側も対症療法に終始していた診療が根本治療に切り替わり、心労が減りました。

 そして10年が経過した2009年、世界は新型インフルエンザの洗礼を受けるに至りました。
 ここで日本の国民皆保険制度(安価でフリーアクセス)が高く評価されました。早期に診断して抗インフルエンザ薬を投与することにより、死亡率がアメリカの1/10に抑えられた事実に世界中が驚いたのです。
 まあ、「コンビニ受診」という影の部分もありますけど。

 さて、最近読んだ本に興味深いことが書いてありました。

 昔、それも抗生物質が発見されていない時代(1930年以前)の医師はどんな薬で治療していたのか? ドクターズバッグには何が入っていたのか?

 その疑問に対する答えは;

 「ペニシリンの発見以前、医師の黒カバンにはジギタリス、インスリンの他にはモルヒネやコカインなど植物由来の痛み止めや鎮静剤が入っていたくらいで、残りは科学的にはあまり価値のないものばかりだった。医師は苦痛を和らげたり安心させたりする他にはほとんどできることがなかった。」

 う~ん、やっぱりというか・・・明らかに日本の漢方医の方が上でしたね。
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